腸内細菌は減量成功の「主役」である

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、消化管内に生息するさまざまな細菌や真菌などの微生物で構成されており、その構成は人によって異なります。

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、代謝や免疫機能、精神面などを調整することにより、個人の健康状態に大きく影響すると考えられています。
これらの腸内細菌は、グルコース代謝・食欲・脂肪蓄積を調節することで、エネルギー代謝に影響を与えます。

エネルギー代謝における腸内細菌叢(腸内フローラ)の役割と一致するように、動物やヒトを対象とした研究では、腸内細菌の組成や機能の変化が肥満や糖尿病と関連することが示唆されていました。
さらに最近の研究では、腸内細菌叢(腸内フローラ)の組成が、減量のための介入に対する個人の反応を予測できることが示唆されています。

シアトルにあるシステム生物学研究所の研究者らは、腸内細菌叢(腸内フローラ)の組成の違いが、減量介入に対する身体の反応にどのような影響を及ぼすかを調査しました。

遺伝学的アプローチ

研究者達は、減量プログラムに参加する前に、個人の腸内細菌叢(腸内フローラ)に最も多く存在する遺伝子を特定しました。
これらの遺伝子が果たす生物学的機能に基づいて、腸内細菌叢(腸内フローラ)全体の機能プロファイルを推測することができたのです。

その結果、減量プログラム開始時の腸内細菌叢(腸内フローラ)の遺伝子の機能プロファイルが、個人の減量能力を予測することがわかりました。

注目すべきは『減量に成功した個人』と、『減量に抵抗のある個人』の間で、科学者たちに知られているマイクロバイオーム遺伝子の豊富さが、代謝への影響の与え方に違いがあったことです。

Medical News Todayは、ワイツマン科学研究所とドイツ国立がん研究センター(DKFZ)のマイクロバイオームの専門家であり、本研究には関与していないエラン・エリナヴ教授に話を聞きました。
同氏は次のように述べています。

「腸内細菌叢(腸内フローラ)の役割は、動物モデルを用いた多くの前臨床試験で示唆されている。
しかし、ヒトのデータはこれまでのところ関連性がないままだ。
Diener博士らの今回の研究では、食事による体重減少に関するベースラインの微生物叢の特徴を特定することで、食事によって反応するヒトの微生物叢の寄与についての理解を深められている。」

この研究の筆頭著者であるシステム生物学研究所の助教授であるショーン・ギボンズ博士はMNTに対し、以下のように述べています。

「この研究は、軽度の生活習慣の介入に反応する可能性が高い人や、体重を減らすために抜本的な介入が必要な個人を特定するための診断につながるかもしれない。」

さらにギボンズ博士は、

「これらの結果は、体重減少の成功または抵抗の原因となる生物や遺伝子を示唆しており、体重減少に抵抗するマイクロバイオームを体重減少に寛容なマイクロバイオームに変えることを目的とした将来の介入の指針となるかもしれない。」

と続けました。

本研究は、学術誌「mSystems」に掲載されています。

ベースラインBMIと体重減少

今回の研究では、民間の行動保障型ウェルネスプログラムに登録した105人のデータを分析しました。
研究者らは、参加者の体重やBMI(肥満度指数)などの情報を収集したのです。

また、ベースライン時とプログラム開始後6〜12カ月後の血液サンプルを調べ、プログラム開始時には食生活の情報と便のサンプルを収集しました。

血液サンプルでは、さまざまな代謝物やタンパク質のレベルを評価し、便サンプルでは、腸内細菌叢(腸内フローラ)の構成と機能も調べました。

さらに、メタゲノム解析を用いて、腸内細菌叢(腸内フローラ)の機能の違いを評価します。
メタゲノム解析では、個々の微生物種のゲノムを解析するのではなく、腸内細菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のコミュニティ全体で最も多く存在する遺伝子を特定しました。

最も多く存在する遺伝子を特定することで、腸内細菌叢(腸内フローラ)全体の機能を予測することができます。
105人の参加者のうち、48人は1カ月あたりの体重が1%以上減少したのに対し、残りの57人は体重が減少しませんでした。

研究者らは、体重の減少が最も大きかった15人と、体重の変化が最も小さかった体重減少なしのグループの10人を特定しました。
そして、このサブグループの25人のサンプルを用いて、腸内マイクロバイオームの組成と機能を調べます。
さらに、全105名のサンプルを用いて、減量と食事パターン、血中の代謝物やタンパク質などの特定の変数との関連性を調べました。

参加者全員のデータを調べたところ、発症時のBMIが高い人ほど、より多くの体重が減少していることがわかりました。

BMI値の高さと体重減少の関連性はよく知られていますが、研究者たちは、BMI値とは無関係に体重減少を予測する要因を明らかにしたいと考えました。
その理由は、発症時のBMIが、体重減少と他のベースライン因子との潜在的な関連性を歪めたり隠したりする可能性があるためです。

そこで研究者らは、BMIの影響をコントロールした後に、その後の分析を行いました。

血中メタボリックマーカーの変化

減量介入の前後に採取した血液サンプルを用いて、減量した群としなかった群の代謝マーカーの変化を比較しました。
その結果、体重が安定しているグループと比較して、減量グループではアディポネクチンのレベルが上昇していることがわかったのです。

脂肪はアディポネクチンというホルモンを分泌しており、このタンパク質のレベルが上昇すると、体重の減少につながります。

また体重減少群では、これまでに炎症や肥満などの、代謝異常に関連することが明らかになっている6つのタンパク質のレベルが低下していました。
これらのタンパク質は、炎症、肥満、その他の代謝異常に関連することが明らかになっています。

