修正大血管転位症|clila疾患情報

【目次】
1. 修正大血管転位症の概要、病態生理
2. 修正大血管転位症の原因
3. 修正大血管転位症の疫学的整理
4. 修正大血管転位症の症状
5. 修正大血管転位症の診断
6. 修正大血管転位症の重症度分類
7. 修正大血管転位症の治療
8. 修正大血管転位症の予後

 

1.修正大血管転位症の概要、病理生理

通常であれば、血液は右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈と循環していきます。
修正大血管転位症では、左右の心室が入れ替わり、右心房→解剖学的左心室(右側)→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→解剖学的右心室(左側)→大動脈となります。血液の流れは、正常と同様に、静脈血は肺動脈へ、動脈血は大動脈へ流れます。心房・心室関係の不一致(心房心室不一致)がありますが、心室・大血管関係の不一致もあり、解剖学的左室から肺動脈が、解剖学的右室から大動脈が起始します。この組み合わせにより血行動態的には修正されることになるため、修正大血管転位症と呼びます。
血行動態的には修正されていますが、約90%に合併心疾患が存在するため、治療的介入が必要となることが多いです。心室中隔欠損(60~80%)や肺動脈狭窄/閉鎖(30~50%)の合併が多く、その程度や組み合わせにより種々の症状を呈する。房室ブロックや頻拍発作などの不整脈が多い。または、解剖学的右室は解剖学的左室と異なり、一生涯120mmHg以上の血圧を維持することは不可能であり、成人期に解剖学的右室の心不全が発症します。

 

2.修正大血管転位症の原因

正常の心臓の発生過程では、心臓は1本の筒状になっておりそれが右側に屈曲していきます。修正大血管転位症では、発生初期に原始心筒が正常とは反対の左側に屈曲するために発生すると考えられていますが、その原因の詳細は不明です。

 

3.修正大血管転位症の疫学的整理

発生頻度は、0.00004%と稀で、 先天性心疾患の0.4%を占めます。

 

4.修正大血管転位症の症状

合併する心疾患の種類と程度によって胎児期から高齢者までさまざまな症状を呈します。大きな心室中隔欠損を合併し、高肺血流状態になると乳児期から心不全が現れます。高度の肺動脈狭窄または肺動脈閉鎖を合併すると、チアノーゼが現れます。三尖弁閉鎖不全症の進行により、幼児期以降に心不全症状が出現する場合もあります。合併心疾患がない、または軽微であれば,当初は無症状であるため学童期まで発見されないこともあります。合併心疾患を認めない場合でも、体循環を右心室が担っているので、加齢とともに三尖弁閉鎖不全、右心不全の出現と進行を認めます。

 

5.修正大血管転位症の診断

・心電図

共通所見として、QRS電気軸の左軸偏位とV1のQS パターン、および左側胸部誘導でのq 波の消失があります。ただし、心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴うと、QRS電気軸は正常ないし右軸偏位、V1でqR パターンを示したりすることがあります。胎児期に完全房室ブロックを認めたり、生後に房室ブロックが進行したりします。左側副伝導路によるWPW症候群を数%に認めます。

・胸部X 線

左側の縦郭陰影は、左前方に上行大動脈が存在するため心陰影がなだらかで、第1、2、3弓の区別がつきにくくなります。肺動脈狭窄を合併すると,しばしば右胸心(または正中心)となります(20%)。

・心エコー

右側心室は解剖学的左室で、肉柱が細かく2 本の太い乳頭筋が自由壁から起始しています。右側の房室弁は2弁からなり、肺動脈と線維性連続をもちます。左側心室は解剖学的右室なので、肉柱が荒く3 弁からなる房室弁と漏斗部をもちます。また大動脈と肺動脈は並行して位置します。心室中隔欠損、肺動脈狭窄/閉鎖を合併することが多いです。

・心臓MRI

心エコーによる形態評価が困難な場合に、心臓MRI は左右心室の同定や合併症の評価に有用です。また、体側心室としての右室の機能評価にも有用です。また、大血管と心室の位置関係なども評価でき、術前評価としてもしばしば用いられます。

