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安全かつ効果的な避妊方法について|clila疾患情報

目次

避妊とは

安全かつ避妊効果の高い方法を選択するために

現在普及している方法

使用者カテゴリー別推奨方法(OC vs IUD)

避妊方法に関する誤解

日本人の避妊についての意識、および海外動向

日本で効果的な避妊方法が普及しなかった理由

まとめ

 

避妊とは

避妊とは、妊娠を予防することを目的として、受精や子宮内膜(子宮の内腔を覆っている膜)への着床を阻止することをいいます。 避妊に失敗し、望まない妊娠が起こってしまった時、妊娠を継続しない決定が下された場合には、中絶手術の必要性が生じますが、妊娠の中断は、心身ともに大きな負担を生み出す可能性があります。また妊娠を止むを得ず継続する場合にも、学業、就業、家庭生活、後の育児などへ負の影響を及ぼす可能性があります。

女性が望まない妊娠を予防するために、女性自身が妊娠や出産が女性にとって人生を大きく左右する重要な出来事であることを認識し、避妊についての意識と意思をはっきりと持つことが大切です。

一般的には、女性主体の避妊方法が、女性が避妊しているという意識が高まりやすく、効果的で、継続的に実践されやすいと考えられています。

安全かつ避妊効果の高い方法を選択するために

パール指数とは、カップルがその避妊方法を1年間実施した場合の妊娠発生数です。つまり、避妊方法が効果的であればあるほど、パール指数は、低い値を示します。

以下、各避妊法とパール指数について示します。

避妊方法

理想的使用

一般的使用

コンドーム

2

18

経口避妊薬

0.3

9

銅付加IUD

0.8

0.6

LNG-IUS

0.2

0.2

Trussel 2011 Contraception

*ここでいう一般的使用とは、飲み忘れるリスクなども加味した使用を指します。

パール指数は、より効果的な避妊方法を選択する際に有用な指標ですが、それのみに頼った避妊方法の選択は望ましくなく、個々の希望や年齢、妊娠・出産回数、月経困難症の有無・程度、喫煙の有無、基礎疾患などの条件も考慮した上で、避妊効果のみならず安全性も保つことのできる方法を選択すべきだと考えられています。

 

リファレンス

・日本産科婦人科学会  http://jsog.umin.ac.jp/70/jsog70/6-1_Dr.Terauchi.pdf

Contraception      2011 May; 83(5): 397–404.

現在普及している方法

【古典的避妊法】

(1)精子膣内進入阻害法(5.避妊方法に関する誤解のところにも記載)

  1. 膣外射精法 射精により分泌される精液を膣外に発射する方法です。男性主体の避妊方法と言えます。
  2. コンドーム 性器を覆うラテックス、ポリウレタンなどの素材でできたカバーで、男性用と女性用があります。日本では男性用が広く普及しています。

1.2.ともに広く普及している方法ではありますが、パール指数はともに高く、質の高い効果的な避妊方法とは言えません。

リファレンス

・日本産科婦人科医会 望まない妊娠を繰り返さないために

・相模工業ゴム株式会社 https://www.sagami-gomu.co.jp/condom/dekiru/

 

(2)基礎体温法

基礎体温表を参考に排卵日の推定を行い、その間性交渉を行わないようにする方法です。この方法では、排卵日は次回月経予定日の12〜16日目に起こると考えますが(オギノ式)、現在では非科学的と捉えられています。特に月経不順の女性や、基礎体温を毎日規則正しく測定できない人には不向きです。男性の協力も必要ですので、女性主体の方法とは言えません。基礎体温法とコンドームを組み合わせる方法が取られることもありますが、組み合わせによる効果がどの程度あるのかどうかはあまり分かっていないようです。

・日本産科婦人科学会 http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/61/10/KJ00005756445.pdf


【近代的避妊法】

(1)経口避妊薬

規則正しく内服するという前提で、避妊効果が非常に高い避妊方法です。排卵および着床を抑える効果があります。女性自身に管理でき、女性にとってポジティブな作用(月経困難症・月経前症候群の改善、子宮体癌・卵巣癌リスクの軽減)も期待でき、日本では、症状のある人には保険適応で処方できる経口避妊薬もあります。副作用として血栓症発生のリスクが上昇することが言われており(3〜9/10000人)、日本産科婦人科ガイドラインによると、40〜45歳以上、喫煙者、高血圧、血栓症既往の女性は使用を慎重に内服を、あるいは内服を避けるべきだとされています。

