過敏性腸症候群|clila疾患情報

【目次】
1.過敏性腸症候群とは
2.過敏性腸症候群の原因
3.過敏性腸症候群の症状
4.過敏性腸症候群の検査と診断
5.過敏性腸症候群の治療
6.過敏性腸症候群の予防
 

1.過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は、「便秘と下痢を繰り返している」「急に激しい腹痛が起きてトイレに駆け込む」「ガス(おなら)が多いがずっとお腹が張っている」等、お腹の痛みや調子が悪く、それと関連して便秘や下痢などの便通の異常(排便回数や便の形の異常)が数ヵ月以上続く病気です。血液検査や内視鏡検査では異常が見つからないこと、ストレスで症状が悪化することから心身症の一つとされています。10人に1人がこの病気であるといわれているほどよく起こる病気で、緊張や不安などのストレスをきっかけに発症・悪化することがあります。女性のほうが多く10代から20代で発症する傾向があり、年齢とともに減ってくることがわかっています。

 

2.過敏性腸症候群の原因

発症にはストレス、食生活、生活習慣などの影響が指摘されていますがはっきりとした原因はわかっていません。
小腸や大腸は食べ物を消化・吸収するだけではなく便を排出する機能も持っていますが、食べ物を排出する方向へ移動させるための腸の蠕動運動は自律神経がコントロールしているため、ストレスによる悪影響が出やすく、不安な状態になると運動が過剰になったり痙攣したりして同時に痛みを感じやすい状態になります。緊張や不安の他、過労や睡眠不足も大きなストレスとなります。
また過敏性腸症候群の患者さんは特に痛みを感じやすい人が多く、そのため腹痛が起こりやすいのが特徴です。刺激を腹痛として感じる脳が過敏になっている知覚過敏も原因と考えられています。知覚過敏になると健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し弱い刺激でも痛みを感じます。細菌やウイルスが原因となる腸炎にかかった場合、回復したあとに過敏性腸症候群になりやすいことは言われています。

 

3.過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は症状の発作が現れては軽快するというサイクルが不定期に繰り返されます。発作は起きている間に起こり寝ている人が症状で目覚めることはまれです。
過敏性腸症候群の症状としては、排便に伴う腹痛や排便することで緩和する腹痛、排便の頻度(便秘や下痢など)や便の硬さ(軟便またはかたまりが多く硬い)の変化、腹部膨隆、便に粘液が混じる状態、排便後の残便感などがみられます。痛みは持続する鈍痛あるいはけいれん痛の発作として現れることがあり、通常は下腹部に起こります。排便の回数と便の形状から「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」に分けられます。便秘型は排便の回数が週3回以下に減少し、排便時には腹痛がを伴い、強く息まなければ排便出来ず、便はウサギの糞の様なコロコロとした便しか出ず、残便感が残るのが特徴です。下痢型は電車内や長時間の会議中、授業中など、トイレに行きづらい状況やトイレのない状況下に置かれると、急激な腹痛&便意を伴い、柔らかい便や水のような便が排泄されます。しかし便意が強いのにも関わらず十分な排便ができず、残便感が残ることが多いのが特徴です。また、突然便意がくるかも、という不安がさらに症状を悪化させます。混合型が最も多く、下痢型と便秘型の両方の特徴を併せ持ち、便が不安定に変動し下痢と便秘を繰り返します。その他、腹部膨満、ガス、吐き気、頭痛、疲労、抑うつ、不安、筋肉痛、集中力低下などの症状を起こすことがあります。

 

