喘息とは|clila疾患情報

目次

喘息とは

原因

疫学的整理

海外動向

症状

診断の方法

診断の難しさ

重症喘息

 

喘息とは

喘息とは気道に炎症が続き、様々な刺激に気道が過敏になって発作的に気道が狭くなることを繰り返す疾患です。

 

原因

喘息は気道の慢性炎症を本態として、変動性をもった気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患と定義されます。気道炎症には好酸球、T細胞、マスト細胞などの炎症細胞、気道上皮細胞、線維芽細胞をはじめとする気道構成細胞、および種々の液性因子が関与します。

喘息の病態は、個体因子と環境因子が複雑に絡み合って形成されます。個体因子として遺伝子素因、アトピー素因、気道過敏性、性差、出生体重や肥満が挙げられます。また、環境因子は喘息の発病に影響を与える因子と、病態の増悪に影響を与える因子があります。発病因子には、アレルゲン、呼吸器感染症、大気汚染、喫煙、食物、鼻炎、増悪因子にはアレルゲン、大気汚染、呼吸器感染症、運動ならびに過換気、喫煙、気象、食品・食品添加物、薬剤、感情変化とストレス、刺激物質、二酸化硫黄・黄砂、月経・妊娠、肥満、アルコール、鼻炎が挙げられます。

 

疫学的整理

2003年の、喘鳴や呼吸困難感等の症状を有する方を対象とした全国調査では、有症率は小児11~14%、成人(15歳以上)6~10%でした。有症率については、1960年代には小児・成人とも約1%でしたが、2000年初頭までに小児で10%以上、成人でも6~10%程度に増加しています。

男女比については、若年ほど男子優位で、思春期以後は女子優位となります。日本における患者総数および外来患者数をみても、14歳までは男性が多いですが、15歳以上では女性が多くなっています。

喘息症状を有する学童の発症時期は、2~3歳をピークにその後緩やかに低下する傾向がありましたが、近年、発症の低年齢化がみられます。成人喘息では、成人発症、特に中高年発症が多くなっています。

日本の有病率は年々増加傾向にありますが、発作による救急外来受診や入院は、この20年で大幅に減少し、喘息死も1990年代中頃から順調に低下しています。年間死亡数は1950年頃には約16000人でしたが、2016年には1454人となりました。2017年には0~14歳の喘息死が0になりましたが、死亡数における65歳以上が占める割合は91.6%と高く、若年者の喘息死をゼロにするとともに、高齢者喘息死亡を防ぐことが重要です。

 

海外動向

世界97か国、233拠点で13~14歳を対象に行われた調査では、累積有病率で0.8%Tibet in China~ 32.6%(Wellington in New Zealand)と大きな地域差が見られます。日本(福岡市)でおよそ13%と欧米よりやや低い割合でした。この地域差は、①開発途上国に少なく、先進国に多い、②同じ文化度のなかでは寒冷地に少なく、温暖地に多い結果でした。

 

症状

咳、喘鳴、息切れ、胸部絞扼感などを感じ受診することが多く、夜間や早朝に増悪する傾向にあります。症状は感冒、アレルゲンの暴露、天候の変化、笑い、強い臭気などで誘発されることに注意が必要です。

胸部絞扼感のみ、咳のみといった非典型的な症状だけが見られる場合もあるので、喘鳴の訴えがない、診察時に喘鳴を聴取しないからといって喘息を否定はできません。深呼吸でせき込んでしまう方や強制呼気をしても最後まで呼出できない方などは、喘息の可能性に注意すべきであると考えられます。

また、喘息の症状には日内変動等の特徴があるため、喘鳴の症状が一日中あるのか、もしくは夜間や朝方なのか、または温度差や環境要因によって誘発されるのかなども重要な情報です。

 

診断方法

「喘息予防・管理ガイドライン2018」の「診断」 の項目では、「診断基準」ではなく「診断の目安」として、変動性のある臨床症状を一番目に掲げています。

喘鳴を伴う呼吸困難感が発作性・変動性に出てくるのが典型的な喘息です。非発作時は通常、健常者と変わらず正常です。症状が全くない時とひどい時の気道狭窄症状に振れ幅が非常に大きいということが、喘息の特徴の一つです。

 

喘息の臨床診断は、「喘息予防・管理ガイドライン2018」によると、①発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳の反復、②可逆性の気流制限、③気道過敏性の亢進、⑥他疾患の除外が重要で、⑤アトピー素因の存在は喘息を強く示唆するとされています。 

<気道可逆性>

気管支喘息の気道閉塞は自然経過もしくは薬物治療により正常化します(気道可逆性)。この気道可逆性の有無を判断するために気道可逆性検査を行います。短時間作用性気管支拡張薬吸入の前後に行った呼吸機能検査で、FEV1(一秒量)改善率12%以上、かつFEV1改善量200ml以上であるとき、有意な気道可逆性があると判断します。

 

<気道過敏性>

気管支喘息では、さまざまな外因性および内因性刺激(冷気、タバコの煙等の物理的刺激、運動負荷、メサコリン・アセチルコリン・ヒスタミン等の科学的刺激、抗原、非ステロイド性抗炎症薬・β遮断薬等の薬剤等)に反応して気流制限を生じます。この気道反応性が気道過敏性とよばれるもので、気道過敏性は、喘息の重症度と相関します。気道過敏性検査は気流制限が認められない場合や、気道可逆性が検出されない場合、気管支喘息の診断において必要となります。

気道過敏性検査には、気管支収縮薬吸入により気道の収縮反応をみる、直接的気道負荷検査が一般的で、気道過敏性を定量的に評価するものです。気管支収縮薬としては、ヒスタミン、アセチルコリン、並びにメサコリン等が用いられます。気管支収縮薬を吸入し、FEV1の低下を気道収縮反応の指標として評価します。

