再生不良性貧血|clila疾患情報

【目次】

1.再生不良性貧血とは
2.再生不良性貧血の原因
3.再生不良性貧血の相談の目安
4.疫学的整理
5.再生不良性貧血の症状
6.再生不良性貧血の診断方法
7.再生不良性貧血の重症度分類
8.再生不良性貧血の診断の難しさ
9.再生不良性貧血の治療法

 

1.再生不良性貧血とは

 骨髄の増殖機能が低下し、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾患です。白血球は細菌などから身体を守る細胞、赤血球は肺から取り込んだ酸素を臓器に運搬する細胞、血小板は出血を止める細胞です。この状態を医学的には汎血球減少症と呼びます。重症度が低い場合には、貧血と血小板減少だけがあり、白血球数は正常近くに保たれていることもあります。白血球には好中球、リンパ球、単球などがあり、再生不良性貧血で減少するのは主に好中球です。これらの血球は骨髄で作られますが、再生不良性貧血の方の骨髄を調べると骨髄組織は多くの場合脂肪に置き換わっていて血球が作られていません。そのために貧血、感染による発熱、出血などの症状が起こります。この疾患は英語でAplastic Anemiaといい、その頭文字をとってAAという略語で表されることもあります。

 

2.再生不良性貧血の原因

 再生不良性貧血の原因には先天性、後天性に分けられ、原因については以下のようなものが挙げられます。再生不良性貧血の原因の9割は特発性と考えられています。

先天性 Fanconi症候群、先天性角化不全症

後天性 特発性

    続発性 薬物:抗生物質、抗リウマチ薬、抗炎症薬、抗けいれん薬、抗甲状腺薬

           抗うつ薬、経口糖尿病薬、抗マラリア薬など

        化学物質:ベンゼン、有機塩素を含む殺虫剤、クロロフェノールなど

        ウイルス:肝炎ウイルス、パルボ19ウイルス

        放射線被爆、妊娠、膠原病

    特殊型 肝炎後再生不良性貧血

        再生不良性貧血ーPNH症候群       

 

3.再生不良性貧血の相談の目安

検診で、赤血球や白血球、血小板の減少が指摘されたとき

顔色が悪い、息切れ・動悸がする、頭痛、疲れやすい、鼻血や歯茎からの出血がよくある、

あざができやすい、皮膚に紫色の斑点ができる、風邪をひきやすいなどの症状がでたとき

 

4.疫学的整理

 日本では7905人(平成30年)が再生不良性貧血の難病指定を受け治療を受けています。

 

5.再生不良性貧血の症状

 赤血球、白血球、血小板などが減少することに伴って症状が現れます。具体的には、貧血症状として、顔色が悪い、息切れ、動悸、めまい、身体を動かしたときの疲れやすさ、全身がだるい、脱力感、頭痛など、易感染性の症状として、風邪を引きやすい、発熱、出血傾向の症状として、皮膚や粘膜に点状の出血、鼻血、歯肉出血、紫斑、特に重症な場合は、血尿、性器出血、脳出血、消化管出血などの症状がでることあります。

 

6.再生不良性貧血の診断方法

 症状や血液検査の結果に加えて、骨髄穿刺・生検、骨髄の染色体検査、脊椎MRI検査などを行い総合的に判断し診断に至ります。

 a.症状として、貧血、出血傾向、ときに発熱を認める

 b.血液検査にて以下の3項目のうち、少なくとも二つを満たす

   ①ヘモグロビン濃度:10.0g/dL未満 

   ②好中球:1,500/µL未満 

   ③血小板:10万/µL未満

 c.汎血球減少の原因となる以下のような他の疾患を認めない

  <汎血球減少を来すことの多い他の疾患>
  白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、巨赤芽球性貧血、癌の骨髄転移、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、全身性エリテマトーデス、血球貪食症候群、脾機能亢進症(肝硬変、門脈圧亢進症など)、感染症など

 

7.再生不良性貧血の重症度分類

  再生不良性貧血は血球の減少の程度により、5段階に分類され重症度によってそれぞれ治療方針が異なります。

重症度

項目

stage1

軽症

下記以外

stage2 

中等症

以下の2項目以上を満たす場合

 網赤血球<6万/μl

 好中球<1000/μl

 血小板<5万/μl

stage3

やや重症

以下の2項目以上を満たし、毎月2単位以上の赤血球輸血が必要な場合

 ・網赤血球<6万/μl

 ・好中球<1000/μl

 ・血小板<5万/μl

stage4

重症

以下の2項目以上を満たす場合

 ・網赤血球<2万/μl

 ・好中球<500/μl

 ・血小板<2万/μl

*網赤血球:成熟した赤血球になる前段階の幼若な赤血球。

 好中球:白血球の一種で体内に侵入した細菌などを発見して処理する中心的な役割を担う。

*stage2~5の場合、国の難病指定の対象となります。

 

8.再生不良性貧血の診断の難しさ

 汎血球減少を認めた場合は、再生不良性貧血を疑い検査を進めます。汎血球減少を来す病態は様々ですが、再生不良性貧血は骨髄での血球の産生が低下する病態なのでそれを確認するために骨髄検査が必須となります。骨髄検査で造血組織が減って、脂肪組織の増加が認められれば診断が確定します。急性白血病でも汎血球減少を来しますが、異常な白血病細胞の有無を確認することで両者を区別できます。しかし、骨髄異形成症候群とは鑑別が難しく、繰り返し骨髄検査が必要になることもあります。この場合、骨髄の染色体検査、脊椎MRI検査などが診断の役に立ちます。

 

9.再生不良性貧血の治療法

 再生不良性貧血の治療は、その重症度により異なるために、診断がついた時点でまず重症度を判定します。治療法には輸血やG-CSF(白血球を増やす薬)などの症状の緩和を目的とした治療と、蛋白同化ステロイド療法、免疫抑制療法、造血幹細胞移植などの造血の回復を目指した治療があります。軽症・中等症の方では無治療で経過観察しますが、汎血球減少の進行例では免疫抑制療法(シクロスポリン)や蛋白同化ホルモンの対象となります。重症な方では、40歳未満で白血球のHLA型が一致した兄弟姉妹がいる場合には造血幹細胞移植が推奨されます。それ以外の方では免疫抑制療法(抗胸腺細胞グロブリンとシクロスポリン併用療法)が選択されます。免疫抑制療法の無効例では非血縁者ドナーや臍帯血などを用いた造血幹細胞移植が選択されることもあります。

 

久保田 英里 循環器内科医 国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

<リファレンス>

難病情報センター 再生不良性貧血

https://www.nanbyou.or.jp/entry/265

造血細胞移植ガイドライン 再生不良性貧血(成人)第2版

02_04_apla02.pdf (jshct.com)

造血細胞移植ガイドライン 再生不良性貧血(小児)第3版

02_05_aa_ped03.pdf (jshct.com)

 

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