長期服用により、子宮がんと乳癌のリスクをわずかに上昇させる可能性が言われています。乳がんについては、含有される黄体ホルモン量の調整によりリスクが変化する可能性も指摘されており、さらなる検討が必要だと考えられています。

妊娠を希望する場合には、内服を中止します。

 

(2)子宮内避妊具(IUD)

子宮体部に留置し、精子の移動・受精・着床を妨げる効果があると考えられています。IUDの種類によっては、器具内に殺精子作用部分を含むものもあります(銅付加IUD)。また徐放ホルモンを含むIUDも日本では近年認可され、徐々に普及してきています(LNG-IUD:ノボレルゲストレル放出子宮内システム)。パール指数は、銅付加IUDは0.55、LNG-IUDは0.14と低いですが、時に子宮体部の理想的な留置位置から器具が脱落してしまうことがあり、その場合には妊娠のリスクが高まってしまいます。よって、装着後は定期的な診察により器具の位置確認を行うことが望ましいとされています。子宮内腔の形状を変形させるような疾患(例:子宮筋腫)を持つ女性は、正確な位置に留置することが困難であり、不向きです。

月経困難症の女性にはIUDが症状を増悪させる危険性があるため、従来は不向きと考えられていましたが、最近普及が進んでいるLNG-IUDでは、そのホルモン効果により月経症状の改善を期待することができます。現在では、過多月経・月経困難症に対して医療保険が適応されるようになっています。避妊目的ではかなり高価ですが(保険適応でなければ施設が価格を設定するため、施設により価格が少し異なります)、保険適応での費用は約1万円程度です。長期留置による子宮筋組織への癒着や感染のリスクを軽減するために、3〜5年に一度の交換が推奨されています。

日本では挿入は医師が行い、妊娠を希望するなどで使用を終了する場合には、医師が抜去します。

 

リファレンス

・日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2017.pdf

・医療法人社団 佐野産婦人科医院 http://www.sanolc.com/blog/2018/04/post-153-587770.html

・雅レディースクリニック http://miyabi-lc.com/ius.html


(3)永久避妊法

手術により卵管の切除もしくは結紮を行う方法です。永久的な方法になり得るため、実施の決定は慎重にすべきです。 完全に卵管が断絶されたあとで、妊娠を希望するようになった場合には、再開通させるための手術や、体外受精を試みます。

 

リファレンス

・MSDマニュアル プロフェッショナル版/家庭版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/18-婦人科および産科/家族計画/不妊手術

使用者カテゴリー別推奨方法(経口避妊薬 vs IUD)

【出産経験のある人】

  • 経口避妊薬
  • 子宮内避妊器具

きちんと毎日の内服管理が可能な女性には向いていると言えます。

子宮内避妊具は、基礎疾患などにより経口避妊薬の内服が難しい人、毎日の内服管理が不得手な人には向いていると言えます。

複数の出産経験があり、それ以上の妊娠・出産を望まないという人は、より避妊効果の高い方法を選択すべきです。

上記2つの方法は、きちんと管理をすることで100%近い避妊効果を期待できます。より高い避妊効果を期待するために、使用者は導入前に方法その管理方法を続けていけるか、検討することが望まれます。

 

【出産経験がなく将来挙児希望のある人】

  • 経口避妊薬
  • 子宮内避妊具

使用がより普及している米国では、科学的には避妊の確実性と副作用も含めた安全性という点で、どちらの方法もほぼ同等であると考えられています。日本では子宮内避妊具はまだ広く普及していないのが現状であり、日本人のデータは乏しいのが現状ですが、米国の考え方もある程度参考にしつつ、方法を選択する際には、避妊を希望する相談者が、どちらの方法がより管理をしやすいかなど、ケースバイケースで好ましい方法を選択することが望ましいと思われます。

子宮内膜症や無排卵周期を伴う月経痛や月経不順がある際には、そのものの治療効果も期待できるため、経口避妊薬が選択される場合が多いようです。その治療により病状が改善され、内服を終了したあとで自然な排卵周期による妊娠も期待できます。

 

リファレンス

・米国産科婦人科学会https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/committee-opinion/articles/2018/05/adolescents-and-long-acting-reversible-contraception-implants-and-intrauterine-devices

The European Journal of Contraception & Reproductive Health Care Contracept Reprod Health Care. 2015 Jun; 20(3): 223–230.

