人工妊娠中絶手術を受ける際の病院の選び方

日本では母体保護法によって、身体的または経済的理由により妊娠の継続・出産が母体の健康を著しく害する場合や暴行などによる望まない妊娠の場合、指定医師による人工妊娠中絶手術が女性の権利として認められています。

しかし、人工妊娠中絶が必要になっても、妊娠中絶の流れが分からない、病院はどのように選べばよいのか、などと中絶について悩む女性は少なくありません。

そこで、今回は中絶手術の種類やそれぞれの病院の特色など、例を挙げながら中絶手術を受ける際の病院選びに役立つポイントをみていきましょう。

中絶とは

胎児が子宮の外では生存できない時期(通常妊娠22週未満)に、人工的に胎児とその付属物(胎盤や羊水など)を子宮から取り出す手術を「人工妊娠中絶」といい、略して中絶や堕胎、人工流産とも呼びます。

中絶手術は、妊娠初期の段階(妊娠6〜11週)であれば短時間の処置となり、日帰り手術も可能です。
妊娠中期に及ぶ場合(妊娠12〜21週)は、入院が必要になります。

子宮の入り口を広げる処置を行った後に人工的に陣痛を誘発し、通常の出産と同じように胎児を娩出します。

中絶手術は母体保護法に沿って行われるため、母体保護法指定医のもとでなければ手術を受けることができません。
また、子宮内で胎児が発育できず亡くなった場合は、中絶ではなく自然流産や死産と呼ばれます。

※厚労省による母体保護法
参照元:母体保護法(◆昭和23年07月13日法律第156号)|厚生労働省

中絶の理由

母体保護法で定められた中絶の条件は、以下のように定められています。

  • 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れのあるもの
  • 暴行もしくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

中絶が選択される理由としては、経済的な理由による身体への負担や望まない妊娠など、やむを得ない理由が多いといわれています。
中絶は身体だけでなく、精神的にも大きな負担の伴う手術であるため、判断に迷う女性は少なくありません。

全国では、毎年10万件以上の中絶手術が行われているのが現状です。
しかし、近年は総件数が減少傾向にあります。

※厚労省のデータより、令和2年1~12月の累計人工妊娠中絶数は、前年同期間よりも-7.3%と減少傾向にあります。
参照元:令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について|厚生労働省

中絶手術の病院を受診するタイミング

母体保護法では、中絶手術が可能な期間は妊娠21週6日までです。
また、妊娠12週未満とそれ以降で、それぞれ手術方法や入院期間が異なります。

詳しい中絶方法の種類については後ほど解説します。

妊娠12週以降では、時間が経つほどに中絶手術が身体や精神に与える負担やリスクが増加するため、注意が必要です。

心苦しい選択に迷う方も多いでしょう。
しかし、中絶が必要と判断された場合には、身体のためにもなるべく負担の少ない時期に手術を受けることをお勧めします。

中絶手術を受ける際の検査

妊娠検査

一般的に、中絶の術前検査は超音波検査、尿検査、血液検査の3段階で行います。

①超音波検査(エコー検査)

超音波で正常な妊娠であることを確認し、妊娠週数の推定を行う検査です。
※子宮外妊娠などの異常妊娠では処置内容が異なるため、事前にしっかり確認することが大切です。

②尿妊娠検査

超音波検査によって子宮内の妊娠が確認できない場合、尿による妊娠検査を行います。
妊娠すると、絨毛上皮からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが著しく分泌されるため、このホルモンを尿検査で確認します。

超音波では妊娠が確認できないものの、尿検査で妊娠反応がある時は、「妊娠が成立して間もない」、「流産してしまった」あるいは「子宮外妊娠」と判断されるでしょう。

③血液検査

手術を受けるにあたって、健康状態を調べるために血液検査を行います。

具体的には、貧血などの血液一般検査に加え、肝機能、腎機能、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒、クラミジアなど)、血液型、不規則抗体などの項目があります。

