ヘリコバクター・ピロリ菌感染症|clila疾患情報

【目次】
1.ヘリコバクター・ピロリ菌感染症とは
2.ヘリコバクター・ピロリ菌とは
3.ヘリコバクター・ピロリ菌が関与する病気
4.ヘリコバクター・ピロリ菌の検査
5.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法

 

1.ヘリコバクター・ピロリ菌感染症とは

日本人のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)菌感染者の数は約3500万人といわれています。ピロリ菌は胃や十二指腸の病気との関連が研究されており、国立がんセンターの報告によるとピロリ菌感染者は胃癌のリスクが非感染者の5.1倍とされています。その後の研究で胃や十二指腸などの消化管だけでなく全身に影響を及ぼすことが分かってきました。このような研究の進歩により、ピロリ菌に感染している場合、ピロリ菌感染症と診断し、除菌すべきと考えられるようになりました。しかし、ほとんどの人はピロリ菌に感染していることに気付いていません。健康診断の際や胃痛等の症状や消化性潰瘍の兆候が現れた際、ピロリ菌の関与を疑われ検査をした結果、発覚することが多いです。

 

2.ヘリコバクター・ピロリ菌とは

ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているグラム陰性桿菌という細菌です。胃には強い酸(胃酸)があるため胃の中で細菌は生きられないと考えられていました。しかし、ピロリ菌はウレアーゼという特殊な酵素によってアンモニアを生成し胃酸から身を守っているのです。一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に生息し続けます。ピロリ菌は井戸水に多く含まれており、幼年期にはまだ上下水道が整備されていなかった年代の人に感染している人が多く高齢者ほど感染率が高いと言われています。現代では感染している人の数が低下していますが、ピロリ菌に汚染された飲食物が口から入ることで感染すると言われており、ピロリ菌に感染している大人が幼児に口移しで食べ物を与えることで感染している場合があります。

 

3.ヘリコバクター・ピロリ菌が関与する病気

ピロリ菌の発見以来、さまざまな研究からピロリ菌が胃炎や胃潰瘍、胃癌などの胃の病気に深く関わっていることが明らかにされてきました。ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こり、感染が長く続くと胃粘膜の感染部位は広がり、最終的には胃全体に広がって慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎)となります。これが胃潰瘍・十二指腸潰瘍・萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃癌に進展していくこととなります。慢性胃炎が長期間続くと、胃の粘膜が薄く痩せてしまう状態となり萎縮性胃炎を起こします。萎縮性胃炎になると胃液が十分に分泌されず、食べ物が消化されにくくなり食欲不振や胃もたれの症状が現れることがあります。萎縮がさらに進むと胃の粘膜は腸粘膜のようになり腸上皮化生と言われる状態になります。腸上皮化生を起こした場合、胃癌にな確率が高いことが報告されています。以下はピロリ菌が関与する病気です。

・胃潰瘍
胃潰瘍を起こす主な原因としてピロリ菌が知られています。胃潰瘍の主な症状として、心窩部痛、胸焼けや吐き気などがあります。胃壁のダメージにより出血が起きている場合(出血性胃潰瘍)は吐血や下血(黒色便)が出る場合もあります。 ピロリ菌のほか、喫煙やストレス、解熱鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症剤)の服薬による胃潰瘍も原因となります。

・十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍のほとんどはピロリ菌感染によって引き起こされています。 心窩部痛、吐血、下血(黒色便)などの症状は胃潰瘍と同様で、十二指腸の組織は胃壁よりも薄いため、胃酸による障害を受けやすく出血しやすい傾向にあります。 出血した場合は内視鏡による止血術が必要となり、穴が開いた(穿孔)場合には外科的治療を要することもあります。

・胃癌
長期間のピロリ菌感染によって引き起こされる萎縮性胃炎は胃癌の発症リスクを高めます。胃癌とピロリ菌の関連は以前より報告されており、過去の調査では胃癌発症者の約90%以上にピロリ菌感染歴があることが分かっています。 早期胃癌のほとんどは無症状で病気が進行するにつれて腹痛や食欲不振、吐血や下血、貧血といった症状が認められます。胃癌の治療法は病気の進行の程度により異なりますが、早期胃癌の場合、内視鏡的切除術が可能なこともあります。

・胃MALTリンパ腫
MALT(マルト)リンパ腫は血液中のリンパ球にできる癌で胃に発症することもあります。胃マルトリンパ腫の主な原因はピロリ菌感染と言われております。