 

<気道炎症>

喘息の病態の根底にある気道炎症の程度を評価する方法として、呼気NO濃度測定、喀痰中の好酸球比率の評価、末梢血好酸球数の測定が行われます。呼気中のNO濃度測定は、簡便かつ非侵襲的に短時間で結果が得られるため、喘息の診断や治療反応性をみる目的で、普及しつつあります。

また、妊婦喘息において、呼気NO濃度測定をもとに管理した場合、症状のみで管理した場合と比較して、妊娠中の喘息増悪率を50%減らすことができ、新生児の入院率を減らすことができたとの報告があります。その後、その試験に参加した母親から生まれた子供の発症率をみると、呼気NO濃度測定をもとに管理した母親から生まれた子供は、喘息の発症を有意に減らすことができました。以上より、妊婦喘息において、症状に加えて呼気NO濃度をモニターしながら適切に喘息管理を行うことは、妊婦自身のみならず、出産した子供の喘息発症リスクを減らすことにつながることが示されました。

喀痰中の好酸球比率は、自然に喀出される痰あるいは3~5%の高張食塩水をネブライザー吸入させて採取した喀痰の細胞成分を解析します。好酸球比率が3%以上であれば、好酸球性気道炎症ありと判定されます。

末梢血好酸球数は、喀痰好酸球比率に比べ、簡便・安価に行うことができる検査です。喀痰好酸球比率3%に対応する血中好酸球数は220~320/μlとされています。ただし、末梢血好酸球検査は薬剤アレルギー等でも上昇し、必ずしも喘息の気道炎症を反映するわけではありません。

 

診断の難しさ

喘息患者は咳、喘鳴、息切れ、胸部絞扼感などを訴えて受診することが多いですが、これらは日常臨床で頻繁に経験する非特異的な症状です。正しい診断のために、まずは感染性疾患の除外が必要です。成人の場合は、年齢や喫煙歴、併存疾患も考慮します。明らかな原因がなく、症状の持続性や反復性から喘息の可能性が高いと考えられた場合には、さらに問診を行い情報を収集します。 

成人喘息を疑う場合の追加問診項目

 「喘息予防・管理ガイドライン2018」より

  • 症状の初発時期、過去の医療機関受診・投薬歴と治療に対する反応
  • 既往歴:アレルギー性鼻炎、薬剤や食物アレルギー
  • 生活歴:喫煙、常用薬剤(健康食品も含む)、住環境、ペット飼育状況
  • 職歴と職場環境:勤務と症状との関連に注意する
  • 家族歴:アトピー素因、喘息

 

喘息を疑った際には、呼吸音の聴診が有用です。喘息に特徴的な聴診所見は、呼気性喘鳴で、呼気の延長を伴うこともあります。安静換気で喘鳴が明らかでなくても、強制呼気にて聴取可能となる場合もあります。

併存症のない軽症喘息では、咳、喘鳴以外の身体所見は乏しい事が多く、以下のような所見を認めた際には、喘息以外が疑われます。

喘息以外の疾患を疑わせる所見

「喘息予防・管理ガイドライン2018」より

  • 慢性の咳・痰にもかかわらず喘鳴や呼吸困難を伴わない
  • 症状は持続しているが聴診所見が一貫して正常である
  • 明らかな水泡音、呼吸音の左右差、常に同じ部位に限局した喘鳴がある
  • 頚部に最強点を示す吸気性喘鳴(stridor)、吸気終末のみに目立つ喘鳴(squawk)がある
  • 心疾患を疑わせる病歴や身体所見を認める
  • 著明なふらつきや末梢のしびれを伴う呼吸困難を認める

 

重症喘息

吸入ステロイド薬治療の普及と共に、喘息のコントロールは顕著に改善しました。喘息治療においては、気道炎症を制御し正常な呼吸機能を保つことで、呼吸機能の経年低下や喘息死、治療薬の副作用発現を抑制・回避し、患者が健常人と変わらない日常生活を送ることができることを目指しています。喘息のコントロールには、アレルゲン回避を中心とする原因の除去および吸入ステロイド薬を中心とした薬物治療が推奨され、状況に応じて他の治療薬を組み合わせていきます。内科学会誌

一方、標準的治療を行ってもコントロールが不十分である喘息の症例もみられます。これらの症例を診る際には、まず、本当に喘息かどうか、併存症はないか、増悪因子はないかを検討する必要があります。これらの因子に関する治療と評価を行っても十分なコントロールが得られない症例を重症喘息とよびます。

喘息のコントロールが悪化する理由として最も頻度が多いのは、患者による不適切な薬物使用法とされます。このため、まずは服薬アドヒアランスと吸入手技のチェックを行うことが重要です。

服薬アドヒアランス・吸入手技に問題がない、あるいは修正しても喘息のコントロールが改善しない場合、次にチェックすべきは環境要因、なかでも喫煙と感作抗原です。喫煙はステロイド感受性を低下させるため、喘息の重症化因子となりえます。また、感作抗原として、ネコやハムスター、ウサギなどのペット、真菌への暴露の有無を確認します。職業性喘息もしばしば治療抵抗性となります。

それでも改善しない場合、喘息と鑑別を要する疾患や難治化させる併存疾患の有無を確認します。高齢者では腫瘍性病変や心不全、感染症などの合併の可能性が若年者と比較して高く、胸部X線での確認は重要です。また、生殖可能年齢の女性では喘息のコントロールと月経周期との関連を確認する必要があります。そのほかに、男性よりも女性で多くみられる重症喘息のタイプに肥満合併喘息とアスピリン喘息があります。Body mass index (BMI)35を超える高度肥満は女性における喘息重症化の危険因子とされます。

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