上手な病院のかかり方 アトピー性皮膚炎 【病院の選び方】

【目次】

1.          まず診断から

Ⅰ.はじめに 〜アトピー性皮膚炎を知ろう〜

 

よく「アトピーは治らないのですよね」と言われます。たしかに「治ってしまって終わり」とはならないことが多い病気です。

でも、がっかりすることはありません。治療の目標は、日常困らないように痒みや皮膚の状態をコントロールしていくことであり、それは可能です。さらに、悪化させないための予防も大事です。

どんな病気でも同じですが、長く付き合っていかなければならない病気では、自分でも正しい知識をもって、信頼できる医師と一緒に、上手に病院を利用していくことが必要です。そのためには、事前に病気について正しく知っておきましょう。

まずは簡単に、アトピー性皮膚炎の基礎知識です。

 

1.          まず診断から

アトピー性皮膚炎は赤ちゃんから子供さんの時期に多い病気ですが、大人になっても続く、大人になってから症状が出ることもあります。

 子どもさんの身体のかゆみ、赤い発疹、「アトピーですか?」と気にされる方が多いです。アトピー性皮膚炎というのは「湿疹」のひとつです。湿疹というのは立派な病名であり、皮膚の表皮というところに炎症が起こるものです。手湿疹、接触性皮膚炎(かぶれ)、乳児湿疹、乾燥性湿疹等々、いろいろな病気を含みます。できたばかりのものが急性湿疹、時間がたっていると慢性湿疹というふうに経過でわけることもあります。アトピー性皮膚炎は慢性湿疹の代表的なもの、と言えます。

病気は何でもそうですが、診断が大事です。本当にアトピー性皮膚炎でしょうか。「アトピーですか?」とその言葉に不安を持つ方もいます。「アトピー性皮膚炎の診断基準」はありますが、一人ひとり、症状の程度はいろいろです。

 

2.    アトピーと紛らわしい湿疹はいろいろある

子供さんの場合、もう少し軽い状態の湿疹はたくさんあります。年齢によっても症状が変化します。赤ちゃんのころはジクジクしがちな湿疹、2歳をすぎてくると乾燥した湿疹となることが多いのです。

乳児期には乳児湿疹、乳児脂漏性湿疹、幼児期の乾燥皮膚、小児乾燥性皮膚炎と呼ぶような状態があります。これらとアトピー性皮膚炎は、症状の程度によって連続していることもあります。ここからがアトピー性皮膚炎、とくっきりと線引きできないこともあるのです。軽い湿疹、皮膚の乾燥、症状に対しての治療方針は同じなので、病名にこだわる必要はありません。

もちろん症状が強ければはっきり診断できます。大人になって発症する方、ずっと連続している方は、どんなふうに治療を行っていくか、ということが大事です。治療は症状の程度に応じて選択していきます。

 

3.          気になる原因

「原因はなんですか?食べ物ですか?」という質問もよくいただきます。食物が原因となる方はごく一部です。

原因に関する研究も進んでいますが、皮膚のバリアが弱く、外からの刺激に弱くなってしまっている皮膚なのです。「これがあなたのアトピーの原因です」「原因を断てば治ります」というものではないのですが、症状を悪化させるものはあるので、それを避ける注意は必要になります。

 

4.治療の基本方針

アトピー性皮膚炎の治療は日本皮膚科学会のガイドラインがあり、これが基本方針になります。簡単にご紹介すると、軽い方は皮質ステドロイドの外用剤、抗ヒスタミン薬内服、中等症から重症になると免疫抑制剤など特殊な治療があります。最近では有効な生物学的製剤も使用できるようになりました。

様々な治療が行われているかもしれませんが、専門医がエビデンス(根拠となる実績)の検討を重ねてつくったガイドラインは基本の方針です。大きく外れることはおすすめしません。

 

 

II.           アトピー性皮膚炎で受診する病院、クリニック

 

大きく分けて病院と個人の診療所(クリニック)があります。通常の通院治療であれば、どちらでも可能です。診療科は皮膚科が中心であり、子供さんでは小児科でも治療していますし、アレルギー科などの内科の医師が診ていることもあります。

近年、特に治りにくいアトピー性皮膚炎の方に対して、新しい薬が使われるようになってきています。アトピー性皮膚炎に特に力を入れている、積極的に最新の治療を取り入れているところは、そういった情報をホームページなどで紹介しているはずですので、自身でも情報収集することは重要です。また、ステロイドへの不安に対する説明など患者さんの不安に対して対応していることがわかると安心です。

 

 

