またくるかも!?くりかえす口唇ヘルペスは、とにかく早めの治療を【医師にインタビュー】

不規則な生活が続いたり疲れがたまってくると、唇の周りにぷつぷつと出てくる口唇ヘルペス。何度も繰り返すものの、自然に治ってしまうのでやり過ごしている方も多いのではないでしょうか。口唇ヘルペスの症状や特徴、治療のポイント。併せて性器ヘルペスについても皮膚科の医師にお話を伺いました。取材をさせていただいたのは遠山先生です。

遠山真麻 皮膚科医、産業医。2012年日本医科大学卒業。大学病院、都内総合病院勤務を経て、現在は北海道へ移住し、クリニック勤務。一般の方向けの、皮膚科、メンタルヘルス領域の啓蒙活動にも注力している。

 

【目次】
口唇ヘルペスはどんな病気なのでしょうか
口唇ヘルペスの症状
口唇ヘルペスにかかりやすい人はいますか︖
早めに治療をはじめることが大切
患者開始治療(PIT:patient initiated therapy)について
うつさないために出来ることは
口唇ヘルペスの予防法、付き合い方
口唇ヘルペスと性器ヘルペスとは同じ病気?

口唇ヘルペスはどんな病気なのでしょうか

口唇ヘルペスは「ヘルペスウイルスによる感染症」のひとつで、顔や体の一部に水ぶくれができる病気です。
ヘルペスウイルスにはいくつか種類がありますが、身近な病気として「単純ヘルペスウイルス」による「単純ヘルペス」があります。「口唇ヘルペス」はこれに含まれます。


他に有名なものでは、「水痘帯状疱疹ウイルス」もヘルペスウイルスの仲間です。幼少期に水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると「水ぼうそう」を発症します。その後、体の中にウイルスが潜伏し続け、免疫力が落ちた時などに「帯状疱疹」を発症します。

口唇ヘルペスの症状

症状は時間経過とともに変化します。
まず、発疹が出る前に、ピリピリ・むずむずとした違和感や痛みのある方がいます。何度か口唇ヘルペスを経験している方は、この段階で気が付くことも多いです。

 

発疹は、唇や唇の周りの小さな水ぶくれとして現れます。水ぶくれの周りが赤くなることもあります。水ぶくれは次第に膿をもつようになったり、破れたりして、数日かけてかさぶたになります。患部が熱をもったり痛みを感じたりすることがありますが、基本的には軽症で、2週間程度で自然に治ることがほとんどです。

 

「単純ヘルペス」は、唇の周り以外に現れることもあります。「顔面ヘルペス」、「ヘルペス性角膜炎」、指先では「ヘルペス性ひょう疽」などと様々な呼び名があり、体のどこにでも現れる可能性があります。陰部にできる単純ヘルペスは「性器ヘルペス」と言い、これは性感染症の一種です。

 

また、基礎疾患にアトピー性皮膚炎があると、皮膚炎の上に水ぶくれが多発することがあり、「カポジ水痘様発疹症」と言います。基礎疾患の状態によって重症度は様々ですが、急速に、また広範囲に拡大するのが特徴です。

口唇ヘルペスにかかりやすい人はいますか︖

誰でもかかる可能性があります。
口唇ヘルペスの原因ウィルスである「単純ヘルペスウイルス」は、多くの方が一度は感染しているウィルスで、初感染は約90%で無症状です。
過去のデータですが、抗体保有率は1960年代に約90%、1980年代に約50%でした。社会環境の整備とともに、幼小児期に感染を受ける頻度が低下したことも分かっています。


単純ヘルペスに感染して、抗体を持った人が、必ず口唇ヘルペスを発症するならば、年齢が上がるにつれて患者数が増えることになりますが、感染して、抗体を持っていても、発症するのはごくわずかで、その証拠に、口唇ヘルペスの患者数は年齢別に一定数です。
 

現時点で単純ヘルペスの症状を経験したことのない方は、抗体を持っていないか、持っていても発症していないかのどちらかと言えますが、どのような方が発症しやすいかはわかっていません。
抗体保有率が低下してきているということは、成人で初感染を受ける可能性が以前より高くなってきているということです。
誰が、いつ、感染したり、発症したりしてもおかしくない病気と言えます。

 

ウィルスは一度感染すると、口唇ヘルペスの症状が出ていない時でも、体内の三叉神経節という場所に潜んでいて、免疫力が下がった時などに再活性化します。
例えば、風邪をひいた時、熱が出た時、疲労、ストレスなどです。強い紫外線、睡眠不足、暴飲暴食、女性であれば月経などもきっかけになることがあります。
増殖したウイルスは、神経を伝わって皮膚・唇付近に到達し口唇ヘルペスを発症します。

早めに治療をはじめることが大切

治療は、できるだけ早めに開始します。
プツプツが出現してから5日以内という目安がありますが、可能ならばもっと早い方が良いです。
単純ヘルペスは基本的に軽症で、発症後、2週間程度で自然に治るものですが、治療の目的は期間の短縮、軽症化です。治りかけているものを治療する意味はあまりありません。口唇ヘルペスの治療のポイントは、とにかく早く治療を開始することです。

