乳がんの治療法は?術後はどう過ごす?診断されてもあわてない予備知識を【医師にインタビュー】

【目次】
日本人の乳がん発症数について
乳がんの治療法と手術について
メンタル面の変化、周囲にできるサポート
乳がん術後フォローアップについて
オンライン医療相談とオンラインクリニックプラットフォームを利用して術後フォローアップをサポート

 

乳がんの治療法は?術後はどう過ごす?診断されてもあわてない予備知識

メディアでよく耳にする「乳がん」、その実態に迫るシリーズ2回目です。今回は、もし自分が乳がんと診断されたら、どのような治療法があるのか、術後どのように生活が変わるのか、いざというときの必要な心構えについて乳腺科医師にお話をお聞きしました。▶前回記事


乳腺外科 田原梨絵医師 2004年北海道大学医学部卒業後、聖路加国際病院にて乳腺科レジデント、浜松オンコロジーセンター乳腺科、亀田総合病院乳腺科勤務。2014年渡米、アメリカのがんセンターで乳がんの新薬の臨床研究に携わる。アメリカ在住の乳がん患者支援団体SHAREの臨床アドバイザー。


日本人の乳がん発症数について

日本人の乳がんは年々増加していると聞きしましたが実際はいかがでしょうか?

最新の統計によると、日本人女性で生涯乳がんにかかる人が9人に1人と発表がありました。これは、年々増加傾向が続いていると言えます(国立がん研究センターがん情報サービスより)。 私が医師になった約15年前には乳がんにかかる人は日本人女性の16人に1人、欧米の女性が8人に1人と言われており、当時は欧米人に多い病気であって日本人には欧米人と比較して少ないと考えられていました。しかし、日本人の乳がんが増え続けた結果、今はほぼ追い付いている状況です。9人に1人ということで、ついに10人を切ったとことはかなり大きなトピックスで衝撃的でした。15年前は新たに乳がんにかかる方は年間4万人でしたが、現在は年間9万人と倍増しています。

乳がんは早期発見で9割は完治します。がんであっても治る見込みが高いがんであり、さらに治療は日進月歩で進んでいます。しかし、治る見込みが高いといっても日本人でかかる人が増加傾向にあるため、多くの日本人女性が毎年新たに乳がんと診断されている、という現状があります。

また、他のがんは70代以降の高齢でかかることが多いのと比較して、乳がんは40代から60代に発症のピークがあり、かつほとんどが女性です。つまり、子育てや仕事で自分の生活が忙しい年代の人に発症する人が多い、という特徴があります。

乳がんの治療方法や手術について

乳がんの治療法とは?

乳がんにはいくつかのタイプがあり、そのタイプや進行度、年齢などを考慮して手術・薬物治療(ホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的治療)・放射線治療を組み合わせて初期治療を行います。初期治療が終わったあとでも乳がんの場合は、術後10年間は経過観察(フォローアップ)が必要というのが一般的です。10年間再発がなければ一応、完治ということになります。10年間再発しなければ100パーセント大丈夫、ということではありませんがほぼ完治したと考えます。この術後10年間は、半年から年に1回の経過観察の診察・検査を行います。また、術後にホルモン療法が必要な患者さんは5~10年間にわたり数か月毎の通院が必要になります。

乳がんの手術について教えてください。

手術と入院期間は、「温存手術」の部分摘出は3日間から5日間、「全切除術」は1週間程度、「再建手術」は術式にもよりますが1週間から10日間前後の入院です。抗がん剤治療はすべて外来で行われ、入院が必要なことはほぼありません。術後は、術式や痛みの程度にもよりますが、1ヶ月程度で普通の生活ができる方が多いです。

乳がんの手術は内臓を切っているわけではなく、体の表面の手術なので、日常生活に大きな支障が出るということはあまりありません。ただ、わきの下のリンパ節も手術をするのでリンパ節をたくさん切除すると腕があがりづらい場合もあります。

乳房の再建手術の費用は?