1.          病院の診療科

病院では「皮膚科」を掲げていれば、皮膚科医が診療をしています。小児は小児科でも診ています。毎日固定の医師がいるのか、決まった曜日だけの非常勤医師だけなのかなど、ホームページなどで体制を確認しましょう。

複数の医師がいると、若手の医師と指導医クラスの医師がいることが多いです。ベテランが必ずしも良いということではなく、問題があれば複数の医師で検討してもらうこともできます。自分が納得できる診療が受けられるかどうか、ということはどこを選ぶとしても同じです。

 

2.          クリニックの診療科

 クリニックは「皮膚科」だけを掲げているところと、内科・皮膚科、小児科・皮膚科、といった掲げ方をしているところがあります。皮膚科だけのクリニックは皮膚疾患だけをみている、多くは皮膚科専門医です。しかし、手軽だと思われるのか、時に皮膚科専門ではない医師が、皮膚科だけの診療を行っていることもあります。

2つ以上の診療科を並べているところでは、それぞれの専門医が別にいればよいのですが、通常は先に書かれている方がもともとの専門と考えてください。

皮膚科専門医でなくても、プライマリ・ケア、家庭医としての役割を担っているところはあり、外用剤やよく使う抗アレルギー剤などの飲み薬でコントロール可能な方は受診されることがあるかもしれません。アレルギー科を掲げているところにもアトピー性皮膚炎の方が受診されます。子供さんの場合は小児科でも治療しています。食事のアレルギーがある場合には小児科の分野です。

いろいろな医師がいます。どこまでの治療をするのかなどの方針が異なることもあります。自分で納得できる病院、クリニックで信頼できる医師と一緒に上手に病気に付き合ってください。

 

 

III.          病院やクリニックにかかるときに重視するポイント

 

アトピー性皮膚炎と診断され治療している場合とアトピー性皮膚炎ではないかな、と自分で考える場合があるでしょう。いずれにしても、受診をする前に自分自身の準備をすることが大事です。医療機関の力をしっかり利用し、このままでよいのか、見極めることができるのです。

 

1.情報は必要だが振り回されない

 情報があふれる時代です。いろいろな人の話を聞いたり、インターネットで調べたりするのは良いですが、いちいち心配していても前に進みません。「情報は客観視する」ことが重要です。つまりその情報はだれが発信しているのか、その人はどんな人なのか、冷静になることも大事です。

 主な病気には診療のガイドラインというものがあります。アトピー性皮膚炎であれば、日本皮膚科学会から立派なガイドラインが示されています。そもそもアトピー性皮膚炎とはどんな病気なのか、発症の原因、年代によって異なる症状や経過などを詳細に示しています。特に治療については、その目標を、軽度の方であれば日常生活に支障がなく薬もあまり必要としない状態となること、もう少し症状の強い方であっても、軽微な皮疹は持続するが、悪化することはまれで、悪化しても長引くことはない、という状態に保つこと、と示しています。どのような選択があって、どのような状態を目指すのか、わかりやすく噛み砕いてホームページなどで紹介しているクリニックも多いです。最新情報については適宜アップデートされています。

 

2.検討中のクリニックや病院の情報を得る

(1)体制や雰囲気など

病院やクリニックでは通常ホームページを持っています。それをみると、どんな医師がいてどんな体制で診療しているのかがわかります。行ってみようかなという病院はクリニックについては事前に調べてみましょう。

医師のやる気がみえ、患者さんへの素敵なメッセージが発信されているホームページがたくさんあります。どんな理念をもって患者さんに向き合っているか、ホームページからも感じ取れます。

もちろん、ホームページがないからと言ってダメだということではありません。古くからの診療所などではあまりそういった宣伝をしていないところも多いですが、地域に根ざして診療にあたっている方はたくさんいます。「皮膚科」を標榜していればアトピー性皮膚炎の方を診ないということはありません。一般的な抗アレルギー剤やステロイド外用薬の治療は当然ですが、それ以外の治療選択は直接尋ねてみないとわからないかもしれません。

医師の顔が見えて、発信している内容が信頼できそうかどうか。人づてに情報が得られればそれもよいでしょう。でも、あくまで個人の意見かもしれないので、冷静に聞きましょう。

(2)治療内容の確認

多くの病院やクリニックではそれぞれのところでどこまでの治療を行うか、ある程度決めています。すなわちステロイドの外用と抗ヒスタミン薬内服の治療までは行うがそれ以上の治療はそこではできないということです。コントロールが難しくなったら、大きな病院に紹介するという方針のところもあります。

アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用と抗ヒスタミン薬内服の治療でコントロール可能な方が一番多いのです。クリニックでも積極的に新しい治療も取り入れているところもありますし、病院によっても方針が異なることもあります。

 

3.自分の説明をきちんとできるように準備する

 いつからどんな症状があり、治療をしてきたか、それによって自分がどうかわったかを伝えられるでしょうか。症状の捉え方は人それぞれです。

医師側からみていると、軽いと思う症状でもすごく気にされる方もいるし、ひどい、もう少しコントロールできたほうが良いのにと思っても、気にしない、このくらいで仕方がないと慣れてしまっている方もいます。ただそれは、こちらから見えている患者さんの姿、本当に患者さんが思うこととは異なっているかもしれません。

事実と感情を分けて伝えるということも大事です。状態はこうである、知りたいこと、不安に思うのはこういうこと、ときちんと伝えられるように準備しましょう。

 

4.不安・不満はまず尋ねて、ダメなら次の行動

 もう少し良い状態にならないのか、このままの治療でよいのか疑問というとき、答えが納得できないなど、不安が残る場合には、まずはしっかり尋ねてみましょう。それでもやっぱり不安、というときには他の病院やクリニックを受診してみるのも良いと思います。

ドクターショッピング、あちこちを受診されるのは良いことではないとされます。でも、きちんと話を聞いた上でやっぱり、と思うときには受診先を変えても良いと思います。もちろん、特殊な治療を行う、時に入院するほどひどい、というときなどで、大きな病院に依頼するときには紹介状が必要です。

アトピー性皮膚炎、と診断が間違いない場合には、自分でしっかりとこれまでの経緯や薬の内容がわかっていて説明ができれば大丈夫でしょう。

 

5.医師のスキルと共感力

 医療のスキルとは確かな知識で治療の選択肢を適切に示してくれることがもちろん最重要です。もう一つ、患者さんは心配な気持ちをわかってほしい、寄り添ってほしいという気持ちもあるでしょう。辛い、不安をしっかりと感じて共感してくれる医師には安心できます。

なんとなく嫌だな、と思うこともあるかもしれません。治療方針に納得してこの医師のもとで治療を考えていけるのかどうか、スキルだけではないものを患者さんは感じ取るかもしれません。信頼できるかどうかを考えてみてください。

 医師だけではありません。看護師さんや事務の方を含め、その場の方々が雰囲気をつくります。信頼して通ってみようと思えるかどうか、自分の目的にあっているかどうか、冷静に観察してみましょう。

 

6.通院しやすい、継続できる

学校、仕事、日常の生活を維持しながらの治療が目標です。長いお付き合いの病気、しっかり通院ができるかどうかも多きなポイントです。薬をもらっていれば大丈夫、という状態だったら、少しゆとりのあるクリニックなどを選択するのもひとつの方法です。

 もちろん少し日常を犠牲にしても、治療を優先する必要がある、ここまで通いたい、と思うところがあるのならば、自分の生活を工夫しましょう。

 状態が落ち着いているけれども薬が必要、生活を優先したい、というときにはオンライン診療や電話投薬を行ってくれるところもよいでしょう。自分の状態をきちんと管理して責任を持ちつつ、必要なときに上手に利用するのです。

 

 

IV.          病院選びに失敗した際のリスク

 

皮膚科の専門医でなくてもよく勉強されている医師はたくさんいますが、やはり専門医とは他に見ている皮膚の疾患や新しい情報量が違う場合もあります。また、皮膚科医であっても、知識のアップデートをしていない、説明が十分でない、不安や不満に気づいてくれない、様々な医師がいるでしょう。

 

1.非常に古い知識のままの治療をしている医師

・ステロイドは使わないという方針

  使用したほうが良い状態なのに無理して使用しないのは、何も良いことはありません。ステロイドの強さ、使用量なども確認して使用する必要があります。

・厳しい食物制限をする

  食物の対応はきちんとした検査の上で信頼できる医師のもとで行う必要があります。小さいお子さんの食物アレルギーは小児科のアレルギー専門医がおすすめですが、食物制限などが必要になるお子さんはアトピー性皮膚炎の中でもごく一部です。

 

2.皮膚疾患の診断の問題

 

・診断が異なる

 診断において間違われることのある病気に“疥癬(かいせん)”があります。疥癬は疥癬虫(ヒゼンダニとも言います)の感染症で、ヒゼンダニが皮膚に寄生するので人に伝染ってしまいます。特殊な液を使って顕微鏡検査をしないと診断できないので、そういった検査ができないところでは診断できません。痒みが強く、湿疹のほうにみえるので注意が必要です。

