【内科女医が語る】不妊治療の種類と妊娠しやすい病院選び

【目次】
1.妊娠のメカニズム
2.不妊症とは
3.不妊症の原因
4.不妊治療の病院を受診するタイミング
5.不妊症の検査
6.不妊治療の種類
7.不妊治療病院の種類
8.不妊治療の病院選びの際に重視する点
9.不妊治療の病院選びのためのチェックリスト
10.まとめ

 

赤ちゃんが欲しいのになかなか授からない。不妊治療はいつくらいから受ければよいのか、病院はどう選べばよいのかと悩んで、なかなか一歩を踏み出せない方も多いと思います。

そこで今回は不妊治療の種類やそれぞれの病院の特色など、例を挙げながら不妊治療の病院選びに役立つポイントを解説させていただきます。

 

1.妊娠のメカニズム

女性の卵子と男性の精子が出会って妊娠することから赤ちゃんの生命が始まります。そのプロセスは以下の通りです。

『卵子・精子の成熟』『排卵・射精』『卵子・精子の卵管膨大部への移動』『受精』『受精卵が子宮に移動』『子宮内膜に着床』『正常な発育』

上記のプロセスがすべてうまくいって妊娠に至ります。

 

2.不妊症とは

不妊症とは、「妊娠を望む健康なカップルが避妊せずに性交しているにもかかわらず、1年間妊娠しない状態」を指します。 (日本産科婦人科学会の定義より)

一般的に、妊孕能(にんようのう:妊娠する力)の正常なカップルでは、3ケ月で約50%、6ケ月で70~80%、1年で約90%が妊娠します。

 

3.不妊症の原因

先述した妊娠のプロセスのどこかに問題があったり、精子と卵子が出会うタイミングがずれていたりすると、妊娠には至りません。具体的には、排卵、子宮、卵巣、妊娠に関するホルモン分泌、精子をつくる機能、卵子・精子が通る経路、精子に対する抗体、性機能などに問題がある場合、不妊症の状態になります。

 

4.不妊治療の病院を受診するタイミング

まず妊娠を希望されている場合は基礎体温表をつけていただくといいと思います。ある程度の排卵日を予測することはできますが、ご自身の思っているタイミングと実際の排卵日が異なっているケースや、他の原因があり妊娠しないことがあります。

妊娠するまでの間、努力されている間にも年齢は重なっていきます。そのときになって初めて原因がわかって治療を開始するよりも、なるべく早い段階で原因の有無がわかった方がより早く適切な対処ができると考えますので、なるべく早期に不妊症の検査を行っている病院(産婦人科)を受診していただく方がよいと思います。

 

5.不妊症の検査

不妊症の検査とは、妊娠や出産に影響を与える異常や病気がないか、赤ちゃんへ感染する病気をもっていないかどうかなどの検査で、検査内容や料金は病院によっても異なりますが、男性の性感染症検査や精液検査などを含む、おふたりで受けられるプランがある場合もあります。

このような不妊の検査は「ブライダルチェック」という名目でも受けられますので、なるべく早いタイミングで、おふたりでお受けいただくとよりよいと思います。

 

6.不妊治療の種類

不妊治療にはタイミング療法、人工授精、体外受精の大きく3つに分かれ、病院によってそれぞれメインで行っている治療法が異なっています。

  1. タイミング療法

基礎体温や超音波検査などを参考にしながら排卵日を予測し、効果的に夫婦生活をもつタイミングの指導を受け、自然妊娠の可能性を高める方法です。

年齢など個々の条件も考慮をする必要がありますが、不妊検査の結果、きちんと排卵があり、精液所見に問題がなければ、まずはタイミング療法から治療をスタートします。

  1. 人工授精

人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて、採取した精子をあらかじめ質の高い精子に精製し、子宮内に精子を直接注入する方法です。

それまでに不妊治療の経験がない方がタイミング療法を行い、妊娠にいたらない場合に、次のステップである人工授精に選択されることが多いです。

  1. 体外受精

体外受精とは、採卵で体外に取り出した卵子と精子を体外で共存させることよって得られた受精卵を培養し順調に発育した卵(胚)を子宮内に移植する方法です。

人工授精で妊娠にいたらない場合、また、精子の量が極端に少なかったり、女性側の卵管が両方とも閉塞していたりする場合などに選択される治療法です。受精の方法の違いによって以下の2つの方法があります。

標準体外受精

採取した卵子と精子をシャーレという容器に入れ、受精させます。シャーレの中で精子と卵子を一緒にして受精する環境にする方法であり、精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。

顕微授精

標準体外受精でも妊娠にいたらない場合、さらに上のステップとして、顕微鏡で確認しながら精子を卵子に針で直接注入する顕微授精という方法が選択されることもあります。

上記の治療に並行して、卵子や精子の状態をよくするための生活指導やサプリメント・漢方薬などの内服治療、排卵誘発剤の使用を必要に応じて行います。

 

7.不妊治療病院の種類

不妊治療病院の種類は大きく3つに分けられます。

大学病院・総合病院

不妊関連の手術を受けられる
       合併症や救急入院対応も可能

産婦人科医院(個人病院)

自宅や会社の近くで見つけやすい
       不妊症もみてもらえるが、不妊症に力をいれているかどうかは病院による

不妊治療専門クリニック

不妊治療について詳しい医師がいて、体外受精・顕微授精など専門的な治療ができる
        都市部に集中していて自費診療が多く、料金の負担が大きい場合がある
        診療時間が柔軟、男性の外来を行っている場合もある
        妊娠後の妊婦健診は転院が必要なことが多い