以前はすべて自費で、片方の胸を再建するのに約100万円かかっていましたが、数年前に保険適用になったことで、再建手術が一般的な治療選択になりました。

再建するかしないかは人それぞれの判断です。しない方もいますし、高齢の方でもふくらみがほしいと再建する方もいます。片胸がないと見た目のバランスが悪い、胸が大きい方だと歩く際にバランスが悪いからと再建する方もいます。保険適用になってから再建を選択する方は実際に増えています

メンタル面の変化、周囲にできるサポートとは?

メンタル面の変化は?

乳がんと診断されると、誰でも最初は受け入れることが難しく精神的に落ち込みます。なぜかかってしまったのか、今までの自分の食生活が悪いのか、自分のせいで乳がんになったのでは、と自分を責める人がとても多いです。しかし、遺伝性の乳がん以外では何が原因で乳がんになったかというのは今の医療ではわかりません。自分が何かしたから、だから乳がんになった、と自分を責める必要はありません。

診断後は少しずつ病気を受容していって、治療へ向かって行きます。手術は入院が必要ですが、他の治療はすべて外来で行われます。手術後に放射線治療を受ける方は約1ヶ月間の通院が必要です。手術の前か後で抗がん剤治療や分子標的治療を受ける方は3ヶ月から1年間、術後にホルモン療法を受ける方は5年から10年間の治療期間になります。いずれにしてもどのような治療を受けた人も10年間のフォローアップを行います。

がんとともに生きる。しかし乳がんになったからと言って、自分の生活を失わないようにしてください。必要な周囲のサポートも受けながら自分らしい生活をしていくのが大切だと思います。

どのような周囲のサポートが必要ですか?
①精神面について

しこりを自分で見つけた、あるいは要精密検査になった段階、乳がんと診断された後に治療方針が決まるまで、治療中、術後の病理結果が出るまでなど、様々な段階で不安を感じる程度は人それぞれですが、周囲の精神的なサポートが重要になります。また術後の長いフォローアップ期間中にも再発の不安が心に伴いますので、初期治療が終わった後でも長期間、周囲の精神的な支えがとても大切になります。

また精神面だけでなく、就労や妊娠出産については職場やパートナーのサポートも必要になります。

②就労について

手術入院に関してはもちろんお仕事をお休みしていただかなければなりません。抗がん剤治療は、仕事を休まずに抗がん剤を受けながら仕事を続けている方が今はたくさんいらっしゃいます。職場の理解と周囲のサポートが得られれば仕事を辞める必要はありません。

今は一般的にはがんの抗がん剤治療はほとんど外来でできますし、副作用対策の薬もかなり進化しているので仕事を辞めなければいけないケースは昔にくらべれば減っていると思います。

がん治療をしている患者さんはたくさんいます。重要なのは、女性だけではなくて男性にも、乳がんだけではなくがん全般についても知ってもらうことです。がんになったからといって退職させたり、他の部署に移動させたりするのではなく、集中的に治療が必要な短期間は周りがサポートし、しっかり元に戻れる環境をつくってあげることが大切、ということを知ってもらうのが大事です。

③妊娠出産について

抗がん剤治療は卵巣機能に障害を与えるため、多くの場合は一時的に生理が止まります。また、ホルモン治療中は妊娠を控えてもらう必要があるため妊娠できる期間が後ろ倒しになってしまいます。抗がん剤を使うと卵巣に障害を与えるだけでなく、年齢によってはその後生理が復活しない可能性もあります。抗がん剤治療を始める前に、まず将来妊娠を希望するかどうかを確認して、もし妊娠希望する場合は、卵子を採取して保存しておくか、すでにパートナーがいる場合は受精卵として保存しておく、などの方法があります。治療を始める前に産婦人科と相談して、将来の妊娠のための対策をとってから治療を始めることがすすめられます。

乳がんのフォローアップ外来、術後の具体的な取り組みとは?

乳がんのフォローアップ外来とは?

