メープルシロップ尿症|clila疾患情報

【目次】
メープルシロップ尿症とは
メープルシロップ尿症の原因
メープルシロップ尿症の診断
メープルシロップ尿症の症状
メープルシロップ尿症の治療
メープルシロップ尿症の予後

メープルシロップ尿症とは

メープルシロップ尿症(MSUD)は分枝鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン(BCAA)の代謝に由来するα-ケト酸の酸化的脱炭酸反応を行う、分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素の欠損によって発症する先天代謝異常症です。常染色体劣性の遺伝性疾患で、新生児マススクリーニングの対象疾患です。

わが国における発生頻度は約50万人に1人とされています。新生児期発症の急性期では元気がない、不機嫌、嘔吐などで発症し、進行すると意識障害、痙攣、呼吸困難などが出現し、治療が遅れると死亡することもあります。症状としては発達障害、精神運動発達遅滞、失調症、痙攣などがみられます。

メープルシロップ尿症の原因

必須アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリンの3種類のアミノ酸はそれぞれ側鎖に分岐構造をもつことから分岐鎖アミノ酸Branched Chain Amino Acid(BCAA)と言われます。BCAAはタンパク質の構成成分として15~20%含まれており、多くのBCAAは骨格筋などのタンパク質として体内に保有されています。

タンパク質を食べることで多くのBCAAを摂取することができ、タンパク質の合成を促進し分解を抑制します。BCAAは必須アミノ酸であるため体内にはBCAAの分解系のみが存在しています。BCAAは主にミトコンドリア内で6~10ステップの反応により分解されますが、最初の2ステップの反応は三つのBCAAに共通しています。

第1ステップは、BCAAアミノ基転移酵素(branched-chain aminotransferase:BCAT)によりBCAAが分岐鎖α-ケト酸(branched-chain α-ketoacid:BCKA)になるとともにグルタミン酸を生成します。

第2ステップでは分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素(branched-chain α-ketoacid dehydrogenase:BCKDH)複合体により分岐鎖α-ケト酸BCKAが分岐鎖アシルCoA(branched-chain acyl-CoA:BC-CoA)に変換され、CO2とNADHが生成されます。

分岐鎖α-ケト酸BCKA (BCKA: branched-chain α-keto acids)は高濃度に存在すると神経系に有毒であり、体内でBCKAを迅速に分解する必要がありますが、メープルシロップ尿症は分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素BCKDH複合体が先天的に欠損していることによりBCAA及びBCKAが代謝されないことにより生じます。

メープルシロップ尿症の中枢神経障害はBCAA(特にロイシン)とBCKAの増加は中枢神経障害を来たし、脳神経細胞の発達抑制、ミエリン合成障害をきたすことが知られています。更に高濃度のロイシンは他の中性アミノ酸の脳内転送を抑制し、アミノ酸やその由来の神経伝達物質の欠乏をきたすものと考えられています。


メープルシロップ尿症の診断

メープルシロップ尿症は新生児マススクリーニングの対象疾患であり、新生児マススクリーニングでろ紙血中のロイシンもしくはロイシン+イソロイシンの上昇を認めた無症状例はメープルシロップ尿症に罹患している可能性があるため、末梢血及び生化学検査、血糖、血液ガス、アンモニア、乳酸、血中ケトン体分画を測定し、血中と尿中のアミノ酸分析、尿中有機酸分析を行います。

必要に応じて酵素活性測定により確定診断を行います。尿のメープルシロップ様の甘いにおいが特徴的であるが、新生児期は明らかではないこともあります。

診断基準

血中ロイシン値が4㎎/dl(300μmol/L)以上であれば本症の診断を進め、 診断の根拠となる検査の1.かつ2.、もしくは1.かつ3.を認めるものを確定例とします。

診断の根拠となる検査1.血中・尿中アミノ酸分析
診断に必須の検査でありロイシン、イソロイシン、バリンの増加、アラニンの低下を認めます

診断の根拠となる検査2.有機酸分析
分枝鎖αケト酸、分枝鎖αヒドロキシ酸の増加を認めます

診断の根拠となる検査3.酵素活性
リンパ球、皮膚線維芽細胞、羊水細胞、絨毛細胞などを用いた分枝鎖ケト酸脱水素酵素の酵素活性の測定を行います。患者では正常に対して酵素活性は20%以下で、5%未満の場合は古典型、5-20%の場合は中間型あるいは間欠型です。

メープルシロップ尿症の症状

分枝鎖アミノ酸および分枝鎖ケト酸の血中濃度が上昇するとミエリン合成の障害をきたし不可逆的な中枢神経の障害により、精神運動発達の遅れを認めます。メープルシロップ尿症は病型により、生後1~2週間で発症する重篤な「古典型」、臨床症状がやや軽度な「中間型」、通常は無症状で急性増悪を起こす「間欠型」など分類されます。

最も典型的なものは古典型で、新生児期発症の急性期では元気がない、哺乳力低下、不機嫌、嘔吐などが認められ、進行すると血中ロイシン値が上昇し、意識障害、痙攣、呼吸困難、筋緊張の低下、後弓反張などが出現し、治療が遅れると重篤な神経後遺症が残ったり、命を落とすことがあります。

間欠型や中間型は新生児期には無症状で、中間型は幼児期以降に発症し、治療は必要ですが軽度のまま経過することが多いです。間欠型は感染症などを機に突然発症し、嘔吐や昏睡、発達遅延などをきたします。

メープルシロップ尿症の治療

メープルシロップ尿症は、マススクリーニングの結果が判明する前の段階で発症することもあり、その場合、急性期の治療を行います。急性期は80kcal/kg 以上の適切なカロリー摂取と電解質輸液、アシドーシスの補正、ビタミン投与、蛋白制限を行います。アシドーシスが強く、アルカリ療法の効果が乏しければ血液ろ過透析を行います。

慢性期は分枝鎖アミノ酸の制限食が中心となり、特殊ミルク(BCAA 除去ミルク)を使用します。一般的に新生児、乳幼児期の古典型では、BCAA摂取量はロイシン60-90mg/day、イソロイシン、バリンは40-50mg/day が目安となります。

また、他の必須アミノ酸も発育発達に重要であり、低ければミルクあるいはアミノ酸製剤で補充する必要があります。慢性期の治療目標は急性増悪の発症を予防し、十分な発育、発達を得ることです。

これらの治療を行っても感染を契機とした急性増悪を引き起こすことがあり肝移植が行なわれることがあります。

メープルシロップ尿症の予後

新生児マススクリーニングが行われ早期発見、治療をされていますが、新生児マススクリーニング対象疾患の中で最も神経学的予後も不良で死亡率が高い疾患です。

早期に診断、治療を行うことで新生児期の急性増悪を抑えることができるかがポイントであり、その後、良好な経過を辿るかどうかが決まります。さらに肝臓移植により良好な経過を辿ることも判明しており、早期発見、早期治療、肝臓移植により予後は良好になることが期待されています。

この記事を監修した人:姫野愛子消化器内科医 2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

<リファレンス>
指定難病244 メープルシロップ尿症

新生児マススクリーニング対象疾患等 診療ガイドライン2019

    コメントを書くにはが必要です。

    カテゴリー

    タグ

    不安が解消できない場合には、
    実際の医師に直接相談できる、
    オンライン相談サービス、
    「anamne(アナムネ)」
    をご利用下さい。