バージャー病|clila疾患情報

【目次】

1.バージャー病とは
2.バージャー病の原因
3.バージャー病の疫学
4.バージャー病の症状
5.バージャー病の診断
6.バージャー病の治療
7.バージャー病の予後
8.まとめ

 

1.バージャー病とは

若年男性の喫煙者に好発する、四肢の慢性閉塞性動脈疾患です。報告者Leo Buergerにちなんでバージャー病(ドイツ語読みはビュルガー病)、あるいは閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans: TAO)と称されます。四肢末梢の中型動脈で分節的に血栓閉塞性の血管全層炎を生じ、虚血症状および足趾や手指の潰瘍・壊疽を引き起こします。しばしば表在静脈にも血栓性静脈炎を生じます。喫煙の継続は病勢を悪化させます。
根本的な原因はわかっていませんが、患者のうち9割は男性で、その大半が30~40代。近年では女性患者にも増加傾向が見られます。

 

2.バージャー病の原因

原因はいまだ不明です。特定の遺伝的素因が関連するとの説や、歯周病菌が原因でありうるとの研究結果もあります。本疾患では血管攣縮や血管内皮細胞の障害、血液の過凝固状態がみられます。喫煙はこれらを惹起し発症の誘因になると考えられています。

 

3.バージャー病の疫学

患者は地中海沿岸、南アジア、東アジアに多く、北米では1980年代までに激減しました。
日本でも1970年後半から発生は減少し、近年の推計患者数は約7,000人で、有病者は高齢化しています。好発年齢は20から40歳代で、圧倒的に男性に多くみられます。また患者の9割以上に明らかな喫煙歴があり、大量喫煙者が多いのも特徴です。
受動喫煙を含めるとほとんどの患者に喫煙歴があるとされます。女性患者も増加しており、喫煙の影響と推定されています。

 

4.バージャー病の症状

四肢末梢部で動脈閉塞による慢性虚血の症状が生じます。
軽度のうちは手足の冷感やしびれ感、寒冷暴露時のレイノー現象、皮膚の温度低下や色調変化などを呈し、重度になると間欠性跛行や安静時疼痛が出現します。また肢端には萎縮、体毛の減少、皮膚の硬化、爪の発育不全や胼胝を伴います。手指や足趾に、些細な外傷が契機で急速に難治性の虚血性潰瘍を形成しやすく、進行すると壊死に至ることもあります(特発性脱疽)。
閉塞性動脈硬化症と同様の症状であるため、鑑別診断に注意を要します。
病変は下腿以遠と前腕より末梢に好発し、上肢よりも下肢に多くみられます。表在静脈炎は再発性かつ移動性に生じ(遊走性/逍遥性静脈炎)、四肢以外の病変はまれです。
表在静脈の血栓性静脈炎では、皮下に索状で有痛性の発赤・硬結を生じ、しばしば皮膚に色素沈着を残します。

 

5.バージャー病の診断

四肢の動脈が閉塞すると、虚血症状として冷感やしびれ感、間欠性跛行、安静時疼痛、潰瘍・壊死などの症状が出現します。閉塞した動脈の拍動は触れなくなります。

ドプラー血流計を使った足関節の血圧測定と足関節/上肢血圧比(Ankle Brachial Pressure Index、ABIと略)は虚血の程度を知るのに役立ちます。症状やこのような所見からおおよその診断は可能ですが、確定診断、閉塞部位や閉塞パターンの確認、閉塞性動脈硬化症との鑑別には血管の画像診断が必要な検査です。

動脈の閉塞部位はMR 血管造影やCT血管造影によって確認できます。血行再建術を考慮する場合には、血管造影検査によって詳細な評価が必要です。病変よりも中枢側の動脈壁は平滑で、動脈硬化性の所見を認めません。血液検査では特徴的な所見がありません。

*バージャー病の診断基準

  1. 50歳未満の発症
  2. 喫煙歴を有する
  3. 膝窩動脈以下の閉塞がある
  4. 動脈閉塞がある、または遊走性静脈炎の既往がある
  5. 高血圧症、高脂血症、糖尿病を合併しない

以上の5項目を満たし、膠原病の検査所見が陰性の場合、バージャー病と診断できるが、女性例、非喫煙例では鑑別診断を厳密に行う。

 