【産後、授乳中の人】

子宮内避妊具

一般的には授乳中で血中プロラクチン濃度が高まっている時期は、無月経、無排卵周期となり、授乳そのものの自然な避妊効果も期待はできますが、個人差が大きいため、より確実に避妊を行いたい場合には、子宮内避妊具が一番確実で安全な方法だと考えられています。

経口避妊薬の場合、人のデータは限られているものの、乳汁への移行はごく僅かで乳児への影響はあまり心配ないだろうと考えられていますが、一方で、乳汁分泌を減少させるリスクがあるため、授乳をしている人には不向きとされています。

ホルモン成分を有する子宮内避妊器具については、授乳時でも母乳栄養、新生児の成長や発育などへの影響についてはあまり心配する事なく、装着可能と考えられています。日本では産後は6週間程、順調な子宮復古を待ってから挿入するのが望ましいとされています。米国では最近の研究結果をもとに、分娩直後に挿入する方法も推奨されており、今後改定される日本のガイドラインにも影響を与えていく可能性があります。

 

リファレンス

・Drugs in Pregnancy and Lactation Eleventh Edition

・日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2017.pdf

・米国産科婦人科学会 https://www.acog.org/programs/long-acting-reversible-contraception-larc

【月経痛のある人】

  • 経口避妊薬
  • 子宮内避妊具(LNG-IUD)

子宮内膜症、子宮腺筋症などで月経痛の著しい人の場合には、経口避妊薬が基礎疾患の治療につながるため、推奨される避妊方法と言えます。

子宮筋腫のような女性ホルモンの影響で増大傾向を示す腫瘍による月経困難症のケースには、経口避妊薬は腫瘍増大のリスクがあるため、注意して服用することが望ましいと考えられています。

子宮内避妊具のLNG-IUD(ホルモンを含有するタイプ)は、月経困難症の治療に用いることもあり、保険適応での使用が可能です。

【肥満・喫煙者・高血圧症・血栓症既往者】

子宮内避妊具

経口避妊薬は稀ではありますが、血栓症のリスクを若干上昇させることがいわれています。よって、喫煙者(特に30台後半以降の喫煙者)・高血圧患者・血栓症既往者には血栓症リスクを懸念し内服は避け、子宮内避妊具使用の禁忌事項がなければ、それが一番望ましい避妊方法であると考えられています。

 

リファレンス

http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/61/10/KJ00005756445.pdf

避妊方法に関する誤解

古典的避妊方法に属する下記二つの方法は、パール指数が高いにも関わらず、日本では未だ避妊方法の主流として普及しています(6.日本家族計画協会データ参照)。

①膣外射精

パール指数は22%と高く、今では避妊方法とは考えられていません。よって、膣外射精が行われた際には、緊急避妊を考えるべきです。

②コンドーム

一般的使用におけるパール指数は高く、成功率の高い避妊方法とは言えません。避妊具としてではなく、むしろ感染予防具としての必要性を考えるべきです。

日本人の避妊についての意識、および海外動向

第8回男女の生活と意識に関する調査(北村邦夫(日本家族計画協会)のデータを以下に引用します。

 

2002

2004

2006

2008

2010

2012

2014

2016

総数

490

471

461

406

411

310

262

261

コンドーム

70.8

70.1

82.8

82

82.2

80.6

85.5

82

膣外射精

15.1

16.8

17

13.3

18.7

17.4

16

19.5

オギノ式

3.7

3

3.2

3.4

3.6

5.2

6.1

7.3

女性ホルモン剤

1

1.3

1.2

5.7

3.4

3.5

4.6

4.2

不妊手術(女性)

2.4

2.5

2

2.5

1.7

1.6

1.5

0.8

基礎体温表

4.3

4.7

3.7

1.2

2.2

1.6

3.1

1.9

子宮内避妊具

1.2

1.3

1.5

0.7

1.5

1

0.4

0.4

洗浄法

0.8

1.2

0

0.2

0.3

0.4

0.4

不妊手術(男性)