このように、体重減少は、個人の代謝および免疫プロファイルの改善と関連していました。

体重減少とベースラインの特徴との関連

研究チームは、ベースラインのBMI、年齢、性別を考慮した上で、体重減少とベースラインで測定したさまざまな特徴との関連を分析しました。
ベースラインの特徴とは、食生活のパターン、血中のタンパク質と代謝物のレベル、腸内細菌叢(腸内フローラ)の構成と機能などです。

その結果、体重減少の程度は、ベースラインの食事パターンや血中の代謝物レベルとは相関していませんでした。
また、血中の肥満関連タンパク質であるKITリガンドのレベルだけが、体重減少への抵抗力と正の相関がありました。

一方、多くのベースラインの特徴は、参加者の初期のBMIと関連しています。
マイクロバイオームの組成と体重減少との間には関連性が認められませんでしたが、31のマイクロバイオーム遺伝子のレベルは体重減少と関連していました。

つまり、マイクロバイオーム遺伝子のプロファイルは、ベースラインの食事パターンや血中の代謝物やタンパク質のレベルよりも、体重減少の予測因子として優れていたのです。

全体として、筆頭著者のクリスチャン・ディーナー博士は次のように結論づけています。

「腸内細菌叢(腸内フローラ)は、減量のための介入が成功するかどうかを調節する上で主要なプレーヤーだ。」

マイクロバイオーム機能遺伝子

体重減少群で最も多く見られたマイクロバイオーム遺伝子は、細菌の細胞壁の合成に関連するものでした。
細胞壁の合成の増加は、細菌の複製時に起こります。

研究者たちは、減量グループでは、減量していないグループに比べて、確かに細菌の複製率が高いことを発見しました。
さらに、プレボテラ(Prevotella)属に属する細菌が、減量グループの複製率の増加に大きく関与していることもわかりました。

過去の研究Trusted Sourceによると、注目すべきは、腸内のプレボテラ濃度が高い人は食物繊維の多い食事をすると体重が減りやすいということです。
腸内のプレボテラ濃度が高いと、複雑な炭水化物の発酵による分解レベルが高まり、短鎖脂肪酸が生成されます。

この短鎖脂肪酸は、消費された炭水化物よりもエネルギー密度が低く、炎症を抑える効果があります。
専門家の間では、肥満は慢性的な低級炎症と関連している可能性が高いと考えられているため、この点は特に注目されています。

一方、減量に抵抗のある人では、複雑な炭水化物やタンパク質の分解に関連するマイクロバイオーム遺伝子や、ストレス反応や細胞呼吸に関連する遺伝子が濃縮されていました。
正確には、減量しないグループで濃縮された遺伝子には、複雑な炭水化物を単純な糖に分解する酵素をコードするものが含まれています。

同時に、減量に成功した人では、これらの単糖を発酵生成物に変える能力を持つ細菌の数が少ないため、宿主、すなわち人体による単糖の吸収率が高くなっている可能性があるのです。

したがって、発酵に関与する細菌の複製率が低く、糖質分解酵素の量が多いことが、減量のための介入に反応しない原因ではないかと著者らは仮説を立てました。

ギボンズ博士は、

「減量に寛容なマイクロバイオームでは、嫌気性発酵菌が急速に増殖していたが、減量に抵抗性のマイクロバイオームでは、デンプン分解遺伝子の濃縮が見られ、より緩慢な増殖と組み合わされていた。」

と説明しています。

彼はさらにこう続けました。

「このことから、体重減少抵抗性は、食物繊維やデンプンから切り離された単糖をめぐって、宿主が微生物群と競争することで生じることが示唆される。
宿主は、マイクロバイオームが急速に成長していないと、これらの糖を吸収してしまう。
このように、マイクロバイオームは、宿主が食事からカロリーを抽出する効率を調節しているようだ。」

長所と限界

本研究の強みについて、ギボンズ博士はMNTに次のように述べています。

「先行研究では、BMIと体重減少をしばしば混同している。
BMIが高い人は介入に応じてより多くの体重を減らす傾向があるため、これらの要素は高い相関性を持っている。
多くの表現型因子は、たとえそれが体重減少反応に関連しないとしても、BMIと相関しているため、これは大きな問題だ。
そこで、減量との関連を調べる際に、ベースラインBMIを補正した。
今回報告された結果は、ベースラインBMIとは完全に独立した体重減少に関連する特徴である。」

著者らは、本研究には一定の限界があることを認めました。

「今回の研究では、ベースラインの食事パターンしか調べておらず、この個別介入研究の全期間にわたって詳細な食事記録を追跡していなかった。」

と述べています。

今後の研究では、

「減量効果を予測する上で、食事内容の変化とベースラインの腸内細菌叢(腸内フローラ)の影響をより明確にするために、このような縦断的な食事データを収集したい」

と続けました。

またギボンズ博士は、

「我々のコホートサイズはかなり控えめであり、これらの結果はむしろ予備的なものと考えるべきだ。」

と指摘しました。

今回の研究のサンプル数の少なさに対処するため、著者らはより多くの参加者で研究を再現する予定です。
ギボンズ博士は、今後の研究の方向性について話し合い、次のように述べています。

「最終的には、人々の体重減少を助ける診断法や個人に合わせた介入法を開発したいと考えている。
パーソナライズされた介入を行うには、個人のマイクロバイオームが食事の入力にどのように反応するかを予測するモデルが必要になる。
我々は現在、これらのモデルを構築しています。
例えば、我々は最近、MICOMと呼ばれる、個人に合わせてパーソナライズできる腸内細菌叢(腸内フローラ)のコミュニティスケールの代謝モデルを構築した。」


この記事は、EDICAL NEWS TODAYに掲載された「Gut bacteria are ‘major player’ in weight loss success」を翻訳した内容です。

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