悪性関節リウマチ|clila疾患情報

【目次】

1.  悪性関節リウマチとは
2.  悪性関節リウマチの原因
3.  悪性関節リウマチの疫学的整理
4.  悪性関節リウマチの症状
5.  悪性関節リウマチの検査所見
6.  悪性関節リウマチの診断
7.  悪性関節リウマチの治療
8.  悪性関節リウマチの予後
9.  悪性関節リウマチの生活上の注意

 

1.悪性関節リウマチ(malignantrheumatoid arthritis:MRA)とは

関節リウマチに中小血管炎や肺線維症、胸膜炎などの関節以外の症状を伴い、難治性もしくは重症の状態をみとめる場合に悪性関節リウマチと定義されます。関節リウマチの関節病変が進行して関節の機能が高度に低下したのみの場合には悪性関節リウマチとは呼びません。疾患活動性が高く、長期罹患の関節リウマチに多く発症します。

海外では悪性関節リウマチに類似した病態は「関節リウマチに伴った血管炎」との考えから「リウマトイド血管炎(rheumatoid vasculitis)」と呼ばれています。一方で悪性関節リウマチは日本独自の疾患名・概念であります。生物学的製剤による関節リウマチ治療の進歩と喫煙率低下から有病率は世界的に減少しています。

MRAではリウマトイド因子高値のことが多く、免疫複合体沈着が炎症の惹起に関与していると考えられています。また、関節リウマチはが10年以上の長期に罹患している方に多く、その他に喫煙や抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)高値、抗リウマチ薬多剤抵抗性などとの関連性が示されています。

血管炎は、結節性多発動脈炎に類似した内臓病変をきたし生命予後不良な全身性血管炎型と、四肢末梢及び皮膚を侵し生命予後は比較的良好な内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型に分けられます。また、その他に間質性肺炎が主体の非血管炎型があります。

 

2.悪性関節リウマチの原因

関節リウマチと同様に原因は不明です。家族内に関節リウマチの人が約12%みられ、体質や遺伝が示唆されています。遺伝因子の1つとして、白血球の組織適合抗原のHLA-DR4は関節リウマチに多く認められますが、悪性関節リウマチ(リウマトイド血管炎)にはより多く認められます。また、悪性関節リウマチでは、免疫異常が強く認められます。リンパ球の機能異常、IgGリウマトイド因子がが自己凝集し、免疫複合体を形成することなどが血管炎の発症に関与していると考えられています。

遺伝性はないとされますが、関節リウマチの家族内発症率が多いこと(対照にくらべ約3.6倍)、また、関節リウマチでは-卵性双生児では34%の発症率と二卵性双生児の7%に比べ高いことから、遺伝的傾向は認められています。

 

3.悪性関節リウマチの疫学的整理

悪性関節リウマチは関節リウマチ患者の0.6〜1.0%にみられるとされます。診断時の年齢のピークは60歳代で、平成28年度の指定難病受給者証を持っていた患者数は6067名です。

 

4.悪性関節リウマチの症状

悪性関節リウマチでは、関節リウマチによる多関節炎に加えて、多彩な症状がみられます。全身性血管炎型では38℃以上の発熱、体重減少、全身痛などの全身症状(80%)を伴いやすく、局所症状は皮膚病変(90%)が特徴的です。点状出血や紫斑は下肢に見られやすく、壊死は手指や足趾の末梢に生じます。皮膚潰瘍は比較的深く足背や腓腹上部などに生じ、糖尿病での末梢潰瘍とは部位が異なることが多く、他にも網状皮斑、隆起性紅斑など多彩な皮膚病変がみられるます。通常、進行はゆっくりです。

末梢神経障害(40%)も生じやすく、非対称性の痛みを伴う感覚神経障害や、手や足の下垂を伴う運動神経障害として多発単神経炎の症状が現れます。手指や足趾の痺れや疼痛など知覚障害と運動障害がみられ、橈骨神経障害では下垂手(ドロップハンド)、腓骨神経障害では下垂足(ドロップフット)となり関節リウマチに由来する腱断裂との鑑別が必要となります。

心病変(30%)として心外膜炎、冠動脈炎、心筋梗塞、不整脈などがあります。眼病変(15%)とし上強膜炎、辺縁潰瘍性角膜炎は角膜穿孔に至ることがあります。他に、糸球体腎炎などの腎病変や、胸膜炎や肺胞出血などの肺病変、消化管潰瘍、中枢神経病変などもみられます。

 

5.悪性検査所見

一般的には、白血球および血小板増多、CRP陽性、赤沈促進など非特異的炎症所見がみられます。また、高ガンマグロブリン血症も通常認められます。また、高ガンマグロブリン血症も通常認められます。リウマトイド因子や抗CCP抗体が高値である場合に血管炎を併発しやすく、他の小~中血管炎との鑑別として抗CCP抗体が陽性であればリウマトイド血管炎である特異度が高まります。リウマチ因子(RF) 960IU/ml以上となることは診断基準に含まれています。全身血管炎型では免疫複合体陽性がみとめられ、活動性RAでは増加することが多いため、C3、C4および血清補体価は低下する場合があります。

