不妊症|clila疾患情報

【目次】
1.不妊症とは
2.不妊症の原因
3.不妊症の疫学的整理
4.不妊症の診断
5.不妊症の治療
6.不妊症の相談目安
7.不妊治療の病院選び

 

1.不妊症とは

不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで夫婦生活を行っているにもかかわらず、一定期間妊娠しない場合を指します。一般的に、妊孕能(にんようのう:妊娠する力)の正常なカップルでは、3ケ月で約50%、6ケ月で70~80%、1年で約90%が妊娠します。「一定期間」について1年とするのが一般的であると定義されています。

 

2.不妊症の原因

男女それぞれ由来の原因があり、女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(一部の子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)、頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。

 

3.不妊症の疫学的整理

「子どもを持ちたい」希望がありながら、なかなか妊娠しないカップルは、全体の5~10%と言われています。世界中の過去の調査を2007年にまとめた報告では、不妊症の比率は、調査された時代や国により1.3%から26.4%に分布し、全体では約9%と推定しています。

 

4.不妊症の診断

不妊症カップルの50%程度で男性側に原因もあるとされており、女性だけではなく男性不妊の原因検索は治療方針の決定に重要で、婦人科と泌尿器科が連携して診療することが推奨されています。

(1)女性側

<一般的な検査>

内診・経腟超音波検査は、産婦人科診察室の診察台(内診台)の上で行う検査で、子宮・卵巣を産婦人科的に診察しておして痛いところがあるかどうかを見るとともに、直径約2 cmの超音波プローブを腟から挿入して子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。
子宮卵管造影検査は、X線による透視をしながら子宮口から子宮内へ造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを見る検査です。少し痛みをともなう検査ですが、検査後、6カ月程は妊娠率が高くなることが知られています。
血液検査では、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関係する検査を行います。ホルモン検査の中には、女性ホルモン・男性ホルモンや卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン・黄体ホルモンが含まれますが、その他にも母乳を分泌するプロラクチンや甲状腺ホルモンの検査も行います。ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体期などに分けて検査します。

<必要に応じて受ける特殊な検査>

腹腔鏡検査・子宮鏡検査では、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などの不妊原因がわかることがあります。また、卵巣嚢腫や子宮筋腫などが見つかった場合には切除することが可能で、多嚢胞性卵巣症候群の治療(卵巣開孔術)を行うこともできます。子宮鏡検査は、卵が着床する場所を直接観察する検査で、麻酔をかけずに行うことが多いため外来で行うこともできます。この検査で、ポリープや筋腫などの腫瘍性病変や内腔の癒着などを確認することができます。MRI検査では、子宮筋腫や子宮内膜症病変、卵管水腫など不妊原因となる疾患も見つけることができます。

(2)男性側

<一般的な検査>

精液検査と、泌尿器科的な検査に分けられます。精液検査は、受診された方のほとんどが受ける一般的な検査です。泌尿器科的な検査は、診察・エコー検査・採血など短時間で簡単にできるので、不妊治療を標榜している婦人科もしくは泌尿器科で並行して行うことをお勧めいたします。

(a)精液検査

精液量、精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無などを検討します。精液は、2-7日の禁欲期間の後に、用手法で全量を採取します。男性の精液性状は日に日に変動するため、悪い結果が出た場合でも、再検査の値が正常であれば問題がないとされる場合もあります。