術後の経過観察・ホルモン療法を外来にて行うことを指します。乳がんは6割から7割くらいはホルモン陽性乳がんといって女性ホルモンが悪さをするタイプの乳がんです。その女性ホルモンをおさえるためのホルモン療法を術後に受ける方が多く、その場合は薬を毎日1粒飲む治療を術後5年から10年間続けます。生理の状態によっては生理を止める注射を併用することもあります。

術後10年間の経過観察を行って再発がなく過ぎたら、病院での経過観察は終了し、一般の集団検診や人間ドックに戻っていただくという流れになります。

今、年間9万人の人が新たに乳がんにかかり、進行度によりますが多くの患者さんが経過観察に向かいます。以前は手術を行った総合病院で術後フォローアップも行うことがほとんどでしたが、総合病院では手術・抗がん剤治療・放射線治療の初期治療を行い、術後は乳腺クリックや一般の内科開業医と連携してフォローアップを行う病院が増えてきています。

乳がん手術後のホルモン療法とは?副作用は?

女性ホルモンをおさえることによって再発を防ぐ治療です。副作用としては薬の種類にもよりますが、更年期症状だったり、精神的に不安定になったり、関節痛が出たりする方もいらっしゃいます。副作用がまったく出ない人もいます。副作用が強い場合には他のホルモン剤に変更したり、漢方でやわらげるなど、その人に合わせて対処を変えていきます。

オンライン医療相談とオンラインクリニックプラットフォームを利用して術後フォローアップをサポート

オンラインでフォローアップ外来をうけることのメリットとは?

40代から60代の子育てや仕事で忙しい患者さんにとってはオンラインでホルモン治療のフォローアップ外来を受けることができることは大きなメリットになると思います。また、70代80代になっても乳がんを発症する方は多くいらっしゃいます。例えば総合病院に通うのが大変で、乳腺クリニックや乳がん術後のフォローアップを行ってくれる開業医もまわりにいない方にとっても、オンライン医療相談とオンラインクリニックプラットホームで診療を受けることができて、近くの薬局で薬が受け取れることでとても便利になると思います。

日々の生活で症状がでないと薬を服用するのを止めてしまう患者さんもいます。しかし術後に同程度のリスクの患者さんが5年間ホルモン療法を受ける場合、5年間ちゃんと毎日飲み続けた人と、飲まなかった人を比べた結果、飲まなかった人の方が再発する人が多くなります。ですので薬はしっかり飲み続けてもらうことはとても大事です。毎日1回のみ続けるのは大変ですが、1錠1錠が命を守ってくれる薬です

また特に就労支援については、日本の働き方だとなかなか休みがとりづらいことも考えると、オンラインで診療を受けて、薬局で薬を受け取れるというのは患者さんにとって利便性が高いと思います。術後5年間から10年間の長期間の治療になりますので、ご自分の生活にあったフォローアップ先をみつけるということも大切だと思います。

オンラインで全てのフォローアップは対応可能?

検査を必要としない術後フォローアップ診療については対応出来ますが、初期治療を行った病院と連携することが土台になります。

術後のホルモン療法中に起きる症状としては、更年期症状や、関節痛、精神的なうつ状態、不眠が多いです。そのなかでも更年期症状や関節痛にはこれを飲めば治るという薬がありませんので、漢方薬だったり症状を改善させるお薬を飲んでもらい、効果があれば続けてもらう、効かなかったら他のお薬に変えたり適宜調整をします。症状が強く治療継続が難しい場合は、ホルモン剤もいくつか種類がありますので他のホルモン剤に変えるという選択肢もあります。また、フォローアップ中に再発を疑うような症状がある場合は、手術をした病院で画像検査などの検査を受けていただく必要があります。

 

最後に、この記事をご覧になっている方へのメッセージをお願いします。

乳がんは他人の話ではありません。とても身近な病気です。ご自身が乳がんと診断されるとほとんどの方が「まさか自分が乳がんになるなんて」とおっしゃいます。なんとなく自分は大丈夫と思っている方が多いのです。ですが、実際は日本人女性では増加傾向にあり、誰もがかかる可能性があります。だからこそ女性にも男性にも、いろいろな人に伝えたい。ご自身が、周りの人が、乳がんにかかったときにあわてないために、どんな心と体の変化があるか、そしてどんなサポートが必要か知っておくことが重要です。落ち着いて心構えをしておきましょう。

 

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