リモートワークと共に増加⁈便秘と痔について解明していきます!【医師にインタビュー】

【目次】
便秘や痔とは、どんな症状を指す?
便秘と痔。その関係性は?原因は?
腸の機能を低下させてしまう6つの要因
治療法は?
脳と腸は関係している!
まとめ

 

「個人差もあるから」「恥ずかしいから」とつい放置してしまいがちな便秘・痔。でも、身体の異変に気が付き、原因を知ることで、自身での対応策や治療を開始することができます。考えるよりもずっと生活習慣の影響を受ける便秘と痔。

今日は、そんな体内の環境を現す「便秘と痔」について、種類や原因、治療法に加え、身体の他箇所との関連もお伺いしました。

 

消火器内科医 富田 知英 (とみた ちえ)                                             2007年岩手医科大学卒業。順天堂大学病院で研修後、同大学消化器内科に入局。東京都内病院に勤務、消化器内科専門医を取得。 2018年に渡米、2020年ハーバード大学公衆衛生大学院でPPCR(Principles and Practice of Clinical Research)を修了。

 

便秘や痔とは、どんな症状を指す?

私達が使っている「便秘」という言葉は、実は正式な疾患名ではありません。便を十分な量かつ快適に出すことができない状態を示す言葉として、一般的に使われていますが、〝快適に出すことができない“というのは、主観に基づく部分が大きいので、客観的な判断が難しい面もあります。国際的な基準を用いると、

  • お薬等に頼らず自発的な排便が週3回未満
  • 4回に1回以上、排便時に苦痛やお腹の張り、残便感が伴う

上記のような状態の時は、自身の生活習慣などに気をつけ、症状が持続もしくは悪化するようであれば、医療機関を受診するようにしましょう。

一方、痔は肛門の病気の総称で以下の3種類に大別できます。

  1.  痔核
  2.  裂肛
  3.  痔ろう

では、1つずつ疾患を見ていきましょう。

1)痔核

痔の中で最も多い疾患で、一般的に「いぼ痔」と呼ばれているものです。この痔核は、いぼのような腫れができる箇所によって、名称・症状が異なります。歯状線を境に、肛門の内側にできるものを「内痔核」、外側にできるものを「外痔核」と呼びます。

痔核の原因は、排便時や重い物を頻繁に持った際のいきみ、また出産時のいきみ等で肛門に圧がかかり、肛門周囲の静脈がうっ血し腫れることで引き起こされます。内痔核は内側の腫れはであるため痛みを感じにくく、排便の際に鮮血が出ることで初めて気が付く方が殆どです。気が付かず放置しておくと、内側からイボ状の血管の腫れが外側に出てくることもあります。そこに炎症が起こるとさらに腫れ、痛みが生じることもあります。一方、外痔核は、患部である肛門の外側には知覚神経が通っているため、痛みを生じるケースが多いです。

※内痔核でも、上記の様にイボが外に出てきてしまい炎症で腫れた場合(内痔核嵌頓と言います)は痛みを生じ、座りづらくなることもあります。また切れ痔や痔瘻も痛みで座りづらくなることもありますので、外痔核のみとは言い切れない。

2) 裂肛

肛門の怪我と言われる裂肛。いわゆる切れ痔と言われているものです。発生頻度は痔核よりは多くないのですが、肛門周りの皮膚は、前述の通り知覚神経も通りとても敏感なため、痛みを感じやすくなります。出血は少量の場合はが殆どです。硬い便や頻回の下痢により、肛門付近の皮膚が切れることが要因です。

3)痔ろう

あまり聞きなれない病名ですが、3つの中で最も重い症状を引き起こします。

この痔ろうは、肛門の内側と外側の皮膚をつなぐトンネルが出来てしまい、そこから膿が出てしまう状態です。原因は下痢等により、肛門組織に大腸菌などの細菌が入り込んだ際に、免疫力の低下や周囲にある傷などがきっかけで化膿炎症を引き起こしてしてしまうことにあります。その炎症がひどくなると、肛門周囲に膿瘍という膿の塊が出来てしまい、この膿瘍が肛門の中側と外側を繋ぐトンネルを作り、そこから膿が流れ出したり、炎症による高熱が出てしまうこともあるのです。

 

便秘と痔。その関係性は?原因は?