リウマトイド血管炎の診断には血管炎症状とともに病理組織診断が有用であり、皮膚生検や直腸生検が行われます。血管壁にIgMやC3の沈着が確認され、壊死性血管炎にはフィブリノイド変性、好中球浸潤を主体とした好中球性血管炎、血管壁に核塵を伴う白血球破砕性血管炎の像が見られます。

 

6.悪性関節リウマチの診断

 厚生労働省により定められているMRの診断基準が用いられています。鑑別診断が必要な疾患として、感染症や続発性アミロイドーシス、薬剤性の血管炎や肺・腎障害、Felty症候群や他の膠原病の合併などがある。MRAの血管炎では血管造影での小動脈瘤、毛細血管炎による糸球体腎炎や肺胞出血を認めることは少なく、抗好中球細胞質抗体は陰性です。可能であれば生検(皮膚、神経・筋など)を施行し、壊死性血管炎や肉芽腫性血管炎、閉塞性内膜炎などの所見を確認します。

 

悪性関節リウマチ改訂診断基準(厚生労働省研究班 1998年)

・臨床症状

  1. 多発性神経炎:知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい。
  2. 皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。
  3. 皮下結節:骨突起部、伸側表面又は関節近傍にみられる皮下結節。
  4. 上強膜炎又は虹彩炎:眼科的に確認され、他の原因によるものは含まない。
  5. 滲出性胸膜炎又は心嚢炎:感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。
  6. 心筋炎:臨床所見、炎症反応、筋原性酵素、心電図、心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。
  7. 間質性肺炎又は肺線維症理:学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認され、病変の広がりは問わない。
  8. 臓器梗塞:血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞。
  9. リウマトイド因子高値:2 回以上の検査でRAHA ないしRAPAテスト2,560 倍以上(RF960IY/ml以上)。
  10. 血清低補体価または血中免疫複合体陽性:2 回以上の検査で、C3、C4 などの血清補体成分の低下もしくはCH50による補体活性化の低下をみること。または、2 回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q 結合能を基準とする)をみること。

・組織所見

皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈に壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること。

・判定

関節リウマチ(2010年ACR/EULAR分類基準)で、上記の臨床症状3項目以上、又は臨床症状1項目以上と組織所見があるものを悪性関節リウマチと診断する。

・鑑別疾患

感染症、続発性アミロイドーシス、薬剤性間質性肺炎、薬剤性血管炎、フェルティ症候群、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎などの重複に留意する。関節リウマチや悪性関節リウマチにシェーグレン症候群を合併することもある。

 

7.悪性関節リウマチの治療

悪性関節リウマチの発症や増悪を防ぐためには、抗リウマチ薬や生物学的製剤にて関節リウマチの自体をよくコントロールし、寛解もしくは活動性を抑え維持することが重要です。

治療は、関節外症状の重症度に応じて副腎皮質ステロイド等の投与を行います。紫斑や皮膚潰瘍、四肢壊疽、知覚障害のみの多発単神経炎、重症でない胸膜炎などに対しては、プレドニゾロン( PSL)換算で20〜30mg/日程度のステロイド投与、効果不十分の場合には、シクロフォスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用します。

副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬ともに、免疫力を低下により感染に弱くなります。このほか副腎皮質ステロイドでは糖尿病、骨が弱くなるなどの副作用もあるので注意が必要です。

血管炎による臓器虚血・梗塞、多発単神経炎、奨膜炎などの重症病態では、大量経口ステロイド投与が必要とされ、緊急性や重症度によりメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法も行われます。また、トシリズマブ、アバタセプト、リツキシマブなどの生物学的製剤は、おいてもMRA治療薬についての有用とされています。 

間質性肺炎・肺繊維症を主体とする非血管炎型に関しては、そのタイプにより治療方針が異なりますが、もっとも重篤な病態である急速進行性の急性間質性肺炎では大量ステロイド投与に加えてメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法やシクロフォスファミド (500〜1000mg/日)の併用も考慮されます。リウマチ因子や免疫複合体高値の場合には血漿交換療法の併用も検討されます。
 

8.悪性関節リウマチの予後

悪性関節リウマチの転帰は、軽快21%、不変26%、悪化31%、死亡14%、不明・その他8%との最近の疫学調査成績があります。死因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎不全などがあげられます。関節リウマチ治療の進歩によって、悪性関節リウマチの発生は減少してきていると考えられています。

 

9.悪性関節リウマチの生活上の注意

関節リウマチの治療中に発症することが多いので、皮膚、神経症状などの些細な変化を見逃さずに主治医と相談する必要があります。治療により免疫力が低下した状態になりえますので、感染対策などの注意が必要です。

 

永井 弥生   皮膚科医 皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

<リファレンス>

悪性関節リウマチ 指定難病46 (難病情報センター)

http://www.nanbyou.or.jp/entry/43

悪性関節リウマチ(MRA)/リウマトイド血管炎(RV) (大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)

http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu02-5.html

悪性関節リウマチ/リウマチ性血管炎

難治性血管炎の医療水準/患者yQOLに資する研究https://www.vas-mhlw.org/html/kaisetsu-iryo/4-3.html

 

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