*鑑別診断

  1. 閉塞性動脈硬化症
  2. 外傷性動脈血栓症
  3. 膝窩動脈捕捉症候群
  4. 膝窩動脈外膜嚢腫
  5. 全身性エリテマトーデス
  6. 強皮症
  7. 血管ベーチェット病
  8. 胸郭出口症候群
  9. 心房細動

*重症度分類

バージャー病の重症度分類

3度以上を医療費助成の対象とする。

1度

患肢皮膚温の低下、しびれ、冷感、皮膚色調変化(蒼白、虚血性紅潮など)を呈する患者であるが、禁煙も含む日常のケア、または薬物療法などで社会生活・日常生活に支障のないもの。

2度

上記の症状と同時に間欠性跛行(主として足底筋群、足部、下腿筋)を有する患者で、薬物療法などにより、社会生活・日常生活上の障害が許容範囲内にあるもの。

3度

指趾の色調変化(蒼白、チアノーゼ)と限局性の小潰瘍や壊死または3度以上の間欠性跛行を伴う患者。通常の保存的療法のみでは、社会生活に許容範囲を超える支障があり、外科療法の相対的適応となる。

4度

指趾の潰瘍形成により疼痛(安静時疼痛)が強く、社会生活・日常生活に著しく支障を来す。薬物療法は相対的適応となる。したがって入院加療を要することもある。

5度

激しい安静時疼痛とともに、壊死、潰瘍が増悪し、入院加療にて強力な内科的、外科的治療を必要とするもの。(入院加療:点滴、鎮痛、包帯交換、外科的処置など)

 

6.バージャー病の治療

治療の基本は禁煙です。この病気の発症や増悪と喫煙は密接に関係しており、 喫煙を継続してはどんな治療も無効です。さらに手足の清潔を保ち、保護を行い、寒いところでは保温に気をつける、靴擦れを予防したり傷をつけないように注意することが大切です。

症状にもよりますが、まず血液の循環を改善して血栓の進展を予防するために、 抗血小板薬や血流改善薬、抗凝固薬などの薬剤を投与します。虚血症状に対して最も効果のある治療は血行再建手術(バイパス手術など)で、特に重症の虚血症状(安静時疼痛、潰瘍や壊死)がある患者さんに行われます。しかし、この病気は動脈硬化による血管閉塞と異なって末梢ほど病変が重度であるために、血行再建手術で十分な効果が得られないことも、しばしばあります。このような場合には交感神経節ブロックや交感神経節切除術などで皮膚血流を増加させる治療や高気圧酸素療法で患部に高濃度の酸素を供給する治療も行われます。

遺伝子治療、細胞移植療法などで血管を新生させる新しい治療法も行われ始めています。それでも壊死が進行して各種の治療も無効な場合には、指趾や四肢の切断となることもあります。

 

7.バージャー病の予後

閉塞性動脈硬化症と異なり、心、脳、大血管病変を合併しないため生命予後は良好です。しかし、指趾切断や肢の大切断を要することがあり、就労年代の患者のQOL (quality of life)を著しく脅かすことも少なくありません。喫煙の継続は切断の危険を増大させます。

最近では禁煙を厳守して様々な治療を行えば、 四肢の切断に至る例は少なくなってきています。早期診断と適切な治療によって病気の重症化を防ぐことができます。再発や悪化の見られない患者さんでは、発症前の仕事や日常生活に復帰されている方も少なくありません。

 

8.まとめ

何よりも禁煙することが予防や治療中・治療後の状態を良好にする上での重要です。喫煙を続けると、症状が進行し、手足を切断しなければいけないほど症状が重篤になる可能性が高まります。また早期に発見して、治療を開始することも重症化を防ぐ上では必要です。バージャー病は原因が不明で根治することが難しい病気のため、病気の進行が進まないように気を配ることが大きな意味を持ちます。手足を冷えやケガから守り、健康的な食生活や適度な運動を心がける必要があります。

 

永井 弥生   皮膚科医 皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。


 

<リファレンス>

バージャー病 難病情報センター(指定難病47)

https://www.nanbyou.or.jp/entry/170

バージャー病 難治性血管炎の医療水準・患者QOLに資する研究

https://www.vas-mhlw.org/html/kaisetsu-iryo/4-1.html

血管炎症候群の診療ガイドライン 2017年改訂版

https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_isobe_h.pdf

 

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