0.4

0.2

0.2

0.7

0.5

 ー 

0.4

殺精子剤

0

0.2

0.2

0.5

0.2

女性用コンドーム

0.6

0.6

0.2

0.2

 ー 

不明

11.8

13.2

2.7

2.5

3.2

3.9

2.3

1.1

 

避妊の選択肢として、2002から2016年にかけて、パール指数の高いコンドームが主流であり、指数の低い経口避妊薬・子宮内避妊具の使用頻度は非常に少なかったことが分かります。また、医療者には避妊方法と考えられていない膣外射精が、2002年から2016年の間上昇傾向だったようです。調査結果から、2016正しい避妊方法が普及していなかったことがうかがえます。

 

リファレンス

・日本家族計画協会 https://www.jfpa.or.jp/paper/main/000047.html

・吉村やすのり 生命の環境研究所 http://yoshimurayasunori.jp/blogs/第8回男女の生活と意識に関する調査結果―Ⅲ/

UNFPA世界人口白書2019のデータを以下に引用します。

  15~49歳女性の避妊実行率(%)(何らかの方法) 15~49歳女性の避妊実行率(%)(近代的避妊法) 15~49歳女性の家族計画のアンメットニーズ(% 15~49歳女性の避妊需要の充足率(近代的避妊法)(%) ジェンダーパリティ指数、中等教育(2017) 15~19歳思春期女子1000人当たりの出生率(%)
日本 44 53(下降傾向) 40 21 1.01 4
米国 74 67(上昇傾向) 7 91 1 20
スウェーデン 69 63(上昇傾向) 10 87 1 4
シエラレオネ 20 19(上昇傾向) 26 44 0.97 125
ブラジル 80 77(上昇傾向) 7 92 1.05 62

日本は、避妊実行率が低く、近代的避妊法の実行率は下降傾向で、避妊需要の充足率が低かったようです。医療者とリプロダクティブ世代女性との間の意識・知識のギャップが大きいことがうかがえます。

 

リファレンス

・国連人口基金 https://tokyo.unfpa.org/ja/publications/世界人口白書2019日本語抜粋版

日本で効果的な避妊方法が普及しなかった理由

日本で認可後も近代的避妊法が普及しない要因について、「日本ではなぜ近代的避妊法が普及しないのか(平山満紀 明治大学)」という論文の内容を以下に引用します。 

  1. 薬局で買えない処方箋
  2. 2005年のガイドライン改定まで、処方の際に医療機関での子宮がん検診、性感染症検査、血液検査などいくつかの検査が勧められており、女性にとって大きなハードルとなっていた。
  3. 保険対象外で高価                                                                                                                健康保険が適用されず、検査料・指導料を含めると1ヶ月3000円程度となる。これは、保険適用や無料配布の国に比べると高価である。
  4. 医師が10台や35歳以上には処方を躊躇することがある                           徐々に弱まりつつあるが、日本ではこれまで医師自身にピルは副作用の多い危険な薬という偏見があり、10台や35歳以上には制限すべきだという意見があった。
  5. ピルを無料提供する組織がない                                      学割を実施したり、低所得者向けの避妊サービスを提供する組織もない。
  6. 医療や製薬会社から独立した女性の性の健康のための活動や組織がない                    日本では、厚生労働省-医療者-製薬会社から独立した当事者主体の活動や組織が非常に成り立ちにくい。

 

以上より、より効果的な避妊方法の普及がなかなか進まなかった理由として、社会制度の問題、医療者側の意識、社会におけるセクシュアル・リプロダクティブライツの軽視などがあったことが考えられます。

 

リファレンス

・明治大学心理社会学研究資料はこちら

 

まとめ

近年はインターネットの普及もあり医療者の啓蒙ならびに当事者との間の情報交換の場が広がりつつあり、避妊に関する女性の意識が高まってきているようです。そのような今こそ、避妊方法についての正しい知識をより普及させていくこと、また全てのリプロダクティブエイジの女性が、各々にとってより安全で効果的な避妊方法を選択していけるような、社会的環境整備が望まれます。

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