早期胃癌と内視鏡治療|clila疾患情報

【目次】
1.早期胃癌とは
2.早期胃癌の原因
3.早期胃癌と症状
4.早期胃癌の内視鏡治療の適応
5.早期胃癌の内視鏡治療とは

 

1.早期胃癌とは

胃癌は癌による死因の上位を占めていますが、早期発見・早期治療により治せる癌でもあります。胃の壁は粘膜層→粘膜下層→筋層と大きく3層に分けることができ、早期胃癌とは大きさに関係なく癌の深さが胃の内側の粘膜内とその下の粘膜下層にとどまるものと定義されています。癌が粘膜下層へ及ぶと大きさにもよりますが、1〜2割の確率でリンパ節へ転移を起こし、内視鏡治療では取りきれなくなります。胃癌を早期発見・早期治療するためには年に1回程度の定期的な内視鏡検査を受けることが大切です。

2.早期胃癌の原因

日本の胃癌の原因の9割以上がピロリ菌感染といわれています。ピロリ菌に感染すると必ず胃癌が発生するわけではありませんが、ピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症は胃癌の主原因の1つとされています。ピロリ菌は不衛生な水や食べ物の中に存在し、それを口にすると感染しやすいことがわかっています。ピロリ菌の感染率は上下水道が整備されていなかった1950年以前に生まれた人では40%以上ですが、若年者では減少傾向です。また、ピロリ菌は唾液などからも感染するため、ピロリ菌に感染者が食べ物を乳幼児に口移ししたりすると感染させる可能性があります。ピロリ菌の除菌は薬の内服で行うことが出来るため、もし感染していることが分かれば直ちに除菌することが良いでしょう。
その他、塩分過多の食事、野菜・果物の摂取不足、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣も胃癌の発生に関与するとされています。

3.早期胃癌と症状

胃癌は病気が進行しなければ無症状のことがほとんどです。癌が進行すると、胃痛、胃の不快感、食欲低下、嘔吐、倦怠感、黒色便、貧血等の症状が現れます。初期の段階で胃癌を発見するためには、無症状であっても検診などの定期的検査を受けることが大切です。

4.早期胃癌の内視鏡治療の適応

胃癌は早期癌か進行癌かによって治療法が大きく異なります。外科的手術を行う場合、開腹手術はお腹の切開傷が大きいため術後の回復に時間がかかり、出血や感染、縫合不全などの合併症の可能性もあります。腹腔鏡下手術は回復手術に比べてお腹の傷が小さくなりますが、胃の一部又は全部を切除する点では開腹手術と同じであるため、手術に伴う合併症のリスクがあります。これに対して、内視鏡治療は、胃の内側から癌を切除するためお腹に傷は付きません。外科的手術に比べて侵襲度が低いため入院期間も短くなります。しかし、全ての胃癌を内視鏡で切除出来るわけではなく、内視鏡的治療の適応はリンパ節転移を認めず、癌が粘膜内に留まっている早期胃癌です。早期胃癌の内視鏡治療には大きく分けて2種類あり、胃の粘膜病変を挙上して鋼線のスネアをかけ、高周波により焼灼切除する内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)と、高周波デバイスを用いて病巣周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を剝離して切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)があります。

胃癌診療ガイドラインでは内視鏡で治療できる「絶対適応病変」を以下のように定めています。
<EMR・ESD>

  1. 深さ…粘膜層までにとどまるもの
  2. 癌細胞の種類…分化型癌(細胞の形や並び方が粘膜の元の構造を残しているタイプ)
  3. 大きさ…直径が2cm以下
  4. 潰瘍を併発していないもの

<ESD>

  1. 深さ…粘膜層までにとどまるもの
  2. 癌細胞の種類…分化型癌(細胞の形や並び方が粘膜の元の構造を残しているタイプ)
  3. 大きさ…直径が2cm以上
  4. 潰瘍を併発していないもの

又は

  1. 深さ…粘膜層までにとどまるもの
  2. 癌細胞の種類…分化型癌(細胞の形や並び方が粘膜の元の構造を残しているタイプ)
  3. 大きさ…直径が3cm以下
  4. 潰瘍を併発しているもの

リンパ節転移の危険性は1%未満と推定されるものの、長期予後に関するエビデンスに乏しい病変を「適応拡大病変」と定めています。

  1. 深さ…粘膜層までにとどまるもの
  2. 癌細胞の種類…未分化型癌(パラパラと広がるように増殖し分化型に比べて悪性度が高いタイプ)
  3. 大きさ…直径が2cm以下
  4. 潰瘍を併発していないもの

5.早期胃癌の内視鏡治療とは

内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、粘膜下層に注射用生理食塩水を注入し、癌の部位とその下の粘膜筋板を筋層から浮かせます。スネアと呼ばれるリング状の電気メスで縛り高周波電流を流して病変を切除します。内視鏡の先端に筒状のキャップをつけてキャップ内に癌の部位を吸引した後、スネアを用いて切除する場合もあります。この方法はキャップの大きさに限界があるため、切除可能な病変は2センチ程度です。それ以上の大きさの早期癌は一度に切除することが出来ません。また潰瘍を伴った癌は、潰瘍が治癒する過程で瘢痕というひきつれが残り、その瘢痕が筋層に張り付いてしまい、生理食塩水を注入しても病変が浮いてこない場合があります。そのため、瘢痕を伴った早期癌もEMRの適応外となります。粘膜内癌は早期胃癌の40-50%程度ですが、実際にEMRで治療できる病変は三分の一であり、以前は残りの三分の二は粘膜内癌であっても外科的手術で切除するしかありませんでした。そこで、より大きな病変を確実に内視鏡的に切除する方法として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が開発されました。
 ESDの方法は、まず病変の範囲を適切に診断し、病変の周囲の癌がない部分に十分な安全領域を確保し切除範囲をマーキングします。病変の粘膜下層に薬液を注入し病変部を固有筋層から浮かび上がらせます。マーキングのさらに外側で高周波の電気メスを用いて、粘膜及び粘膜筋板を全周切開します。病変の下の粘膜下層を剥離していくと病変は完全に切除できます。
 しかし、ESDは手技的に難易度が高く、処置に長時間を要し偶発症が発生する可能性もあります。約7mmの胃壁の内側を約3mmの厚さで広範に剥いでいくため、出血及び穿孔のリスクが伴います。ESD後の出血は5-10%程度ありますが、輸血の可能性は1%弱とされています。穿孔は5%弱あるとされていますが、穿孔が生じても全例外科的手術が必要になる訳ではなく、まずは内視鏡下でクリップを用いて傷を閉鎖することを試みます。また術後に誤嚥性肺炎を発症することもあり、術前後に抗生剤の点滴を行うことがあります。また広範囲を切除すれば良いというわけではなく、大きく切除することで術後瘢痕狭窄や高度の変形による通過障害などの合併症が起こることもあります。そのため、術前の正確な範囲診断や病変がどの深さまで浸潤しているか深達度診断が大変重要になります。また、術後再発の可能性もあるため、定期的な検査を受けることも大切です。

姫野愛子 消化器内科医 2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

 

<リファレンス>
胃癌診療ガイドライン第5版
早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 日本消化器内視鏡学会
胃癌に対する ESD/EMR ガイドライン Gastroenterological Endoscopy 56 ; 310―323 : 2014
H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版

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