精液検査の基準値

検査項目

下限基準値

精液量

1.4ml以上

精子濃度

1600万/ml以上

総精子数

3900万/射精以上

前進運動率

30%以上

総運動率

42%以上

正常形態率

4%以上

生存率

54%以上

 *WHOラボマニュアルーヒト精液検査と手技-第6版(2021年)より

(b)泌尿器科的検査

問診では、不妊症に関連する病気の既往の有無、勃起や射精などの現在の性生活の状況を確認します。精巣などの外陰部の診察、精巣サイズの測定、男性不妊症の原因として最も頻度の高い精索静脈瘤の有無などを触診で行います。超音波検査は、超音波のプローブを当てて陰嚢・精索・精巣を観察し、精索静脈瘤の診断に最も有用で簡便な方法です。
*精索静脈瘤:精液所見の悪化、精子のDNA損傷(流産や人工授精・体外受精などの不成功の原因)、陰嚢痛や違和感、男性ホルモンの低下などの原因になります。適切な治療を行えば改善の可能性が高い疾患です。
血液検査では、男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、プロラクチンなどの濃度を調べます。これによって精液異常、勃起障害や射精障害などの原因検索、精子数が極端に少ないまたは無精子症の場合には、染色体検査や遺伝子検査(AZF検査;Y染色体微小欠失)を行います。

<特殊な検査>

精子の機能を調べる検査、精嚢や射精管の形態を調べるMRI、精巣での精子形成の状態を詳しく調べる精巣生険、勃起能力を調べる検査などが、状態に応じて行われます。

 

5.不妊症の治療

不妊治療は、タイミング療法、人工授精、体外受精の大きく3つに分かれます。これらの治療に並行して、妊娠しやすくするための生活指導やサプリメント・漢方薬などの内服治療、排卵誘発剤の使用などが必要に応じて行われます。

a)タイミング療法

基礎体温や超音波検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的に夫婦生活をもつタイミングの指導を受け、自然妊娠の可能性を高める方法です。年齢など個々の条件も考慮をする必要がありますが、不妊検査の結果、きちんと排卵があり、精液所見に問題がなければ、まずはタイミング療法から治療をスタートします。

b)人工授精

人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて、採取した精子をあらかじめ質の高い精子に精製し、子宮内に精子を直接注入する方法です。それまでに不妊治療の経験がない方がタイミング療法を行い、妊娠にいたらない場合に、次のステップである人工授精に選択されることが多いです。

c)体外受精

体外受精とは、採卵で体外に取り出した卵子と精子を体外で共存させることよって得られた受精卵を培養し順調に発育した卵(胚)を子宮内に移植する方法です。人工授精で妊娠にいたらない場合、また、精子の量が極端に少なかったり、女性側の卵管が両方とも閉塞していたりする場合などに選択される治療法です。受精の方法の違いによって以下の2つの方法があります。

①標準体外受精

採取した卵子と精子をシャーレという容器に入れ、受精させます。シャーレの中で精子と卵子を一緒にして受精する環境にする方法であり、精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。

②顕微授精

標準体外受精でも妊娠にいたらない場合、さらに上のステップとして、顕微鏡で確認しながら精子を卵子に針で直接注入する顕微授精という方法が選択されることもあります。

 

6.不妊症の相談目安

子供を授かりたいと思って、気になった段階での受診をお勧めします。おふたりの状態によっては、食生活の見直しやサプリメントによる体質改善の治療から始まることもあります。不妊症の定義にあるように一定期間(1年以上)待っている間にも、上記治療は並行して始められるのでなるべく早期に受診されるのが良いでしょう。

 

7.不妊治療の病院選び

検討されている不妊治療病院が複数ある場合は、通院のしやすさ(アクセス、診療時間など)や病院の治療方針、費用や料金体系、男性不妊外来の有無、医師との相性、病院の規模、評判、治療実績などの観点から病院を選ぶことをお勧めしいたします。病院やクリニックによってはメインで行っている治療が異なるためおふたりのお考え、治療段階に合った医療機関を選ばれるとよいでしょう。通院できる範囲に選択肢があまりない場合は、不妊の検査等の初期の診療では病院によって大差がないため、診療時間やご自宅や勤務先からのアクセスが良い通院しやすい病院を選ぶのが良いと思います。

 

久保田 英里循環器内科医国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

*不妊治療の病院選びについての詳細
【内科女医が語る】不妊治療の種類と妊娠しやすい病院選び
https://search.anamne.com/columns/infertility_treatment

 

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