アトピー性脊髄炎|clila疾患情報

【目次】
1.アトピー性脊髄炎とは
2.アトピー性脊髄炎の原因
3.アトピー性脊髄炎の疫学的整理
4.アトピー性脊髄炎の症状
5.アトピー性脊髄炎が重症化しやすい場合
6.アトピー性脊髄炎の診断方法
7.アトピー性脊髄炎の診断の難しさ
8.アトピー性脊髄炎の治療
9.アトピー性脊髄炎の経過、予後

 

1.アトピー性脊髄炎とは

アトピー性脊髄炎は、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎といったアレルギー性疾患に伴うことがある稀な脊髄炎です。1997年に日本人医師である吉良によって最初に報告されています。本症は、比較的若い男性に多いとされ、男女比は1:0.76、平均発症年齢は34±13歳と報告されています。本症の特徴としては、アレルギー性疾患の先行発症、四肢遠位部の異常感覚が挙げられます。異常感覚は「じんじん感」と表現されることが多く、主な初発症状となります。その他、筋力低下、運動障害、排尿排便障害を認めることもあります。先行するアレルギー疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順で多いとされています。臨床症状は上位頚髄病変によるものが高率に見られます。

検査所見では、上位頚髄のMRIにて脊髄背側に限局した病変を認めることが多く、血液検査ではIgE抗体の増加、ダニ特異的IgE抗体の陽性は高率に見られます。
治療法としては、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン静注療法、血漿交換療法があります。侵襲の大きさや副作用を考慮すると容易に実施することは難しいものの、血漿交換が最も有効であると考えられています。また再発を予防するためには、基礎にあるアレルギー疾患を十分コントロールすることが大切であると考えられています。

 

2.アトピー性脊髄炎の原因

本症の原因や発症メカニズムはまだわかっていません。アレルギー性疾患を基礎に発症していることから、アレルギーと何らかの関係があると考えられてきました。近年の研究で、アレルギーによる炎症が、ET-1/EDNRB※1経路を介して脊髄グリア細胞を活性化し、神経因性疼痛を引き起こしていることが証明されており、本症の発症メカニズムの解明に向け前進しています。
また本症の一部の患者は、抗Plexin D1抗体という自己抗体を持っていることがわかっています。
遺伝学的な検討では、HLA-DPB1*02:01 アリルの頻度が健常者より有意に高いことがわかっていますが、本症は両親から遺伝することはないと考えられています。

※1 ET-1とは、血管内皮活性化因子エンドセリン-1のことで内皮細胞から産生され、強い血管収縮作用を持つポリペプチドのことをいいます。EDNRBとは、エンドセリン受容体タイプBのことをいいます。

 

3.アトピー性脊髄炎の疫学的整理

本邦におけるアトピー性脊髄炎の患者数は、2007年の全国調査によると推定1,000人とされています。アトピー性皮膚炎の患者数は年々増加傾向にあるため、本症の患者数も増加している可能性があります。
発症の男女比は、1:0.76でやや男性に多く見られます。平均発症年齢は、34±13歳と報告されています。
先行するアレルギー疾患に関しては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順に多かったと報告されています。

 

4.アトピー性脊髄炎の症状

本症は、アレルギー性疾患の増悪後に発症または再燃する傾向があります。先行するアレルギー疾患としては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などが挙げられます。
発症様式は、全国調査によると急性、亜急性、慢性のものがそれぞれ3割ずつ見られるとされています。
初発症状は、四肢遠位の異常感覚(じんじん感)が最も多く、その他に知覚低下、軽い運動障害で始まる症例も見られます。深部腱反射は多くで亢進を認めます。
また経過中に神経障害性の痛みやアロディニア※2によって悩まされることも少なくありません。病状が進行すると、歩きにくさなどの運動障害や排尿・排便障害を認めることもあります。
約7割の症例は、緩やかに進行し長い経過を辿ることが多いとされています。
検査所見では、多くの症例で高IgE血症を認め、またダニ特異的IgEの陽性を高率に認めます。
髄液特殊検査ではIL-9、CCL11※3の増加を認めることが多いと報告されています。脊髄MRIでは約60%に病変を認め、その3/4は頚髄であったと報告されています。