中絶手術の種類

中絶の手術方法は、妊娠12週未満とそれ以降で異なるため注意が必要です。

12週未満の場合は、掻爬(そうは)法または吸引法の2種類に分かれます。
12週以降でどちらの方法も困難な場合は、分娩法が選択されます。

掻爬(そうは)法

医療器具を使用し、胎児を含む子宮内容物を掻き出す手術で、妊娠初期にのみ可能です。
静脈麻酔を投与のうえで行われ、あらかじめ子宮口を開く処置をする場合としない場合があります。

昔から行われている基本的な方法ではあるものの、医師の技術や経験が重要です。
また、子宮内膜が傷ついたり、子宮筋腫の合併がある場合はきちんと搔爬できないケースも想定されます。

WHOは、搔爬法は時代遅れの外科的中絶法であり、吸引法や薬剤による中絶に変更するよう勧告しているものの、日本ではまだ多くの施設で実施されているのが現状です。

吸引法

WHOが推奨している方法の一つが吸引法です。子宮頸管内に管を入れ、子宮内の胎児や胎盤などを吸引する手術です。

掻き出すのではなく、吸引器で吸い込むため子宮にも比較的優しい方法とされています。
妊娠初期~12週目まで選択可能です。

メリットが多い方法であるものの、高価な吸引器を必要とします。
しかし、最近では吸引法を行える病院も増えてきています。

分娩法

妊娠中期の13、14週~21週に及ぶと選択される方法です。

まず子宮頸管を人工的に広げる処置を手術前日に行います。
手術日に子宮頸管が十分に拡大していることを確認後、子宮収縮剤(陣痛促進剤)を用い、人工的に陣痛を誘発します。
そして、出産と同様に胎児と胎盤を娩出します。

母体に大きな負担がかかるため、入院が必要となる手術です。
施設によっては硬膜外麻酔を行い、痛みを緩和しながら手術を受けることができます。

妊娠12、13週前後に選択される手術方法は、病院の方針によって多少異なることがあります。
担当医師にそれぞれの方法について、メリット、デメリットをしっかり聞くことが大切です。

妊娠12週以降の中期中絶の場合、術後7日以内に市区町村役所で死産届を提出しなければなりません。
死産届の提出後、埋葬許可書が発行されることになります。

中絶手術のできる病院の種類

中絶を希望する場合の病院の選択肢は、母体保護法指定医を標榜している病院・クリニックのみに限られます。

これは母体保護法によって、人工中絶手術を行えるのは母体保護法指定医として都道府県医師会に登録されている産婦人科医のみであると決められているためです。
たとえ規模が大きい病院であったとしても、中絶手術が可能とは限らないため、事前に確認が必要です。

中絶の病院選びの際に重視する点

病院

中絶の病院選びでは、手術方法・麻酔方法、検査・手術などにかかる時間と費用、医師との相性、病院の雰囲気、アフターケアの有無などのポイントに着目して選ぶことを推奨します。

①手術方法・麻酔方法

妊娠初期の場合、同じ週数でも病院によって選ばれる中絶や麻酔の方法が異なります。
中絶方法は、基本的に掻爬法と吸引法のどちらかとなります。希望に沿った中絶方法を実施している病院を選びましょう。

麻酔方法に関しては、静脈麻酔と局所麻酔の2種類です。

静脈麻酔は点滴から薬を注入し、眠った状態で中絶手術を行えます。

局所麻酔では手術操作部位のみ局所注射で麻酔し、痛みを和らげます。
痛みは感じないものの、意識があるため、手術中の器具の音が聞こえたり、恐怖心を感じたりする可能性があります。

中絶手術の際は、静脈麻酔を使用する病院の方が多いようです。

②検査・手術などにかかる時間と費用

妊娠発覚時から中絶を希望する場合、中絶手術に加えて妊娠検査の費用もかかります。
事前の説明をよく聞き、どの程度費用がかかるのか把握することが大切です。

中絶手術の費用相場をみていきましょう。

  • 妊娠期間が8週目まで:10~20万円
  • 妊娠期間が10週目まで:10~20万円
  • 妊娠期間が12週目まで:10~20万円
  • 妊娠期間が12週目以降:30~50万円