 

*           ただし、こういった診断間違いはある一定の割合では起こることであり、必ずしもエラーとは言えないこともあると思います。絶対ではない医療のリスクというものも知っておいていただき、よくならなければそれをしっかり伝えることも大事です。

 

・治療中に発症した他の疾患を診断できない 

  治療中に皮膚の感染症を合併することがあります。ステロイド外用を続けると悪化してしまいます。経過中に発症することがある皮膚の感染症には、単純ヘルペスウイルス感染症、伝染性膿痂疹(とびひ:細菌による感染症)などがあります。いずれも治療法がアトピー性皮膚炎とは異なりますので、早期に気づく必要があります。アレルギー疾患ということでアトピー性皮膚炎をみていて、これらの疾患を普段治療しない医師は、見慣れていないかもしれません。

 

3.忙しすぎてじっくり診てもらえない

予約制のクリニックや病院が増えましたが、あまりにも患者さんが多く忙しいところでは、アトピーの方にはステロイド外用や抗ヒスタミン薬の変更等だけでの対応で、機械的に流れてしまったりするところもあるかもしれません。

看護師さんがきちんと説明してくださることも重要ですが、医師に言いたいことが言えない、と思うようではあなたのためになりません。

また、かかりつけなのに、急いで診てほしいときに、すぐにかかることができないのも困ります。でも、ここは、いつもと様子が違う、どうしても早めに診てほしいということを上手に伝えられるか、緊急時には対応してもらえるか、日頃の信頼関係を作っておくことも大事です。

 

4.新しい治療を示してもらえない

副腎皮質ステロイド以外の外用剤も一つの選択肢としてあります。新しい注射薬などの治療も使えるようになってきました。特になかなか症状がよくならないような方では、こういった選択肢を示す、使える医療機関を紹介する、などの対応をとってもらえずに、漫然と同じ治療を続けることになってしまいます。

 

5.雰囲気が悪い

しっかりと診療しようという病院やクリニックでは、看護師や事務スタッフの感じもよく、待合や全体の雰囲気も患者さんの居心地のよいように工夫されていると思います。あまりにもどうかな?と思う雰囲気のときは変えることも考えましょう。

 

6.標準的な治療以外の方法を勧める

治療の基本方針以外の独自の方法を行っているところがあるかもしれません。もちろん、漢方を上手に取り入れたりするのは良いのですが、いわゆる民間療法のような治療、特に保険適用外の高額なものを勧めるようなところはやめましょう。

 

 

V.           病院選びのチェックリスト

 

アトピー性皮膚炎は日常生活で困ることのないように上手に付き合っていく病気です。症状の程度もいろいろですので自分の状態や目的にあわせて選択する必要があります。はじめての受診と治療中の経過や自分の環境によっても変わるでしょう。

検査をしてほしい、手軽に受診して薬がほしい、別の治療を提案してほしい、自分の受診の目的に合っているかどうかが重要です。

 

受診前

□HPをチェックする:はじめて受診するときには確認しましょう。

  □専門医か、アトピー性皮膚炎の診療を積極的に行っているか

□アトピー性皮膚炎について丁寧に説明している

□ガイドラインに沿った標準的な治療を提供している

□治療に積極的に取り組んでいることが感じられる

□どんな治療を行っているかわかりやすい

□継続して通院できる

受診後

 □状態をしっかり確認してくれる

 □治療方針の説明を十分してくれる

 □聞きたいことが聞ける

 □説明に納得できる

 □古い治療方針を引きずっていない (脱ステロイド、厳格な食事制限など)

 □必要に応じて別の治療方法の提案がある

□悪化時に素早く対応してもらえる

□雰囲気が良い、自分に合っている

 

 

VI.          まとめ

 

 はじめての受診の前には、ホームページを確認するなど、事前の情報を少し集めましょう。情報はあふれていますが、一つの情報に振り回されずに、そんな意見もある、こんなことをやっている、と冷静に見ることも大事です。

 自分あるいは家族の症状についても同じです。どんな症状があるという事実、ここが心配だという気持ち、冷静にきちんと伝える必要があります。

 良い対話はお互いの力で作るものです。不安はあるかもしれませんが、聞きたいことを感じよく尋ねられる、素敵な患者さんは医療者との良い関係をつくり、医師の力を見極めて選ぶことにも繋がります。

準備は大事、そして、自分の目的に合っているか、納得できるか、自分も考えながら判断していくのです。

これからの時代、医療に主体的に参加する、賢い患者さんになりましょう。

 

永井 弥生   皮膚科医 
皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

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