・心臓カテーテル検査・造影検査

本疾患の診断に心臓カテーテルが必要となることは少なく、肺血管抵抗や左右短絡,左室流出路狭窄の評価のために用いられることが多いです。右側心室造影では,解剖学的左室構造を認め、肺動脈は後上方より起始します。左側心室造影では、解剖学的右室構造を認め、左前方より大動脈が起始します。

 

6.修正大血管転位症の重症度分類

NYHA分類 II度以上を対象とします。

【NYHA分類】難病情報センターより引用

I度ー心疾患はあるが身体活動に制限はない。日常的な身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生じない。

II度ー軽度から中等度の身体活動の制限がある。安静時又は軽労作時には無症状。日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。

III度ー高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。日常労作のうち、軽労作(例えば、平地歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。

IV度ー心疾患のためいかなる身体活動も制限される。心不全症状や狭心痛(胸痛)が安静時にも存在する。わずかな身体活動でこれらが増悪する。

 

7.修正大血管転位症の治療

【内科治療】

三尖弁閉鎖不全や右心不全の治療、進行予防のために、ACE阻害薬、β遮断薬などが用いられます。

【手術】

・生理的修復手術;心室中隔欠損閉鎖術やRastelli 手術(心外導管を用いて解剖学的左室と肺動脈を結ぶ手術)など、解剖学的右心室が体心室となるように手術を行います。

・解剖学的修復手術;解剖学的右室機能の長期予後を考慮して、心房位転換術とRastelli 手術(心外導管を用いて解剖学的右室と肺動脈を結ぶ手術)や大血管スイッチ術を組み合わせて、解剖学的左心室が体心室となるように手術を行います。

・様々な内科治療や外科手術を行っても右室不全が進行する場合には、心移植の適応となることがあります。

 

8.修正大血管転位症の予後

自然予後;

合併心疾患により異なりますが、心室中隔欠損や肺動脈狭窄を合併しない場合では、完全房室ブロックや三尖弁閉鎖不全の程度に左右されます。これらが軽度あれば、60〜70歳代まで生存することもあります。合併心疾患のない場合でも、多くの場合で、成人になってから三尖弁逆流や右室機能不全により心不全を発症します。

術後の長期予後;

・生理的修復手術の術後10年生存率は55〜85%で、主な死因は、再手術、突然死、右室機能不全、不整脈と言われています。再手術は10年で約3分の1に認め、主に導管狭窄に対する手術、三尖弁置換術であり、10〜15年に1回の導管形成術が必要となることも多いと言われています。三尖弁閉鎖不全や右室機能不全の治療と進行予防のために、ACE阻害薬、β遮断薬を用いることがあります。

・Double Switch手術の長期遠隔成績は比較的良好となっており、術後生存率は、10年で90〜100%、15年で75〜80%と言われていて、遠隔期死亡の危険因子は三尖弁逆流の残存との報告もあります。心房スイッチと動脈スイッチ手術では比較的良好な遠隔期予後が期待できますが、心房スイッチとRastelli手術では、肺動脈狭窄、大動脈弁下狭窄、右心不全、不整脈などが問題となり治療が必要になることが多いです。

 

マックアリース温子麻酔科医、産業医2010年医学部卒業。初期研修終了後、総合病院にて麻酔科医として手術麻酔に従事。その後、大企業にて専属産業医として勤務し、メンタルヘルスや予防医学に携わっている。

 

<リファレンス>

先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf

成人先天性心疾患診療ガイドライン
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_ichida_h.pdf

難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4475

小山耕太郎,修正大血管転位症の診断 日本小児循環器学会雑誌 第28巻 第2号.2012;p73-80 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspccs/28/2/28_73/_pdf/-char/ja

八木原俊克,修正大血管転位の外科治療 日本小児循環器学会雑誌 第28巻 第2号.2012;p13-20
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspccs/28/2/28_81/_pdf

小児慢性特定疾患情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/04_37_046/

 

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