※2 アロディニアは異痛症ともよばれ、通常は痛みを起こすことのない刺激(例えば、風が当たる、温度・気圧の変化、軽い接触など)によって痛みが引き起こされる状態をいいます。

※3 CCL11は、好酸球、Th2リンパ球などの免疫細胞を動員することにより、アレルギー性および非アレルギー性炎症反応の両方において中心的な役割を果たす好酸球特異的化学誘引物質です。

 

5.アトピー性脊髄炎が重症化しやすい場合

気管支喘息を基礎疾患として持つ場合の方が、症状が重くなることが多いと考えられています。しかし、その理由についてはわかっていません。
 

6.アトピー性脊髄炎の診断方法

本症を診断するにあたっては、以下のことを証明していく必要があるとされています。

  1. 脊髄炎であること 
  2. 脊髄炎を起こしうる他の基礎疾患がないこと
  3. アレルギー素因があること

<診断基準> 難病情報センターHPより引用

Definite、Probableを対象とする。

絶対基準:以下を全て満たす。

(1) 原因不明の脊髄炎(下記の除外すべき疾患が除外されていること。)
(2) 抗原特異的IgE陽性
(3) BarkhofのMSの脳MRI基準を満たさない。

 病理基準:

 脊髄生検組織で、血管周囲リンパ球浸潤や好酸球の浸潤を認め、肉芽腫を伴う事もある。

 相対基準:

 (1) 現在又は過去のアトピー性疾患歴
 (2) 高IgE血症(>240U/mL)
 (3) 髄液中IL9(>14.0pg/mL)又はCCL11(>2.2pg/mL)
 (4) オリゴクローナルバンドなし

除外すべき疾患:寄生虫性脊髄炎、多発性硬化症、膠原病・血管炎、HTLV-1関連脊髄症、サルコイドーシス、視神経脊髄炎、神経梅毒、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形・動静脈瘻

 

<診断のカテゴリー>

Definite:

A:絶対基準+病理基準
B:絶対基準+相対基準(1~3)のうち2個以上+相対基準(4)

Probable:

A:絶対基準+相対基準(1~3)のうち1個+相対基準(4)
B:絶対基準+相対基準(1~3)のうち2個以上


 

7.アトピー性脊髄炎の診断の難しさ

本症は指定難病となっていますが、まだ十分に認知されている疾患ではないことから診断に時間を要することがあります。

 

8.アトピー性脊髄炎の治療

治療法としては、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン静注療法、血漿交換療法があります。全国調査の結果によると、約60%の症例に対しステロイドによる治療が行われ、有効性を約80%に認めたと報告されています。血漿交換療法の有効性も高いため、ステロイド治療が無効であった場合には血漿交換療法は有効な選択肢であると考えられています。また再発を予防するためには、基礎にあるアレルギー性疾患を十分コントロールすることが求められます。

 

9.アトピー性脊髄炎の経過、予後

本症は、神経症状が重症化し日常生活に大きな支障が出ることは比較的稀であると考えられています。しかし、長期間続く神経障害性疼痛やアロディニアに悩まされ、生活の質が低下することは少なくありません。また、本症の認知度が低いことから診断までに時間を要し、治療開始が遅れることが危惧されます。
また、本症はアレルギー性疾患を持つ方に発症しやすいことがわかっていますので、基礎にあるアレルギー性疾患の治療を適切に受けることが予防につながると考えられます。

 

上野 ゆかり 整形外科医  2003年国立大学医学部卒業。整形外科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み、小児から高齢者まで幅広い年齢層に対応。家族の仕事により移住したフィリピンにて、邦人に対する医療アドバイス、健康診断フォローアップ事業を開始。現在はドイツ(フランクフルト )にて医療・健康アドバイザーとして活動する傍ら、医療相談、オンライン診療などで臨床活動を継続中

 

<リファレンス>
難病情報センター アトピー性脊髄炎(指定難病116)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4723
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4724
https://www.nanbyou.or.jp/entry/627

アレルギー学からみた内科疾患: 病態解明から新規治療の開発へ
1)‌アレルギー学からみた脳神経疾患の新展開
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/9/106_1812/_pdf/-char/ja

アトピー性脊髄炎患者会 StepS
http://www.am-steps.org/index.html

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