好酸球性多発血管炎性肉芽腫症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)、以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた疾患です。顕微鏡的多発血管炎、多発性肉芽腫性血管炎とともにANCA関連血管炎のひとつです。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因・治療方法・診断のコツなどを医師監修の基解説します。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症とは

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)、以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた疾患です。顕微鏡的多発血管炎、多発性肉芽腫性血管炎とともにANCA関連血管炎のひとつです。

気管支喘息やアレルギー性鼻炎をもつ患者さんで、白血球の一種である好酸球が異常に増加して細い血管に炎症を起こし、血流障害や壊死、臓器機能障害を生じる全身性の自己免疫疾患です。 

(1)先行する気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎

(2)血中の好酸球の増加

(3)血管炎症状を認めることにより診断されます。

病理組織学的に、肉芽腫性あるといったいはフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎や白血球破砕性血管炎、血管外の肉芽腫形成といった所見がみられると確実です。参考所見として、血沈亢進、血小板増加、IgE高値、血清MPO-ANCA(p-ANCA)陽性(40%程度とされます)などが重要です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因

気管支喘息、アレルギー性鼻炎が先行し、著明な好酸球増多症を呈することから、何らかのアレルギー性機序により発症すると考えられています。

ロイコトリエン受容体拮抗薬を使用後に本症が発症することがありますが、明らかな因果関係は証明されていません。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の疫学

全国疫学調査で受療者数は約1,900 人と推定され,発症年齢は 40~69歳で 66%を占めます。平均年齢55歳、男女比は1:1.7とやや女性に多いことがわかっています。

欧州では、人口100万人あたり1年に 0.5~6.8人の新規患者発生があり、有病率は100万人あた り10.7~13人といわれています。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の症状

気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー体質が先に起こることが多く、気管支喘息から血管炎による症状の発症までは3年以内が多いとされています。

血管炎に伴う症状としては、しびれや感覚障害が多く(多発性単神経炎)9割以上の患者さんに、皮膚症状(紫斑、皮膚潰瘍)などの症状も約6割の方にみられます。
他にも発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛などの全身症状をみることがあります。

なかには腎障害や間質性肺炎、腸炎、心筋炎など重症な臓器病変も伴うこともあります。

多発性単神経炎は、急性症状が改善してからも、知覚や運動障害が遷延することがあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の検査

検査所見は、末梢血中の好酸球数の増多、炎症反応の上昇(CRP高値、白血球数増加、赤沈亢進)、血清IgE値の上昇などがみられます。

MPO-ANCAは約30~40%程度にしか認められません。

また、しびれなどの感覚障害や運動障害を伴う場合は、筋電図検査で異常がみられます。また肺や皮膚、神経、腎生検を行い、血管炎の有無を証明することもあります。

病理組織学的には、真皮の血管周囲の好中球と著明な好酸球浸潤を認める細小血管の肉芽腫性血管炎あるいはフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎や白血球破砕性血管炎が認められ、ときに、血管外に肉芽腫形成が観察されます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断

気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、好酸球増加、発熱、体重減少、多発単神経炎、消化管出血、紫斑、関節炎、筋肉痛など血管炎による症状の主要臨床所見と経過、好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫または壊死性血管炎などの主要組織所見などの検査所見から診断します。

また、指定難病のため重症度に照らした上で医療助成の対象となることがあります。比較的予後良好な疾患ではありますが、しびれなどの末梢神経障害は残りやすく、また、病変が脳や心臓、消化管などにおよぶと重篤な経過になることがあります。

<診断基準>

Definite、Probableを対象とする。

1.主要臨床所見

  1. 気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
  2. 好酸球増加
  3. 血管炎による症状:発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6か月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、多関節痛(炎)、筋肉痛(筋力低下)、紫斑のいずれか1つ以上 

2.臨床経過の特徴

主要臨床所見(1)、(2)が先行し、(3)が発症する。

3.主要組織所見

  1. 周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性又はフィブリノイド壊死性血管炎の存在
  2. 血管外肉芽腫の存在

4.診断のカテゴリー

(1)Definite

(a) 1.主要臨床所見3項目を満たし、3.主要組織所見の1項目を満たす場合

(b) 1.主要臨床所見3項目を満たし、2.臨床経過の特徴を示した場合

(2)Probable

(a) 1.主要臨床所見1項目及び3.主要組織所見の1項目を満たす場合

(b) 1.主要臨床所見を3項目満たすが、2.臨床経過の特徴を示さない場合

5.参考となる所見                                      

  1. 白血球増加(≧1万/µL)
  2. 血小板増加(≧40万/µL)
  3. 血清IgE増加(≧600 U/mL)
  4. MPO-ANCA陽性
  5. リウマトイド因子陽性

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療

患者さんそれぞれの症状が出現している部位と程度により重症度を決定します。治療は、主に副腎皮質ホルモンであるステロイド(プレドニゾロン)の投与を行います。

軽症~中等症ではプレドニゾロン 30~50 mg/日で治療を開始し症状改善後に漸減します。重症では高用量ステロイド+シクロフォスファミド(エンドキサン®)による寛解導入療法の後、徐々にステロイドを減量し、アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)併用などによる維持療法を行います。

また、ステロイドを長期に使用しても改善しなかった神経障害に対して、高用量ガンマグロブリン点滴が保険適用となっています。神経障害による運動障害に対してはリハビリテーションを積極的に行います。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の予後

上記の治療により、約90%の症例は6か月以内に寛解に至りますが、継続加療を必要とします。残りの約10%は治療抵抗性であり、副腎皮質ステロイド単独による完全寛解は難しく、寛解・増悪を繰り返すとされます。

このうちの10%は重篤症例で、重症後遺症を残すか死に至ることもあります。寛解例でも、多発性単神経炎による末梢神経症状が遷延する場合や、時に血管炎が再発を来す症例があるので注意が必要です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の生活上の注意

多発血管炎性肉芽腫症で治療されている患者さんはステロイド薬や免疫抑制薬を服用されている場合が多いため、感染症対する注意が必要です。
手洗い・うがいなどを心がけ、ストレスのかからない生活を送り、風邪などひかぬように注意しましょう。

また、薬の飲み忘れや、自己判断で中断することは病気の再発につながる可能性もありますので必ず主治医の指示に従いましょう。

まとめ

血管炎全般に、感冒などでみられる発熱、易疲労感、関節痛などの症状で始まり、診断がつきにくい場合があります。この疾患は喘息の先行が見られることが多いですが、原因不明の発熱などの全身症状で血管炎が関与していることがあります。

些細と思っても症状を丁寧に伝え、こういった疾患も念頭に、リウマチ・膠原病医や各症状を治療できる専門医のもとで診断・治療に当たることが必要です。

<リファレンス>

難病情報センター 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)
ANCA関連血管炎の診療ガイドライン2017
ANCA関連血管炎.com

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