・胃過形成性ポリープ
胃にできるポリープにはいくつか種類がありますが、このうちピロリ菌との関連が指摘されているのは胃過形成性ポリープです。様々な形・大きさを形成しますが、ポリープから出血が起き、貧血の原因となる場合には切除を要します。ピロリ菌除菌を行うことで消失することもあります。

・特発性血小板減少症(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)
特発性血小板減少性紫斑病は血液中の血小板を破壊する抗体が生まれることにより血小板数が減少してしまう病気です。血小板は出血を止める役割を担っているため血小板が減少すると出血しやすく、また血が止まりにくくなります。ピロリ菌感染が病気の原因となるためピロリ菌感染が認められればまずは除菌療法を行います。

 

4.ヘリコバクター・ピロリ菌の検査

ピロリ菌の検査は6種類あり、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。内視鏡による生検組織が必要な検査は①迅速ウレアーゼ試験、②組織鏡検法、③培養法、内視鏡による生検組織が必要としない検査は④尿素呼気試験、⑤血清抗ピロリ抗体測定、⑥便中ピロリ抗原測定です。ピロリ菌の検査は、これらのうち、いずれかを用いて行われますが、1つだけでなく複数の検査を行えば、より確かに判定できるとされています。初めてピロリ菌検査を受ける場合はどの検査法でも判定可能ですが、除菌治療後の判定には、尿素呼気試験か検便検査法しか出来ません。

①迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌し尿素を分解します。内視鏡検査を行い、胃粘膜組織を採取し、ウレアーゼの反応を検査します。

②組織鏡検法
胃粘膜の生検組織を染色固定し、顕微鏡でピロリ菌の有無を観察する検査です。

③培養法
胃粘膜の生検組織から、ピロリ菌を培養し有無を確認する検査です。

④尿素呼気試験
ピロリ菌に感染しているとピロリ菌が放出するウレアーゼによって、胃で尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解され二酸化炭素の量が感染していない時に比べて多くなります。尿素を含んだ検査薬の服用前後で呼気に含まれる二酸化炭素の量を比較する検査方法です。

⑤血清・尿中抗ピロリ抗体測定
血液もしくは尿に含まれるピロリ菌に対する抗体や抗原の有無を調べる検査で、検診などでよく用いられます。除菌後は陽性のが続く事があり、除菌後の効果判定法としては用いません。

⑥便中ピロリ抗原測定
便を調べてピロリ菌感染を判定する方法です。

 

5.ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌方法

ピロリ菌の除菌療法とは胃酸の分泌を抑える薬とペニシリンとクラリスロマイシンという2種類の抗生剤を合わせた3剤を同時に1日2回、7日間服用する治療法です(一次除菌療法)。1回目の除菌が不成功の場合はクラリスロマイシンをメトロニダゾールという薬に変更した3剤で2回目の除菌治療をします(二次除菌療法)。正しく内服すれば一次除菌療法の成功率は80%前後といわれています。一次除菌療法で除菌に失敗した場合でも二次除菌療法でほとんどの場合、除菌が成功すると報告されています。確実にピロリ菌を除菌するためには指示された薬を必ず休まず服用することが大切です。自分の判断で服用を中止すると除菌に失敗するだけでなく、治療薬に耐性をもったピロリ菌に変化することもあります。すべての治療の終了後は、4週間以上経過してから除菌が成功したかどうかの検査を必ず受けることも大切です。また、除菌に成功したからといって胃癌などの病気にならないというわけではありません。ピロリ菌除菌後も年に一度の定期なに内視鏡検査による経過観察をすることも大切です。また、ピロリ菌除菌後の再発率は1-2%と言われており、適切な除菌療法を行った場合は、再感染する可能性は極めて低くなります。

 

姫野愛子消化器内科医2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

 

<リファレンス>
H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版

厚生労働科科学研究費補助金がん臨床研究事業「ピロリ菌除菌により胃癌予防の経済効果に関する研究」H24年度総括・分担研究報告書 2013

日本臨床内科医会 わかりやすい病気のはなしシリーズ29 ピロリ菌感染症第2版2010年9月発行

Frequency of Helicobacter pylori -negative gastric cancer and gastric mucosal atrophy in a Japanese endoscopic submucosal dissection series including histological, endoscopic and serological atrophy. Digestion. 2012;86(1):59-65.

 

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