先天性魚鱗癬|clila疾患情報

【目次】

1.先天性魚鱗癬とは?
2.先天性魚鱗癬の原因
3.先天性魚鱗癬の症状
4.先天性魚鱗癬の診断
5.先天性魚鱗癬の治療法
6.日常生活の注意

 

1.先天性魚鱗癬とは?

先天性魚鱗癬は、先天的異常により皮膚のバリア機能が障害され、胎児の時から皮膚の表面の角層が非常に厚くなる病気です。出生時に発症することも、乳児期や小児期に発症することもあります。全身の皮膚が乾燥して、皮膚がうろこ状になったりフケが剥がれ落ちたりする症状がみられます。症状や遺伝形式は病型によって異なります。

尋常性魚鱗癬が最も頻度の高いものですが、軽症例が多いため、乾燥肌と決めつけてしまい正しく診断できていないこともあります。手掌、足底の皮膚紋理が増強することや、アトピー性皮膚炎を合併しやすいのも特徴です。

先天性魚鱗癬は、原因遺伝子や症状、罹患部位(皮膚のみか、全身症状を伴うか)などによってさまざまな種類のものがあります。尋常性魚鱗癬のほか、伴性遺伝性魚鱗癬、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、葉状魚鱗癬、道化師様魚鱗癬などがありますが、いずれもまれです。遺伝子の変異は通常は親から子へと伝わりますが、自然発生的に生じることもあります。20〜30万人に1人の発症頻度とされます。

 

2.先天性魚鱗癬の原因

この病気の原因は、皮膚最表面の表皮を作っている細胞(表皮細胞)の分化異常、脂質の産生、代謝、輸送の異常です。皮膚を守るためのバリア機能が障害されることで、皮膚表面の角層が著明に厚くなります。病因となる異常は病型により異なり、病因遺伝子としては多くのものが判明しています。

最も頻度が高い魚鱗癬である尋常性魚鱗癬は、常染色体優性遺伝でフィラグリン遺伝子変異により発症します。2番目に多いX連鎖性劣性魚鱗癬はステロイドスルファターゼ遺伝子の異常により発症します。病型によって、常染色体劣性、常染色体優性、X連鎖性劣性、X連鎖性優性などの遺伝形式をとります。病型により遺伝形式は異なりますが、常染色体劣性遺伝の病型では、血族結婚で発症率が高くなります。

 

3.先天性魚鱗癬の症状

先天性魚鱗癬では、皮膚の最も重要な働きは外界から私たちの体を守るバリア機能が弱く、皮膚表面からの水分の蒸 発量が多く、皮膚乾燥の原因となります。また、魚鱗癬患者の皮膚では、その弱いバリアを補うかの様に、皮膚表面が厚くなります。

(1)尋常性魚鱗癬

最も多くみられる病型です。常染色体優性遺伝で皮膚の乾燥と鱗屑(カサカサとした付着物)が見られます。
出生時は無症状で、乳幼児期に発症して10歳ころまで進行しますが、青年期以降は軽快することが多いとされます。主に四肢伸側や体感に症状がみられ、皮膚が乾燥し細かいカサカサとした鱗屑を付します。自覚症状はないかまれにかゆみを伴います。皮膚が乾燥しやすい冬に増悪します。

(2)伴性遺伝性魚鱗癬

生後まもなくより発症し、加齢による軽快はみられません。X染色体劣性遺伝です。皮膚症状は尋常性魚鱗癬よりも高度で、うろこ状の鱗屑が大きく褐色調を呈します。半透明の薄い被膜で覆われている状態で出生することもあります(コロジオン児)。四肢関節屈側に症状が強く、角膜混濁を合併しやすいのも特徴です。尋常性魚鱗癬と同じく冬季に悪化します。

(3)水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症

コロジオン児として出生することがあります。常染色体優性遺伝です。乳幼児期はびまん性の赤みや水疱形成を繰り返しますが、次第に鱗屑が熱くなり学童期には高度に皮膚が角化した状態となります。ほぼ全身が侵され暗紅色調の紅皮症(全身に発赤を生じる状態)を呈します。生命予後は良好です。
Siemens型水疱性魚鱗癬という病型もありますが、この疾患の軽症型と位置づけられ、紅皮症までにはいたりません。

(4)非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症

常染色体劣勢遺伝で複数の遺伝子が発症に関わっていると推測されています。コロジオン児で出生することが多く、2〜3日でコロジオン膜が剥奪し全身のびまん性の赤みと鱗屑を呈します。全身の皮膚が侵され、眼瞼外反をきたすことともあります。10歳ころまで進行性で、以後は停止または軽快します。軽症から重症型まで多彩です。

(5)葉状魚鱗癬

半数はトランスグルタミナーゼの欠損により発症します。著しく粗大、暗褐色、葉状の大きな鱗屑がみられます。

(6)道化師様魚鱗癬

出生時から皮膚が極めて厚い角質で覆われ、ひび割れており、眼瞼外反や口唇突出、開口が著しく生後2週間以内の死亡が多い疾患です。ABCA12遺伝子の変異により発症します。常染色体劣性遺伝、出生前診断の適応にもなる重症型です。

(7)魚鱗癬症候群

魚鱗癬の皮膚症状に加えて、一定の他臓器の先天異常を伴う遺伝性疾患を総称したものです。非常にまれです。

 

4.先天性魚鱗癬の診断

臨床所見、病理所見、家族歴、および遺伝子解析により診断します。先天性魚鱗癬の場合は、乳児や幼児の皮膚に特徴的なうろこ状、さめ肌状の異常が見られた場合にそれを疑います。皮膚生検や血液検査で遺伝子を調べることなどで診断を確定します。

魚鱗癬症候群の場合は、皮膚以外の臓器に症状がみられることも多いため、小児科、眼科、耳鼻科でそれぞれの検査が必要なこともあります。

 

5.先天性魚鱗癬の治療法

現在のところ、根治療法はありません。皮膚症状に対しては、保湿剤やワセリン等の外用による対症療法を行います。重症例では、新生児期は、輸液・呼吸管理、正常体温の維持、皮膚の感染のコントロール等の保存的治療を行います。新生児期からのレチノイド全身投与療を行うこともあります。多くの場合、生涯にわたっての治療が必要です。

 

6.日常生活の注意

症状の悪化を予防するためには、皮膚の保湿と室内環境の管理が有用です。皮脂が減るので長時間の入浴を避け、皮膚をこすりすぎないよう気をつけ、さらにせっけんの使用を必要最小限にします。また、入浴後には保湿剤を塗布し、皮膚の乾燥を防ぐ。室内では適切な温度と湿度を保つためにエアコンや加湿器を使います。夏季は体温が上昇しやすいので特に注意が必要です。

また、発汗障害があるため高体温になりやすく、特に夏季には体温の異常な上昇に注意が必要です。室温、衣服のこまめな調節が重要です。

 

永井 弥生   皮膚科医  皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

<リファレンス>

先天性魚鱗癬 難病情報センター 指定難病169
https://www.nanbyou.or.jp/entry/139  

 

皮膚科Q&A 魚鱗癬  日本皮膚科学会

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa33/q01.html

 

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