などの特徴がそれぞれあります。

 

8.不妊治療の病院選びの際に重視する点

もしいくつか検討している不妊治療病院があれば、通院のしやすさ(アクセス、診療時間など)や病院の治療方針、費用や料金体系、男性不妊外来の有無、医師との相性、病院の規模、評判、治療実績などの観点から病院を選ぶのがよいでしょう。

<通院のしやすさ>

不妊治療は一般的に、月経周期に合わせて、1か月に複数回受診をする必要があります。仕事をしながら通院する場合、休みを多くとらなくてはならない状況になりますと心身ともにストレスがかかります。そのため、自宅や職場からアクセスがよく、早朝や夜間、土日対応をしている病院の方がストレスなく通いやすい病院といえます。また2人目以降の妊活をしている方向けに託児施設を備えている病院もあります。

<病院の治療方針>

不妊治療の選択肢を幅広く揃えている病院では、それぞれの治療による「妊娠率」と「通院の手間」、「費用」を医師が比較検討して、おふたりの現在の状況に最も適した治療を提案してくれます。

一方、自然妊娠、タイミング療法、人工授精、体外受精(自然周期、排卵誘発剤による低刺激~高刺激法)などのいずれかにフォーカスして、治療方針を打ち出している病院もあります。その病院の特色に沿った治療法のみ、強くお勧めされる可能性もありますので少し注意が必要です。

<費用や料金体系>

通常は採卵や胚移植など、治療の度に費用がかかるのですが、成功報酬制度や定額制度を取り入れているところもあります。成功報酬制度の場合、年齢などの諸条件をクリアする必要がありますが、採卵、胚移植、妊娠などが成功しなかった場合には費用が抑えられるというメリットがあります。費用や料金体系は病院によって異なりますので病院選びの際のポイントの1つになります。

<男性不妊外来の有無>

不妊治療病院で行った精液検査で、男性側に不妊の原因が判明した場合は、泌尿器科で治療可能な精索静脈瘤などの原因がないかどうか、男性不妊外来や生殖医療を専門としている泌尿器科を受ける必要がでてきます。もし通院中の病院で詳しい検査を受けられない場合は、そういった病院をご自身で探してさらに詳しい検査を受けることも重要です。

<病院の規模>

総合病院など大規模な病院では

  1. 不妊関連(卵巣や子宮、卵管など)の手術を受けられる
  2. 甲状腺や糖尿病など内科的な異常があった場合、専門の科と連携してもらえる
  3. 妊娠後もそのまま出産まで診てもらえる
  4. 不妊治療から分娩に至るまで何か緊急なことが起こった場合でも夜間・休日、入院の対応をしてもらえる
  5. 診察する医師が毎回変わることが多い

などの特徴があります。

また小規模の病院やクリニックでは、不妊治療の種類が限られている場合がありますので、まず初めに不妊の原因を調べようと思われている場合や、おふたりが現在希望されている治療を行っている病院であるとわかっている場合の受診がお勧めとなります。

<病院の治療実績>

病院のホームページや勉強会で治療実績に関する情報を得られる場合があります。他の病院と比較し、治療実績のある病院であるかどうかを知ることも参考になると思います。

<医師との相性>

不妊治療はそれぞれ妊娠率や通院の手間、費用などを考慮しながら決めていきます。

専門的知識や技術力はさることながら、ご自身の希望をよく汲んでくださるような医師が主治医であることがより良い不妊治療を選択するにあたって重要になってきます。

また医師以外にも看護師や胚培養士など多職種と相談できる病院もありますので、そういった相談室も活用されるとよいと思います。

<病院の評判>

友人や知人から評判を聞くことや、Googleなどインターネット上の口コミをよむことで、病院受付・スタッフ・医師の過去の対応をうかがい知ることができます。

またその病院で治療を卒業した方の声などをまとめて読めるようにノートなどが置いてある場合もあるのでそういったものも参考になると思います。でも決して1つの情報源だけを100%信じることはせず、必ずいくつか情報を見比べてみてからご参考にしてみてください。

 

9.不妊治療の病院選びのためのチェックリスト

不妊治療の病院を選ぶときには以下のようなポイントをご参考にしてみてください。

  • アクセス、診療時間など通院のしやすさ
  • 病院の治療方針
  • 費用や料金体系
  • 男性不妊外来の有無
  • 病院の規模
  • 病院の治療実績
  • 医師との相性
  • 病院の評判

病院ホームページを閲覧したり、病院の勉強会に参加したりすることでより多くの情報を集めてみましょう。実際に勉強会に行くと病院内の雰囲気、病院スタッフの対応なども知ることができます。

 

10.まとめ

もし通院できる範囲に病院が少ないようであれば、まずはアクセスや診療時間などで通院しやすい病院を選ぶのが良いと思います。それは不妊の初期診療では病院によって大きな差はないことが多いのが理由です。

何回か通院してく中で、「別の治療法も試してみたい」「なかなか妊娠しないけどこのまま今の病院のままでいいのかな?」など思ったときには、主治医の変更や転院をご検討されるとよいでしょう。

主治医の先生に遠慮をされる必要はありませんので、ご自身の納得のいくような病院の選択をしていただけたらと思います。以上お読みいただきまして、少しでも不妊治療の病院を選びの際にお役に立てましたら幸いです。

 

久保田 英里 循環器内科医 
国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

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