 

口唇ヘルペスの治療薬には、飲み薬と塗り薬があり、医師が症状の程度や治療開始のタイミングなどを考慮して処方します。比較的早期で、しっかりと症状のある方には、より効果の高い飲み薬をおすすめします。

患者開始治療(PIT:patient initiated therapy)について

口唇ヘルペスには、「患者開始治療」という選択肢があります。
口唇ヘルペスを繰り返す患者さんへ、次の再発に備えて前もって薬を処方し、患者さんの判断で治療を開始する治療法です。
処方するには、再発の頻度や、初期症状に気づくことが出来るかどうか、などの一定の条件を満たす必要がありますが、概ね年に3回以上繰り返している方は、医師に相談してみてください。

 

症状が出ていない期間も薬を持っておくことが、安心感にもつながります。
口唇ヘルペスは、時間が経てば自然に治るので、皮膚科を受診しない方も多くいらっしゃいます。しかし、今はこのような治療法もあるので、再発を繰り返している方は特に、皮膚科への相談をおすすめします。

うつさないために出来ることは

単純ヘルペスウイルスは、直接的な接触でうつります。
口唇ヘルペスを発症している間は、できるだけ患部を触らないようにしましょう。触った時は手をよく洗いましょう。また水ぶくれを破らないようにしましょう。タオルやコップを介して感染することもあるため、共有しないようにするのも重要です。

 

実はヘルペスウィルスは、症状がでていない間も分泌されていて、これを無症候性排泄と言います。この点で、特に家庭内において、ヘルペスウィルスの感染を完全に防ぐことは難しいかもしれません。ただ、先ほどお話した通り、多くの方がすでに感染している可能性があること、感染=発症ではないこと、発症しても多くの場合軽症なことなどから、あまり神経質になる必要はないと言えます。

口唇ヘルペスの予防法、付き合い方

残念ながら、体内の単純ヘルペスウイルスを追い出すことはできませんが、増殖させないよう、うまく付き合っていくことはできます。


単純ヘルペスウイルスが活発になるのは、体の抵抗力が落ちる時です。
疲れると口唇ヘルペスになることが多いと感じている方は、無理のない生活を心掛けましょう。人によって出やすいきっかけやタイミングなどがあると思います。どんな時に口唇ヘルペスになりやすいのか?ご自分の体の傾向を知っておくことが大事です。
口唇ヘルペスが出た時には、早めに飲み薬を服用する、または塗り薬を塗るなど、自分にあう対処法を知っておけば怖い病気ではありません。


これまでにかかった事がない方も、発症する可能性はあります。口唇ヘルペスの特徴であるピリピリとした痛みなどを唇の周りに感じたり、水ぶくれを見つけたりしたら、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
とにかく早めの対処が肝心です。

口唇ヘルペスと性器ヘルペスとは同じ病気?

どちらも単純ヘルペスウイルスの感染によって起こります。単純ヘルペスウイルスには 1型と 2 型があり、多くの口唇ヘルペスは 1 型、性器ヘルペスは 2 型が原因で発症します。
口唇ヘルペスに性差がないのに対し、性器ヘルペスは女性が男性の約2倍頻度が高いです。

 

性器ヘルペスの場合も、性器やその周り、おしりに痛みをともなう水ぶくれができます。初感染は重篤なことが多く、激しい痛みを伴います。腫れと痛みで排尿困難になることもあります。なお、男性よりも女性の方が症状は重いです。

 

さらに、特に妊娠中に性器ヘルペスを発症した際は注意が必要です。
お腹の中の胎児に影響はありませんが、出産で赤ちゃんが産道を通る際にウイルスに触れて感染し、「新生児ヘルペス」を起こす可能性があります。リスクが高い場合は、帝王切開を行うことで赤ちゃんへの感染を防ぎます。

 

口唇ヘルペスも性器ヘルペスも、一度感染をすると完治が難しい点や、抵抗力が落ちるタイミングで再発を繰り返す点は共通しています。抵抗力が落ちるのを避けるようにする、発症した場合には早めに治療をし、体内のウイルスの増殖を抑えることが大切です。

また、性器ヘルペスは、口唇ヘルペスよりも痛みが強く出る傾向にあるため、辛く感じている方も多いのではないでしょうか。性器ヘルペスの治療法には、症状のないときも日常的に薬を飲む選択肢もあります。

 

口唇ヘルペス、性器ヘルペスどちらもウイルスに感染しているにもかかわらず症状が出ない事も多いため、完全に感染を防ぐことは難しく、だれが発症しても不思議ではありません。
「一度もかかったことがないから、私は大丈夫」と思わずに、気になる症状があれば早めに医師へ相談をすることをおすすめします。

【参考資料】
安元慎一郎, 玉置邦彦,他編:単純性疱疹 最新皮膚科学大系(第 15 巻): 8-19 (2003)
今福信一:帯状疱疹と単純ヘルペス:最近の話題 Visual Dermatology Vol.21 No.10:979-982(2022)
今福信一:単純ヘルペスの治療up-to-date MB Derma ,297:46-52(2020)

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