口唇ヘルペス|疾患情報【おうち病院】

記事要約

口唇ヘルペスは唇やその周りに小さな水ぶくれができる感染性の病気です。口唇ヘルペスに感染すると口の周りにピリピリ、チクチクとした違和感が現れます。その後、痛みを伴いながら患部が赤くなり水泡(水ぶくれ)ができます。そして、かさぶたになって治癒します。抵抗力が弱った際に再発しやすく、繰り返すことがあります。口唇ヘルペスの原因・治療方法・予防などについて、医師監修の基解説します。

口唇ヘルペスとは

単純ヘルペスウイルス(HSV: herpes simplex virus)は体のどこでも感染するウイルスで、口唇ヘルペスは唇やその周りに小さな水ぶくれができる感染性の病気です。単純ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスの他、ヘルペス性歯肉口内炎、単純ヘルペス脳炎、性器ヘルペス、角膜ヘルペス、ヘルペス性ひょう疸(手指に感染したもの)、新生児ヘルペスといった多様な疾患を引き起こします。

口唇ヘルペスに感染すると口の周りにピリピリ、チクチクとした違和感が現れます。その後、痛みを伴いながら患部が赤くなり水泡(水ぶくれ)ができます。そして、かさぶたになって治癒します。抵抗力が弱った際に再発しやすく、繰り返すことがあります。

口唇ヘルペスの原因

口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルスが唇の粘膜に感染することで起こる病気です。単純ヘルペスウイルスには1型と2型がありますが、口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型が原因のことがほとんどです。多くは乳幼児期に単純ヘルペスウイルスに初回感染し、その後、ウイルスが体の中の神経節(神経の途中で神経細胞が集まっているところ)に潜伏し生き続けており、風邪等の病気や発熱時、疲労、紫外線、ストレス、月経など免疫力が低下した時にウイルスが再活性化することで口唇ヘルペスが活性化し再発します。

口唇ヘルペスの症状がある時期は唾液や水疱の中に大量のウイルスが含まれていることがあり、感染経路はキスなど人と人との直接的な接触の他、食器やタオルなどの共用からも起こり、周囲に感染拡大する可能性があります。

口唇ヘルペスの症状

単純ヘルペスウイルスの初めて感染した場合(初感染)や、初感染後に体内に潜伏していたウイルスが再活性化し、再発した場合に皮膚や粘膜に小水疱やびらん等が生じます。初感染の場合、広範囲に大きさ5mm以内の水疱が多発します。発熱が生じたり、顎下や耳の周囲のリンパ腺が腫れたりすることもあります。年に数回程、再発することがありますが、再発した場合、口唇や口周囲の一部分に限局して発赤や水泡が出現し、軽症のことが多いです。

症状は時間経過に応じて、以下のように変化します。

  1. 前駆症状
    水泡が出現する前に、ピリピリ、チクチクとした痛みやムズムズとした違和感、かゆみ、ほてり等を感じることがあります。再発を繰り返している方はこの時点で口唇ヘルペスを発症することが分かることが多いです。

  2. 発赤時期
    ウイルスの増殖が活発な時期であり、前駆症状の出現後12時間程度で、口唇や口の周りの一部が赤くなり、その上に小さな水泡が出現します。患部には軽い掻痒感や熱感、疼痛などを感じます。

  3. 水泡形成期
    発赤が出現した後、2-3日程度経過すると水泡ができます。水疱は唇と皮膚の境界に見られることが多く、水泡内にはウイルスが大量に存在し、水泡が破裂した場合、接触すると感染する可能性があります。

  4. 回復期
    水泡はかさぶたになり、約10日~2週間程度で治癒します。

口唇ヘルペスの診断

口唇ヘルペスの診断及び治療はなるべく早い段階で開始することが望まれ、口唇ヘルペスを疑った場合、より専門的な加療を行うために皮膚科を受診することが勧められます。

口唇ヘルペスの診断は、視診により皮膚の病態を診て診断することが可能な場合がほとんどですが、帯状疱疹、アフタ性口内炎や毛嚢炎などの類似した症状が出現する疾患との鑑別が必要となります。

血液検査では体内にできた単純ヘルペスウイルスに対する抗体を測定することができますが、口唇ヘルペスの診断のためだけに血液検査をすることはあまり多くありません。血液検査では単純ヘルペスウイルスに対する抗体が作られたかどうかを調べることにより、単純ヘルペスウイルスに感染したか推定することが可能で、単純ヘルペスウイルスに初感染した際の診断に役立ちますが、再発時には使用できません。血液検査には2種類あり、初感染時とその2週間後の2回同じ血液検査を行って、体内のヘルペスウイルスに対するIgG抗体の量の増加率を調べて診断するペア血清という診断方法と、もう一つは感染初期に増加するヘルペスウイルスIgM抗体を測定する方法で、IgM抗体価が高ければ現在ヘルペスウイルスによる感染が起こっていると診断できます。
また、水泡からの浸出液を採取し、ヘルペスウイルスの抗原検査を行うことも可能です。

口唇ヘルペスの治療と予防

口唇ヘルペスの治療は、単純ヘルペスウイルスを増殖させないようにする治療が行われ、外用薬や内服薬が用いられます。軽症の場合、抗ヘルペス薬(アシクロビル、ビダラビン)の外用薬を用います。初感染や中等症の場合は、抗ヘルペス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の内服を行い、重症や免疫不全患者さんの場合は抗ヘルペス薬(アシクロビル、ビダラビン)の点滴静注を行います。

口唇ヘルペスの治療を行う際、症状が出現したら可能な限り早い時期に治療を開始するのが望ましいとされています。早期に治療を開始することで治りが早くなり、症状が悪化しにくくなるため、違和感をおぼえたら出来るだけ早く対処することが良いと思われます。抗ウイルス薬は皮膚や粘膜で増殖中のウイルスに対して効果を認めますが、潜伏期のウイルスには無効です。

ストレスや発熱、風邪、過労、日焼けなどで免疫力や体力が下がった時に再発することが多いため、適度な休養、規則正しい生活、バランスのよい食生活を心がけることが再発予防につながります。

<リファレンス>

日本皮膚科学会 ヘルペスと帯状疱疹
日本ウイルス学会誌 ウイルス「ヘルペスウイルス感染症の克服」 第53巻第1号 81-85 2003
南江堂 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン 2017 

おうち病院
おうち病院