クロンカイト・カナダ症候群|疾患情報【おうち病院】

記事要約

クロンカイト・カナダ症候群とは、消化管に非腫瘍性ポリープが多発する非遺伝性疾患です。クロンカイト・カナダ症候群の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

クロンカイト・カナダ症候群とは

 クロンカイト・カナダ症候群は、消化管に非腫瘍性ポリープが多発する非遺伝性疾患です。ポリープは特に胃・大腸に多く見られますが、半数以上の症例で、小腸にもポリープの形成がみられます。また、ポリープの他に脱毛・爪甲萎縮・皮膚色素沈着などの皮膚症状や味覚異常も特徴とし、蛋白漏出性胃腸症を高率に伴います。治療はステロイドがよく効きますが、再発することがあり、早期の寛解導入と維持が必要です。

また、消化管悪性腫瘍の合併が一般人口より高率であるため、長期間にわたり定期的な観察が必要とされます。本症候群は世界的に希少な疾患ですが、報告例の大部分は日本からのものです。 2015 年 7 月より指定難病に認定されました。重症例や、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象となります。

クロンカイト・カナダ症候群の原因

 原因は不明です。しかしながら、ステロイドが奏功すること、ポリープや介在粘膜の炎症細胞浸潤、治療によるポリープの可逆性などの共通性があり、加えて、薬剤への曝露が発症の契機と考えられる症例の報告もあることから、何らかしらの免疫異常の関与が想定されています。

相談の目安

 最も多い症状が下痢症状で、長期に続く場合や全身の浮腫が出現する際には本症候群も鑑別に消化器内視鏡検査の必要性について医師と相談してみましょう。

クロンカイト・カナダ症候群の疫学的整理

1955年にCronkhiteとCanadaにより初めての2症例が報告されて以来、現在までに世界で500例ほどしか報告のない希少疾患ですが、そのうち約75%が本邦からの報告です。診断時の平均年齢は63.5歳で、男女比は男性に多く1.8倍です。生活歴や家族歴の報告はなく非遺伝性疾患と考えられます。1980年代は栄養不良・消化管出血による死亡例が半数近くとされましたが、近年の調査では栄養不良による死亡例は少ないです。

しかし、消化管腫瘍の合併が一般人口より高く、胃腺腫・胃癌・大腸腺腫・大腸癌はそれぞれ、 5~15%・5~10%・15~70%・15~20%とされ、診断時にすでに合併している例が過半数を占めます。小腸に関しては、腺腫および癌合併の報告は他の部位と比べて稀です。

クロンカイト・カナダ症候群の症状

 腹痛・下痢・食欲低下などの消化器症状を呈します。特に下痢は初期からみられ、血性でないことが多いです。 また、本症の9割で認められる脱毛、爪甲萎縮、皮膚色素沈着といった特徴的な皮膚症状や味覚症状が病初期に見られるのは50〜60%程度で約半数は経過中に出現することが多いです。脱毛は全身に認められるものの、特に頭髪から症状が現れることが多く、また、皮膚色素沈着は、手掌・手指に見られます。その他の合併症では、腫瘍性病変、蛋白漏出性胃腸症、消化管出血および腸重積が挙げられます。

重症度分類

 一日の排便回数、血清アルブミン値、浮腫、医師による全般評価、体重減少(5kg/6ヵ月以上)、貧血(血色素 男性12g/dL以下、女性10g/dL以下)、顕血便、その他所見(脱毛、爪甲委縮、皮膚色素沈着のいずれか・味覚障害 ・腸重積)をそれぞれスコアリングし各項目のスコア数の合計にて、活動性の評価を行います。血清アルブミン値が3.0g/dL以下の低アルブミン血症、かつ合計スコアが10点以上となるもの重症と判断します。

クロンカイト・カナダ症候群の診断の方法

 症状に加え、消化器内視鏡検査による内視鏡肉眼所見と検体の病理組織所見で診断します。特に肉眼所見または病理組織所見いずれか一方だけでは腺腫・ 若年性ポリープ・炎症性ポリープとの鑑別が困難な場合があり、両方で診断します。

<厚生労働省の難治性疾患克 服研究事業の研究班(日比班)診断基準引用>

(1)主要所見

A 胃腸管の多発性非腫瘍性ポリポーシスがみられる.特に胃・大腸のポリポーシスがみられ, 非遺伝性である.

B 慢性下痢を主徴とする消化器症状がみられる.

C 特徴的皮膚症状(脱毛,爪甲萎縮,皮膚色素沈着)(3 徴)がみられる. 

