筋萎縮性側索硬化症(ALS)|clila疾患情報

【目次】

1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは
2.筋萎縮性側索硬化症(ALS)原因
3.相談の目安
4.疫学的整理
5.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状
6.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断方法
7.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の重症度分類
8.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療
9.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断の難しさ

 

1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは

 体の筋肉は脳からの指令を受けて動きますが、その指令を伝達する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患です。神経の命令が伝わらなくなることで、筋肉が徐々に動かなくなり、筋力も低下し、筋肉がやせてきます。手足や喉、舌、呼吸に必要な筋肉に症状が現れますが、意識や体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれるのが一般的です。

 Amyotrophic lateral sclerosisを略してALSの略語で表されます。

 

2.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因

 はっきりとした原因はわかっていませんが、神経の老化や興奮性アミノ酸の代謝異常やフリーラジカルが関係しているといわれています。

 筋萎縮性側索硬化症の約10%が家族性ですが、家族性の約20%で、細胞内のミトコンドリアで発生した活性酸素を無毒化する酵素の遺伝子に異常があることが知られています。その他の原因遺伝子も徐々に解明されつつあります。

 

3.相談の目安

字が書きづらい、箸がうまく使えない、腕が上がりにくい
歩きづらい、階段が昇りづらい、スリッパが脱げやすい
食べ物が飲み込みづらい、言葉をしゃべりづらい
体重が減った、筋肉がやせてくる、手足の筋肉がピクピクするなどの症状が現れたとき

 

4.疫学的整理

 筋萎縮性側索硬化症は国の指定難病の一つで、現在日本では約9900名の方が難病指定を受け治療を受けています。男女比は、 1.3:1と男性にやや多く、年齢層は50~70歳代での発症が多いです。

 

5.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状

 この病気は常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはありません。 体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸筋も働かなくなって大多数の方は呼吸不全が生命予後を左右します。

 筋萎縮性側索硬化症には初発症状がでる部位別に大きく3つのタイプに分けられます。1番多いタイプは上肢型、2番目に多いのが下肢型、次いで多いのが、嚥下障害や構音障害から始まる球麻痺型があります。この他にも呼吸困難が先に現れるタイプや認知症が先行して現れるタイプなどがあります。いずれの場合でも、症状が進行すると全身の筋肉がやせて力が徐々に入らなくなり、歩行、構音、嚥下、呼吸の障害が徐々に生じてきます。

 その他、体重減少や筋肉がやせてくる、手足の筋肉がピクピクする、痛み、不眠、唾液が増える、むせやすくなるなどの症状があります。進行しても一般的に、意識や視力や聴力、体の感覚、内臓機能、排泄機能、眼球運動は保たれます。

 

6.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断方法

 神経学的診察を行い、この病気が疑われると、神経の障害の程度を調べるため針筋電図・神経伝導速度検査などの生理学的検査を受けます。

 類似疾患と区別するために、血液検査、頭部MRIやCT検査などを行います。他の病気である可能性が除外されたときに筋萎縮性側索硬化症であると診断されます。原因遺伝子の特定のために遺伝子検査を行う場合もあります。

 

7.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の重症度分類

 障害による生活への支障の度合いや必要なケア・治療に応じて以下のように重症度分類されます。

重症度1

家事・就労はおおむね可能

重症度2

家事・就労は困難だが、日常生活(身の回りのこと)はおおむね自立している

重症度3

自力で食事、排泄、移動のいずれか1つ以上ができず、日常生活に介助が必要

重症度4

呼吸困難・痰の喀出困難あるいは嚥下障害がある

重症度5

気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養等)

人工呼吸器使用している

*重症度2以上が難病指定の対象になります

 

8.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療

 筋委縮性側索硬化症の原因の解明が進むにつれて治療薬も増えきました。以前からリルテック(リルゾール)という内服薬がありましたが、2015年からラジカット(エダラボン)の点滴治療も保険適応になっています。新しい内服薬や遺伝子治療、iPS細胞を用いた治療薬も実用化に向けて研究が行われています。

 痛みが生じた場合、筋弛緩薬や鎮痛薬、漢方薬など各種薬剤の使用、関節他動運動やマッサージ、体位交換、マットや体位の工夫などのリハビリテーション的アプローチが行われます。

 会話や書字が困難になった場合、障害の部位と程度に応じて、言語リハビリテーションの実施、筆談、指文字、文字盤に加えて、補助・代替コミュニケーション手段が使用されます。筋肉や視線、脳波などの動きを検出して電気信号に変換させ意思の伝達を可能にします。気管切開の状態ではスピーキングカニューレや電気式人工喉頭でコミュニケーションを図ることもあります。

 食べ物の咀嚼や飲み込みが難しくなった場合、症状の段階に合わせて嚥下リハビリテーションを行うことが効果的です。食べ物の形態をミンチにしたり、とろみをつけたり、ゼリー状にするなどの工夫することで、食事の楽しみを維持し栄養状態の悪化や体重減少を防ぐことができます。嚥下障害がさらに進行した場合は、胃ろうなどの経管栄養や高カロリー輸液の点滴を行います。

 呼吸障害に対しては、マスクによる非侵襲的な呼吸補助を行います。このような呼吸器を用いた陽圧換気療法は、呼吸不全による低酸素血症を改善し、脳や筋肉を含む諸臓器の機能を改善することができます。それだけではなく一定時間、陽圧換気を行うことで疲労した呼吸筋が休息し、筋力の回復も認められます。

 病状がさらに進行すると気管切開による侵襲的な呼吸補助が必要になりますが、マスクによる陽圧換気や呼吸器リハビリテーション、機械的排痰を早期に組み合わせて開始することで、気管切開への移行を1年以上遅らせることができます。陽圧換気療法は生命維持装置としての位置付けではなく、症状や予後を改善し、QOL向上に役立てることができます。

 症状が進行する前にあらかじめ、どのような治療法を選択するかについての話し合いを、早期から十分に時間をかけて行っておくことが大切になります。

 

9.筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断の難しさ

 発症してから受診し診断に至るまでに、日本では平均13.1ヵ月かかっています。発症しやすい年齢が50〜70代であるため初期の症状を加齢や持病によるものと考えてしまうこと、症状がさまざまな部位に現れるため、何科にかかればいいかわからないことなどがその理由と考えられます。

 かかりつけ医、整形外科、一般内科、耳鼻科などの受診に至った後も、確定診断に至るまで医療機関を何回も転院されるケースもしばしばみられます。

 神経内科医による専門的な診察、検査によって初めて確定診断がなされる疾患ですので、先述した症状に心当たりがある場合は、神経内科の受診をするようにしましょう。

 

久保田 英里 循環器内科医 国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

<リファレンス>

難病情報センター 筋萎縮性側索硬化症 
https://www.nanbyou.or.jp/entry/214

一般社団法人 日本ALS協会 
http://alsjapan.org

筋萎縮性側索硬化症の包括的呼吸ケア指針
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/pdf/2008als.pdf

日本神経学会 筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/als2013_index.html

 

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