上記の金額はあくまでも費用相場で、病院により費用は異なるため、ひとつの病院だけではなく複数の病院で比較することが重要です。
費用を支払うタイミングや対応する支払い方法についても確認しておきましょう。

中絶手術は基本的には保険適用にならないため、検査費用を含め全額自己負担です。
健康保険が適用される例は次のような場合に限られます。

  • 治療として中絶手術が必要な場合(妊娠の継続が母体の命に関わると医師が判断)
  • 母体の中で胎児が死亡した場合(稽留流産)
  • 健康保険に加入している方で、妊娠4ヶ月(85日)以降に中絶手術を受ける場合、「出産育児一時金」の支給対象になる(詳細は病院に要確認)

また、病院によっては患者さんの負担を考慮し、利便性や快適性を重視しているところもあります。
遠方から来院する、あまり仕事を休めない場合などは、事前に医師と入念に相談しましょう。

③医師や看護師との相性

中絶手術は、精神的負担が大きくデリケートな問題のため、医師や看護師との相性は良い方がいいでしょう。
ごくわずかではあるものの、実際に中絶希望の患者に対して、心ないことを言われるようなケースも存在しています。

中絶手術は精神的ストレスがかかるため、医師や看護師との相性、リラックスできる環境なのか、プライバシーは守られるのか、なども考慮して病院を選びましょう。

掻爬法を行う病院では、ほとんどがブラインド作業となるため、医師の技術や経験も重要になるといわれています。
治療実績をホームページなどで確認しておくと安心につながるでしょう。

④アフターケアの有無

中絶の後遺症率は低いですが、医療器具によって子宮内膜に傷が付いてしまうことにより、合併症が起きるケースがあります。

そのため手術前に、起こりうる手術の合併症についてしっかり聞き、合併症への対応方法も確認した上で、手術後に十分な経過観察をしてくれる病院を選びましょう。

術後は、精神的ストレスでPTSDなどの精神疾患を患ってしまう方も少なくありません。
病院によっては、そうした患者さんに対してカウンセリングを行ってくれるところもあります。

⑤病院の評判

スタッフの人柄や病院の雰囲気を知るためには、病院の口コミや評判が参考になります。

身近な人に相談できるのが一番ではあるものの、相談しにくい方もいるでしょう。
そうした方は、GoogleやSNSなどネット上の声からも判断できることがあります。

また、電話で問い合わせをした際の応対でも、スタッフや院内の雰囲気がわかることがあるため、参考にしてみましょう。

中絶手術を受ける病院選び・チェックリスト

チェックリスト

中絶手術を受ける病院を選ぶときには、以下のようなポイントを参考にしてみてください。

  • 中絶手術の方法・麻酔が可能かどうか・麻酔方法
  • 検査・手術などにかかる時間と費用
  • 医師との相性
  • アフターケアやカウンセリングの有無
  • 病院の評判

それぞれのポイントの確認は、気になる病院のホームページを見る、直接電話で問い合わせる、口コミを見ることでチェックできます。

中絶手術や麻酔の方法、検査や手術の所要時間と費用、アフターケアなどについては、ほとんどの病院がホームページに掲載しています。
医師との相性や病院の雰囲気は、実際にその病院にかかった方の口コミを参考にするとよいでしょう。

まとめ

中絶は母体保護法によって手術可能な病院が限られているため、まずは母体保護法指定医を標榜している産婦人科医院から探すとよいでしょう。

安心して中絶手術を受けるには、さまざまな医療情報を調べることが大切です。
しかし他人にはなかなか打ち明けられない問題のため、ひとりで抱え込んでしまう方も多いでしょう。

一般的に中絶手術は、精神的に大きな負担となり、手術に対して後ろ向きになってしまうことも少なくありません。
しかし、体への負担は時間が経つごとに大きくなるため、悩める期間は限られています。

まずはひとりで悩まず、身近な産婦人科医院へ相談してください。

もし相談した病院で中絶手術ができなくても、カウンセリングが受けられたり、今後の流れの説明や手術が可能な病院への紹介状がもらえる可能性もあります。

以上お読みいただきまして、少しでも中絶手術の病院選びの際にお役に立てましたら幸いです。

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