前章では、便秘や痔の症状をご紹介してきました。では一体どのような要因で便秘・痔になるのでしょうか?ここでは、便秘と痔の関係性も含め、お話致します。

痔になる原因としてもっとも多いのは、便秘です。便が硬くなると、どうしても排便時にいきんでしまい、そのいきみで肛門部に負荷がかかり、静脈がうっ血して痔核になったり、肛門が切れて裂肛になったりしてしまいます。排便時の痛みが伴うと、排便を我慢してしまうため、より便が硬くなり、便秘が進行するという悪循環になってしまいます。便秘と痔は互いに悪影響を及ぼしてしまう関係にあるのです。そして便秘には、原因がはっきりしているものと、はっきりしていないものに分かれます。

原因がはっきりしているものには、次の3種類があります。

1)器質性便秘 

大腸癌や腸管癒着など、器質的な要因で腸が狭くなり通過障害が起こり、便が出辛くなって起こる便秘です。重篤で緊急を要する場合もあるため、もともと便秘や便通異常がない方に症状が現れ、悪化していくケース、または貧血や体重減少などその他の症状が伴う場合は、すぐに医療機関の受診を受診していただきたいです。

2) 症候性便秘

その他の疾患も原因になり得ますが、全身性の疾患が原因でお腹の動きが鈍くなることで起こる便秘です。代表的なものとして、糖尿病やパーキンソン病などが挙げられます。

3) 薬剤性便秘

日頃摂取している薬剤が原因で便秘を引き起こすものを指します。抗コリン作用を有するものや、頻繁に服用する下剤などが要因として考えられます。

一方、原因がはっきりとしていないものを、「機能性便秘」といいます。便秘の大半はこの機能性便秘で、自律神経のバランスの崩れや、生活習慣の乱れにより、腸の機能が低下していることで起こります。この機能性便秘は、日常の生活習慣の改善により、症状の緩和を望むことができます。

健康の要とも言われ、様々な機能を持つ腸の機能を低下させないことは、健全な身体作りに欠かせないことでもあるのです。

腸の機能を低下させてしまう6つの要因

便秘改善のカギを握る大腸の機能。それらを低下させてしまうのは主に下記6つの要因です。

1)加齢

若い女性が多く発症するイメージの便秘ですが、意外なことに高齢の方ほど便秘の割合は増えます。それは加齢により腹筋が弱くなり、便を出すための力が弱くなることが原因です。また腸の管の筋肉の層も30代から徐々に衰え始めるため、腸を動かす力も年齢と共に低下傾向となります。

2) 食生活

食事の量・質は便の形成と排出に影響します。若い女性に多い少食やダイエットによる食事量や水分摂取量の低下は、腸への刺激が減り、腸の動きの低下につながります。また、食事の内容も重要で、腸の正常な動きを助ける腸内善玉菌が餌として好む水溶性食物繊維の摂取が大切なポイントといえます。水溶性食物繊維は、野菜や豆類や果実・こんにゃく・海草に多く含まれ、善玉菌の栄養になります。一般的に広く食物繊維が豊富といわれている、ごぼうやきのこ類は、不溶性食物繊維です。この不溶性食物繊維も腸を動かす働きがあり、もちろん重要ですが、便秘傾向にある人が摂り過ぎると、腸内に留まる時間が長くなり、便が硬くなってしまうこともあるので、取りすぎには注意です。また、朝食をきちんと食べることも排便のリズム作りにとても大切なことで、起床後に胃の中に食事が入ることで、胃大腸反射が起こり、夜間に休眠していた腸が動き始めます。

