クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群|clila疾患情報

【目次】
1.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは
2.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の原因
3.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の疫学的整理
4.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の症状
5.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の診断
6.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の治療
7.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の予後
8.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の日常生活の注意点

 

1.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、①地図状のポートワインステイン(赤アザ)、②拡張した蛇行静脈、リンパ管機能不全による腫脹、③上肢・下肢の大きさに左右差が生じる片側肥大を主な症状とする疾患です。混合型脈管奇形に片側肥大症を伴うもので、混合型脈管奇形は胎生期における脈管形成の異常で、複数の脈管成分(動脈・静脈・毛細血管・リンパ管)を有し、拡張・蛇行又は集簇した異常脈管の増生を伴うため、四肢の大きさや形に左右差が生じます。
これらの症状は生下時から幼児期に気づかれ、加齢・成長に伴って増悪します。片側肥大はほとんどが脈管奇形と同側に生じますが、まれに対側に生じることもあります。脈管奇形は病変を構成する脈管成分によって、毛細血管奇形、静脈奇形、動脈奇形(動静脈奇形、動静脈瘻)、リンパ管奇形に分類されています。脈管成分ごとに脈管の太さ、脈管のネットワークの形状、病変部に流れる液体(血液またはリンパ液)の流速、が大きく異なるため、その病状も大きく異なります。また、脈管奇形は多臓器にまたがり、びまん性に分布し、強い疼痛や潰瘍は難治性となります。凝固線溶系や血行動態にも影響を及ぼし、感染、出血や心不全などにより死に至ることもあります。
病的過成長に対する根治的治療法はなく、骨軟部組織の肥大・過剰発育に対しては、下肢補高装具の使用や外科的矯正手術、病変切除などの減量手術などが行なわれます。脈管奇形に対しては、どの脈管の病変によるかで治療が異なります。弾性ストッキングによる圧迫、切除手術、硬化療法、塞栓術などが行われますが、治療には抵抗性であることが多く、生涯にわたる継続的管理を要します。

 

2.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の原因

脈管奇形は先天性であり、胎生期における脈管形成異常により生じると考えられています。原因は明らかではありませんが、その一部として遺伝子変異が発見されています。家族内発生の報告はありますが、非常にまれです。四肢の肥大などの病的過成長の原因は不明で、骨軟部組織の先天的要因によるのか、脈管奇形による二次的変化なのか不明です。

 

3.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の疫学的整理

まれな病気であり、日本での患者数は約3,000人と推測されています。発症率に男女差はありません。初期は無症状のこともあり、症状を呈する半分以上は5歳未満で発症します。

 

4.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の症状

四肢のうち一肢またはそれ以上のほぼ全体にわたる混合型脈管奇形と片側肥大が、生下時ないしは幼児期に気づかれ、加齢・成長に伴って増悪します。混合型脈管奇形の症状には地図状のポートワインステイン、拡張した蛇行静脈、リンパ管機能不全による腫脹があります。片側肥大はほとんどが脈管奇形と同側に生じますが、まれに対側に生じることもあります。合指(趾)症や巨指(趾)症などの指趾形成異常を合併することもあります。脚長差が高度になると跛行や代償性脊椎側彎症をきたします。疼痛、腫脹、潰瘍、発熱、感染、リンパ漏、出血、変色など、各脈管奇形の症状を呈することがあります。
本症候群の脈管奇形は、多臓器にまたがり辺縁不明瞭でびまん性に分布し難治性であり、感染や出血を頻繁に繰り返します。血栓の形成と融解が繰り返しおこるため四肢の循環状態がそのたびに変わり、不定期に症状の増悪寛解 を繰り返すことがあります。本症候群の脈管奇形は、病状が進行した場合に血液の凝固機能や血行動態にも影響を及ぼし、感染、出血や心不全などにより致死的な病態に至ることもあります。

 

5.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の診断

超音波検査・MRI・血管造影などの画像検査では多彩な所見を示すため、通常は臨床所見によって診断されますが、脈管奇形は各種検査による確認が必要です。毛細血管奇形、静脈の異常、一肢の骨・軟部組織の片側肥大が古典的三徴ですが、静脈異常は小児期には明らかでないことも多くあります。
脈管奇形は軟部・体表などの血管あるいは、リンパ管の異常な拡張・吻合・集簇など構造の異常からなる病変で、病変の脈管成分によって理学的所見や画像所見が異なります。各奇形の診断根拠となる所見は以下の通りです。


(1)動脈奇形の診断

1)理学的所見

血管の拡張や蛇行がみられ、拍動やスリル(シャントによる振動)を触知し、血管雑音を聴取する。

2)画像検査

所見超音波検査、MRI検査、CT検査、動脈造影検査のいずれかにて動静脈の異常な拡張や吻合を認め、病変内に動脈血流を有する。

3)病理所見

明らかな動脈、静脈のほかに、動脈と静脈の中間的な構造を示す種々の径の血管が不規則に集簇している。中間的な構造を示す血管の壁では弾性板や平滑筋層の乱れがみられ、同一の血管のなかでも壁の厚さはしばしば不均一である。また、毛細血管の介在を伴うこともある。

(2)静脈奇形の診断

画像検査上病変を確認することは必須。2の画像検査所見のみでは質的診断困難な場合、1あるいは3を加えて診断される。

1)理学的所見

腫瘤状あるいは静脈瘤状であり、表在性病変であれば青色の色調である。圧迫にて虚脱する。四肢病変は下垂あるいは駆血にて膨満し、拳上あるいは駆血解除により虚脱する。血栓形成の強い症例などでは膨満や虚脱の徴候が乏しい場合がある。

