リンパ脈管筋腫症|clila疾患情報

【目次】

1.リンパ脈管筋腫症とは
2.原因
3.症状
4.画像検査
5.診断
6.予後
7.治療
8.気胸の治療

 

1.リンパ脈管筋腫症とは

 リンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis; LAM)は主に妊娠可能な年齢の女性に発生する稀な腫瘍性疾患で、肺の進行性嚢胞化、乳糜胸や乳糜腹水、腎臓の血管脂肪腫を生じます。LAMは単独で生じること(sporadic LAM)も、結節性硬化症(tuberous sclerosis complex; TSC)の一部として生じること(TSC-LAM)もあります。肺リンパ脈管筋腫症では平滑筋に似た特徴を持つLAM細胞が、肺胞、細気管支、血管、腎臓、リンパ管周囲に過誤腫性に増殖します。また、縦隔、後腹膜、骨盤腔の各リンパ節にもLAM細胞の増殖を認めることもあります。

 

2.原因

 LAMは結節性硬化症(TSC)遺伝子の異常により生ずる一種の腫瘍性疾患です。TSC遺伝子にはTSC1(第9染色体)とTSC2(第16染色体)の2種類があります。TSC-LAMはTSC1あるいはTSC2のどちらの異常でも発生しえますが、sporadic LAMはTSC2異常により発生します。TSC遺伝子異常により形質転換してLAM細胞は、遊走・転移して、リンパ節や肺にびまん性、非連続性の病変を形成すると考えられています。

 

3.症状

 主な症状は肺病変によって出現します。初発年齢は平均30歳で主症状は気胸と労作時呼吸困難です。また、リンパ路の閉塞により乳糜胸や乳糜腹水、乳糜尿を認めることもあります。進行すると低酸素血症、呼吸不全を呈しますが、炭酸ガス貯留は認めることは少なく、呼吸機能検査では閉塞性換気障害を認め拡散能の低下を伴うことが多いです。また、妊娠時に増悪することが報告されています。肺リンパ脈管筋腫症の肺外病変として約半数に腎血管筋脂肪腫を合併します。腎血管筋脂肪腫を有する女性では本症の合併を念頭において胸部CTを撮影するべきと考えられます。

 

4.画像検査

 胸部X線写真で過膨張を呈し、網状影や嚢胞性変化を認めることが多く、これらは下肺野優位の傾向があります。胸部CTでは特徴的な両肺びまん性に分布する数ミリから30mm大の薄壁の小嚢胞を認め、診断に有用です。他のCT所見として浸潤影、すりガラス陰影、小葉辺縁性の結節、肺静脈の腫大、小葉間間質の肥厚、胸膜の結節状の肥厚像などが認められることがあります。

 

5.診断

 特徴的な病理組織所見は肺胞壁、胸膜、肺脈管系に沿ってLAM細胞が不連続性に増殖し、末梢気腔の破壊による嚢胞形成が認められます。HMB45(メラノソームに対する特異抗体)がLAMの増殖細胞の染色に用いられ診断に非常に有用です。確定診断はTBLB(経気管支肺生検)でも可能であることから、まずTBLBが優先され、診断不可能な場合は胸腔鏡下肺生検が行われます。

 LAM 細胞は,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を介したリンパ管新生能を有し,LAM 細胞の増殖,進展にはリンパ管新生 が関連するといわれています。LAM 患者において血清 VEGF-D 値が上昇することが報告され,診断や重症度 のマーカーとなることも期待されています。

 

6.予後

 閉経前の女性においては、閉経後でより高齢の女性と比較して肺機能の低下が急速です。LAMの最初の症状として気胸の既往がある患者では、労作時呼吸困難を自覚する患者よりも肺機能がよいとされます。実際、呼吸困難を呈している患者では、初発症状が気胸である症例と比較し、生存率が低いことが報告されています。

 さらに、一秒率(FEV1)とDLco が予測値の > 40%である患者においては、労作時呼吸困難を呈している患者で、気胸を呈している患者よりも呼吸機能低下率が大きいとされます。総じて、LAM患者において肺機能検査は肺病変の進行度を評価するのに最も実用的な方法です。また、VEGF-Dレベルは、肺病変の進行度を反映するDLcoやCT所見と相関しています。

 

7.治療

 近年まで、LAMは若年女性にとって致死的な疾患で、唯一の治療オプションは肺移植だと言われていました。LAMがTSC1やTSC2遺伝子、すなわちmTORシグナル伝達系の主な調整タンパクをコードする遺伝子の変異によって生じる疾患であることが明らかとなり、mTOR をターゲットとする治療が研究されてきました。

 女性 LAM 患者を対象とした国際多施設共同二重盲検比較試験[The Multicenter International Lymphangioleiomyomatosis Efficacy and Safety of Sirolimus (MILES) trial])においてmTOR 阻害薬であるシロリム スはLAMによる呼吸機能の低下を抑制し,QOLも一部 の評価で改善することが示されました。mTOR阻 害薬投与に際しては,口内炎や消化器症状をはじめとす る頻度の高い副作用,各種感染症や薬剤性肺障害といっ た早期対応の必要性のある副作用に対して,常に対策を考慮し,かつ各個人における益と害のバランスを考慮しながら投与の継続を判断する必要があります。またmTOR 阻害薬投与に際しては,副作用への対策のほか,避妊が必要となります。

 

8.気胸の治療

 繰り返す気胸は呼吸不全の増悪因子となるため、確実な治療が必要です。本症の気胸は肺表面に多発する気腫性嚢胞の破裂によるため、手術では再発の可能性があり、胸膜癒着術が優れていると考えられます。胸腔内注入薬剤として以前はタルクなどを用いましたが、近年では強力な胸膜刺激剤であるOK-432を用いることにより、再発もなく良好な成績が得られています。

 

伊東まさ子医師  内科 2000年国立大学医学部医学科卒、呼吸器内科、一般内科として臨床に従事。総合内科専門医、医学博士。

 

<リファレンス>

1)Clinical features, epidemiology, and therapy of lymphangioleiomyomatosis
Angelo M , et al Clin Epidemiol. 2015; 7: 249–257.

2)Summary for Clinicians: Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management Clinical Practice Guideline
Laura C Feemster, et al

3)日呼吸誌 1(2),2012 89-94

4)日呼吸誌 5(4),2016 166-171

5)呼吸器病学総合講座 メディカルビュー社

6)呼吸器専門医テキスト 南江堂

 

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