4.過敏性腸症候群の検査と診断

診断には国際的に用いられているローマⅢ基準を用います。
症状が起こり始めた時期、頻度、便の状態、排便回数、症状が起こるきっかけ、生活習慣、食事、ライフスタイルやその変化、病歴や内服歴などについて問診します。
基本的には下部消化管内視鏡(大腸カメラ)や血液検査で大腸癌などの悪性疾患やクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症腸疾患等、他の疾患がないことを確認し除外診断をします。これらの疾患(器質的疾患)が疑われるような、血便や発熱、体重減少、異常な身体所見などの危険徴候がある場合、また50歳以上の患者さん、過去に大腸の病気に罹ったり、家族歴があるなどの危険因子がある患者さんに対しては積極的に下部消化管内視鏡検査や大腸造影検査を行います。また甲状腺機能異常などの内分泌疾患や糖尿病性神経障害、寄生虫疾患が症状の原因となる場合もあるため、血液検査、尿・便検査を行います。また、症状に応じて腹部超音波検査、腹部CT・MRI検査などの画像検査を追加する場合があります。

IBSの診断基準(ローマⅢ基準)

最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、下記の2項目以上の特徴を示す
1)排便によって症状がやわらぐ
2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)

 

5.過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療目標は患者さんが訴える主症状を和らげることであり、その為には薬物療法でつらい症状を緩和させながら生活習慣の改善やストレスの解消を試み、症状の改善と再発防止を行います。薬物療法は下痢型、便秘型、混合型、分類不能型に分類し、さらに便の形でも分類し、腹痛などの症状を考慮し内服薬を決定します。
薬物療法で最初に用いるのはどのタイプにも使える薬です。消化管機能調節薬と呼ばれる腸の運動を整える薬や、プロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など生体にとって有用な菌の製剤)、高分子重合体といわれる水分を吸収し便の水分バランスを調整する薬があります。タイプ別では、便秘型には便を柔らかくする粘膜上皮機能変容薬、セロトニン4受容体刺激薬という腸の動きを活発にする薬を使用することが勧められています。下痢型には腸の運動異常を改善させるセロトニン3受容体拮抗薬(5-HT3拮抗薬)、ロペラミド塩酸塩などの止痢薬を用います。また腹痛の改善には桂枝加芍薬湯、便秘型に対しては大建中湯など漢方薬を使用することも勧められています。うつ症状が強い場合、腹痛を和らげる作用がある抗うつ薬を用いられ、三環系抗うつ薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬が有効です。不安が強い場合はベンゾジアゼピン系抗不安薬を用いることもあります。ただし、抗不安薬は依存性の問題もあり長期間の使用は慎重に行います。これらの薬物療法を4~8週間続け、改善すれば治療継続または終了とします。
薬物療法以外の治療法は食事療法と運動療法です。ヨーグルトなどの発酵食品は症状の軽減に有効です。逆に炭水化物あるいは脂質を多く含む食事、コーヒー、アルコール、香辛料などの刺激物の摂取は腹痛や便通の変化を起こしやすいためできるだけ控えることが推奨されます。便秘型には穀類、豆類、いも類等の食物繊維を多く含む食品が効果的です。さらに、適度な運動もストレスを減弱し、腸内環境を整える助けにもなり症状の軽減効果が期待できます。

 

6.過敏性腸症候群の予防

残念ながら過敏性腸症候群を予防できたという研究は現在のところありません。しかし、過敏性腸症候群になりやすい要因はいくつか分かっており、それらを避けるとことが大切です。要因の1つとして挙げられるストレスを減らすため、睡眠や休養をしっかり取るなど規則正しい生活習慣を心掛け、軽い運動を習慣化することや趣味などの時間を作ること、毎日、入浴し体を温めること等が予防につながります。また食事においても暴飲暴食は避け、可能な限り毎日同じ時間帯に食事をすること、栄養バランスに気を付けること、食物繊維と水分を十分に取ることなども大切です。脂肪分や肉類が中心のメニューではなく野菜や乳酸菌を適度に摂取できるよう食事の工夫をしてみてください。

 

姫野愛子消化器内科医2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

 

<リファレンス>
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014
日本消化器病学会雑誌 2019;116:570―575
日本消化器病学会雑誌,2014; 111:1323-1333
Gastroenterology 150 ; 1393―1407 : 2016

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