(2)参考所見

a 蛋白漏出をともなう低蛋白血症(低アルブミン血症)がみられる. 

b 味覚障害あるいは体重減少・栄養障害がみられる. 

c 内視鏡的特徴:消化管の無茎性びまん性のポリポーシスを特徴とする.胃では粘膜浮腫をともなう境界不鮮明なイクラのような隆起 .大腸ではイチゴ状の境界鮮明なポリープ様隆起 .

d 組織学的特徴:hamartomatous polyps(juvenile-like polyps).粘膜固有層を主座に,腺の囊状拡張,粘膜の浮腫と炎症細胞浸潤をともなう炎症像.介在粘膜にも炎症/浮腫を認める.

  • 主要所見のうち A は診断に必須である主要所見の A, B, C すべてが揃えば確定診断とする
  • 主要所見の A を含む主要所見が 2 つあり,a あるいは c+d があれば確定診断とする
  • 〇主要所見の A を有し,上記以外の組み合わせで主要所見や参考所見のうちいくつかの項目が みられた場合は疑診とする

クロンカイト・カナダ症候群の診断の難しさ(方法)

(1)臨床検査

 血液検査では、CRP値上昇、低アルブミン血症、低γグロブリン血症、電解質異常、貧血等がみられます。これらは非特異的ですが、本症候群では蛋白漏出性胃腸症の合併が高率であることから低アルブミン血症の臨床的意義は高いと考えられます。便中α1-アンチトリプシンクリアランス検査や99mTc-アルブミンシンチグラフィーは、蛋白漏出性胃腸症の検査としては参考になりますが、消化管への蛋白漏出を証明しうるのは半数程度です。

また、ヘリコバクター・ピロリ感染が疾患に関与している可能性が示されており、 感染の有無を確認するための血中HP IgG抗体、便中HP抗原、尿素呼気試験が行われることもあります。

(2)内視鏡所見

 本症候群では、ほぼ全例で胃・大腸にポリープの多発がみられますが、食道や小腸においても、小ポリープや粘膜の発赤、浮腫がみられることがあります。通常光観察の所見で本疾患を疑うことは容易ですが、小腸内視鏡や色素散布、特殊光拡大観察を併用すると、より詳細な病勢の把握が可能となります。

クロンカイト・カナダ症候群の治療

(1)内科的治療 

 薬物療法

ステロイド剤投与による治療がメインとなります。通常はステロイド30mg/日以上の十分量を投与することで概ね良好な反応が得られ、治療に反応した場合2ヶ月程度で下痢、3ヶ月程度で味覚障害が軽快していくとされています。それに続いて数ヵ月から半年で体重減少などの栄養障害および皮膚所見が改善するとされます。内視鏡所見の改善にかかる時間は8ヵ月前後と最も遅く、数年を要する症例も存在します。急激な減薬は再燃を引き起こす可能性があるため、臨床症状および内視鏡所見の十分な改善を投薬の中止・減量の指標とすることが大切です。

 栄養療法

本症候群は、低栄養のリスクが高くなる高齢者に多く発症し、高頻度に合併する蛋白漏出性胃腸症やステロイド投与の影響で免疫力の低下が懸念されるため、栄養療法は補助療法として重要です。 完全中心静脈栄養、半消化態栄養剤による栄養療法は、ステロイドに対する反応性の改善や寛解までの期間短縮が想定されていますが有効性の検証に関しては不十分です。

 難治例に対する代替療法

一部の難治例に対し、シクロスポリン、アザチオプリン、抗TNFα抗体などを使用して寛解に至った報告があります。他に、抗生物質、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法などを使用した報告はありますが、いずれも症例が少なく、有効性の検証は不十分です。

 (2)内視鏡・外科治療 

  内視鏡・外科治療は、主に合併する癌に対して行われます。他にポリープからの出血に内視鏡的止血術、 また、大腸のポリープが原因で発生する腸重積の一部で外科治療が行われることがあります。なお、併存する腺腫や癌の診断は、診断確定時にはポリープが多数あることに加えて介在粘膜が発赤浮腫状であるため困難です。一方、内科加療が奏功しポリープの退縮・粘膜浮腫の改善が得られれば発見率は上昇するため、初期治療後に改めて画像強調観察、色素内視鏡、拡大内視鏡などを駆使して観察することが勧められます。ポリープが消退した後の癌発生率については今のことこわかっていませんが、治療後も継続して定期的なサーベイランス内視鏡検査を受けることが望ましいとされています。

<リファレンス>

渡 辺 知佳子,穂 苅 量 太, 三 浦 総一郎, 消化管ポリポーシスの最前線, 日消誌 2017;114:431―437
Cronkhite-Canada症候群 内視鏡アトラス,難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 
難病情報センター クロンカイト・カナダ症候群(指定難病289)
厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の研究班(日比班)診断基準

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