3) 生活時間

サーカディアンリズムをご存知でしょうか?地球の自転に合わせた24時間を一つの周期とした生体リズムで、一般的に体内時計と呼ばれるものです。腸もこの体内時計により、日中は活動モード、夜間はお休みモードとなりますが、不規則な生活で体内時計が乱れてしまうと、腸が活動モードへとリセットされず、腸の動きが低下し、便秘の一因となります。起床時に日光を浴び、固形物を胃の中に入れることで体内時計を活動モードへとリセットし、寝ている間に腸に溜まった便が、朝に排出されるという排便のサイクルが理想的です。

また、忙しい方に多いのですが、朝に便意を感じても時間がないため、我慢してしまうことで、便意の感じ方が鈍くなり、便を出しにくくなってしまうケースもあります。腸に便が長く留まる時間が長い程、便は硬くなる傾向となるため、便意を感じた際はなるべく出すことが便秘の予防につながります。

4)運動習慣

運動習慣は、先ほどお話した様に、便を出す力となる腹筋力の向上に繋がります。また運動により空腹を感じることで、しっかり食事をとり、便の量をキープすることも大切です。

5)  ストレス

ストレスは、あらゆる病気の原因となり得ますが、特に腸はストレスの影響を受け易い臓器です。脳で感じたストレスが腸の機能を低下させ、便秘や下痢を引き起こし、その腸の不調が脳にさらにストレスを感じさせてしまうという負のループを作り出してしまうのです。

6)   黄体ホルモン

女性の場合は排卵後から生理直前までの期間分泌される黄体ホルモンが、腸の動きを低下させてしまうため、この時期に便秘傾向となる方が多いです。妊娠初期に便秘になりやすいのも、この時期には黄体ホルモンが多く分泌されるからです。

 

治療法は?

便秘や痔の根本的な解決は生活習慣を改善すること。これが一番大切なことですが、症状の改善や緩和の目的で、薬剤を使うこともあります。

便秘を改善する薬剤としては、便を柔らかくするもの、腸の動きを促すもの、そして腸内環境を整えるためのプロバイオティクスなどの内服薬があります。また、座薬や浣腸などで肛門に刺激を与えて便の排出を助けるタイプのものもあります。

ただし、これらの薬剤は、長期間使い続けると徐々に効果が弱まってくるので、あくまで補助的に使うことをお奨めします。もちろん症状が辛い時は薬を使いながらも、薬剤ばかりに頼ることがないようにしたいですね。

一方、痔の治療は、基本的には外科の領域です。塗り薬や座薬を使って改善するケースもありますが、痛みが強い場合や、血栓が出来てしまった場合は、注射や患部の切除やレーザー治療などが必要となるケースもあります。また、痔の改善や予防のためには、便秘の改善、同じ体勢で長時間座ることを避ける、冷えを改善し血流を促す、アルコールや刺激物の過剰な摂取を避けるなどが効果的です。

 

脳と腸は関係している!

前述のストレスの箇所で触れさせて頂きました、脳と腸の関係。驚かれた方もいらっしゃると思います。分かりやすい例でお伝えしますと、緊張するとお腹が緩くなったり、旅行先で便秘になりやすかったりという経験はありませんか?それは脳が緊張やストレスを感じとり、腸に影響を及ぼしているからなのです。また、腸ではセロトニンという精神を安定させるホルモンの約9割が分泌され、また脳内のホルモン作りに関わる物質なども作り出しており、これらは腸にいる腸内細菌の働きが関与していることも明らかとなってきました。つまり、腸内環境を整えることが、ストレスを感じにくくさせたり、精神の安定につながるとも言えるのです。腸脳相関と呼ばれている腸の脳の関係は、今後ますます明らかにされていくでしょう。

 

まとめ

コロナ禍で便秘や痔を患う方が増えているのは、リモートワークやステイホームの機会が増えることで生活が不規則となってしまったり、運動量の低下、同じ体勢でいる時間が増えるなど、便秘や痔の原因となり得る生活習慣の変化が原因とも考えられます。またストレスや不安を感じることも多くなってしまいますが、腸内環境を整えるための生活習慣を取り入れることは、便秘や痔の改善だけではなく、ストレスを和らげることにもつながるため、是非、コロナ禍の今だからこそ、健全な腸内環境作りに励み、心身の健康を保って欲しいと思います。

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