2)画像検査所見

超音波検査、MRI検査、血管造影検査(直接穿刺造影あるいは静脈造影)、造影CTのいずれかで、拡張又は集簇した分葉状、海綿状あるいは静脈瘤状の静脈性血管腔を有する病変を認める。内部に緩徐な血流がみられる。内部に血栓や石灰化を伴うことがある。

3)病理所見

拡張した血管の集簇がみられ、血管の壁には弾性線維が認められる。平滑筋が存在するが壁の一部で確認できないことも多い。成熟した血管内皮が内側を覆う。内部に血栓や石灰化を伴うことがある。

(3)リンパ管奇形の診断

生下時から存在し、以下の1ー4)の全ての所見を認め、かつ5)の(a)、(b)又は(c)を満たす病変。

1)理学的所見

圧迫により変形するが縮小しない腫瘤性病変を認める。

2)画像所見

超音波検査、CT、MRI等で、病変内に大小様々な1つ以上の嚢胞様成分が集簇性もしくは散在性に存在する腫瘤性病変として認められる。嚢胞内部の血流は認めない。

3)嚢胞内容液所見

リンパ(液)として矛盾がない。

4)除外事項

奇形腫、静脈奇形(海綿状血管腫)、被角血管腫、他の水疱性・嚢胞性疾患等が否定されること

5)補助所見

(a)理学的所見
  • 深部にあり外観上明らかでないことがある。
  • 皮膚や粘膜では丘疹・結節となり、集簇しカエルの卵状を呈することがあり、ダーモスコピーにより嚢胞性病変を認める。
  • 経過中病変の膨らみや硬度は増減することがある。
  • 感染や内出血により急激な腫脹や疼痛を来すことがある。
  • 病変内に毛細血管や静脈の異常拡張を認めることがある。
(b)病理学的所見

肉眼的には、水様ないし乳汁様内容液を有し、多嚢胞状又は海綿状割面を呈する病変。組織学的には、リンパ管内皮によって裏打ちされた大小さまざまな嚢胞状もしくは不規則に拡張したリンパ管組織よりなる。腫瘍性の増殖を示す細胞を認めない。

(c)嚢胞内容液所見

嚢胞内に血液を混じることがある。
毛細血管奇形とは、いわゆる赤あざであり、従来単純性血管腫、ポートワイン母斑などと呼称されている病変であり、皮膚表在の毛細血管の先天性の増加、拡張を認め、自然消褪を認めない病変をさす。

(4)鑑別診断

鑑別診断として、血管あるいはリンパ管を構成する細胞等に腫瘍性の増殖がある疾患(イチゴ状血管腫、血管肉腫など)や明らかな後天性病変(一次性静脈瘤、二次性リンパ浮腫、外傷性・医原性動静脈瘻、動脈瘤など)を除外する。

 

6.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の治療

病的過成長に対する根治的治療法はなく、骨軟部組織の過剰発育に対しては、下肢補高装具や外科的矯正手術(骨端線成長抑制術、骨延長術)が行われます。治療の適応や時期などについては個々の患者の状態によります。軟部組織の肥大については病変切除などの減量手術などが行なわれるが、病変はび慢性であり完全切除は不可能です。
脈管奇形に対してはその構成脈管により治療は異なります。弾性ストッキングによる圧迫、切除手術、硬化療法・塞栓術、レーザー照射などが用いられますが、本症候群の巨大脈管奇形病変はこれらの治療に抵抗性であることが多く、疼痛・感染・出血・凝固能異常などに対する対症療法を含めて生涯にわたる継続的管理が必要となります。

 

7.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の予後

強い疼痛(関節痛)、繰り返す局所または四肢の感染(蜂窩織炎)、繰り返す出血、凝固能異常、歩行障害、整容障害などが問題となります。
成長と共に病変は増大する傾向にあり、成人後も症状は進行します。塞栓術・硬化療法、切除術により、症状が改善することもありますが、治癒は困難です。病変が一肢全体に及び治療が困難な場合、四肢などの機能・形態異常が進行すると社会的自立が困難となりえます。皮膚潰瘍は難治性であり、感染を繰り返す場合や動脈性出血を認める場合は命に関わることもあります。

 

8.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の日常生活の注意点

脈管奇形全般において、①体重増加に伴って身体全体の血液量が増えたとき、②患部の血液の流れがうっ滞した場合、③感染を合併し急に病変が大きくなったりした場合、病状が悪化することがあります。暴飲暴食を避け体重をコントロールする、性交時避妊を心掛け意図しない妊娠を避ける、適度に水分を摂取し脱水状態を避ける、弾性ストッキングを装着する、長時間足を動かさず同じ姿勢を維持することを避ける(長時間座るときは適度に足を動かす)、便秘を回避し長時間トイレでいきむことは避ける、患部の清潔を保つ、患部皮膚の保湿を心掛ける、通勤や通学などで長時間の歩行するときは運動靴を履く、などが注意点として挙げられます。

 

永井 弥生 皮膚科医皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

<リファレンス>

血管腫・血管奇形診療ガイドライン2017
http://www.marianna-u.ac.jp/va/files/vascular%20anomalies%20practice%20guideline%202017.pdf#view=FitV

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群 小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/html/detail/16_01_004.html

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群 難病情報センター 指定難病281
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4600

 

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