働く女性を悩ませる月経。自分の身体を知る機会に!【医師にインタビュー】

記事要約

多くの女性が毎月憂鬱な気持ちになってしまう「月経に伴う不快症状」個人差はあるものの、腹痛や腰痛、頭痛や倦怠感を経験した方も多いと思います。 働く女性は、通勤や就労時と痛み(眩暈等不快症状)とのバランスで更に悩まれることもあるのではないでしょうか? 今日はそんな月経と就労との関係や詳しいメカニズムについてお伝えしたいと思います。 取材させて頂きましたのはマックアリース温子先生です。

月経ってどうやっておきるの?

では、毎月悩ませる月経は、どのような仕組みになっているのでしょうか?月経に関わる器官は、主に「脳」「卵巣」「子宮」の3つ、大きな影響を及ぼしているのが、ホルモンの作用です。

卵巣では、脳からのホルモン刺激によって、卵子を包む卵胞が育ち、排卵し、卵管を通って子宮へと運ばれます。子宮では、排卵した卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、これらのホルモンによって受精した卵が着床できるよう内膜が厚くなります。

妊娠が成立しなかった時に、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、膣から血液と共に出てきます。これが月経の仕組みです。正常であれば25日~38日のサイクルで月経が起こります。

月経痛の原因は?

月経時に、腹痛や腰痛といった月経痛が起きる方も多いと思います。月経痛は経血を押し出すため子宮が収縮することで引き起こります。子宮内膜の内側にプロスタグランジンという物質が増加し、子宮を収縮させます。このプロスタグランジン過剰による過収縮や頸管の狭小での痛みは、『機能性月経困難症』と呼ばれます。この機能性月経困難症の他、『器質性月経困難症』というものがあります。こちらは、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などが要因と考えられます。若い世代は、機能性月経困難症が多く、年齢と共に器質性月経困難症が増えてきます。

【月経困難症の原因】

(ア)器質的月経困難症
  子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症あるいは骨盤内炎症など

(イ)機能性月経困難症
   頸管の狭小やプロスタグランジン過剰により子宮の過収縮が原因  

月経に纏わる不快症状のもう1つに、PMS(月経前症候群)があります。PMSは、月経前3~10日の間に精神的・身体的症状で、月経が始まると軽減されたり消失したりします。症状としては、情緒不安定・不安・イライラ・倦怠感といった精神神経症状と、腹痛・腰痛・お腹の張り・頭痛といった身体的症状があげられます。中でも精神神経症状が強く出ている時には、月経前不快気分障害(PMDD)と診断する場合もあります。

月経痛と就労の関係・影響について

月経と月経痛についてお話をしましたが、この月経・月経痛はお仕事(就労)をする上でどのような影響があるかを考えていきたいと思います。働く女性にとって月経痛の症状が強く出ると、就労に大きく差し支えます。企業側としては、急なお休みや、月経痛によってパフォーマンスが上がらないという状況で、経済的損失を生じることもあります。(参考資料1)

(資料1)
一方女性側は、痛みを薬で抑え出社したものの、パフォーマンスが上がらない・周りに迷惑をかけていると感じてしまうという声も多く訊きます。また辛くて休みたいが、男性上司に言い難い・「月経痛は病気ではない」という固定観念を、自身も会社側も持っているということも少なくありません。月経の量や痛みは人と比較できないため、辛い症状があっても、「これぐらい普通」「市販薬を飲み続けていれば」と考え、自身の月経が正常なのかどうか分からないという方が殆どではないでしょうか?ですが、中には病気が原因となって強い痛みが現れている場合もあります。仕事や学校を休む・集中できない等、日常生活に支障が出ている・鎮痛剤が効きにくくなっている・健診で貧血がある、などがあれば、一度産婦人科に相談することをお奨めします。自分で「これは月経困難症かな?」「受診してもいいかな」と迷われた際は下記を目安にしていただくのもいいと思います。

生理痛チェックツール

自分の身体知ることが大切!

妊娠・出産の準備をする大切な月経サイクル。生涯で40年近くのお付き合いになるこの月経は、煩わしさや不快感がある一方で、自分の健康を把握することが出来る、周期的身体リズムです。

少しでも月経による不快感を減らし快適な生活を送るために、自分の身体や身体リズムを良く見つめて、上手に付き合ってほしいと思います。月経前に体調不良がある方は、基礎体温や体調を書いた日記などで身体リズムをつかみ、月経前は生活時間や仕事の量を調整したり、気分転換を上手に取り入れるようにしましょう。

カルシウムやマグネシウムをしっかり摂り、栄養バランスの良い食事を心掛けたり、カフェイン、アルコール、喫煙を控えたりなどのセルフケアもよいと言われています。

まとめ

多くの女性が経験する月経に関わる不快症状。

働く女性は特に、休むことへの抵抗感・周囲の理解・パフォーマンス低下などで更に悩みを深くすることもあるでしょう。

ですが、毎月の不快感を我慢したり、やり過ごすのではなく、自身の身体と向き合うことを大切にしてください。

正しい知識と自身の身体リズムを知れば、セルフケアをしたり、自分の月経周期や月経痛が受診する必要があるかを見極めることが出来、症状をコントロールできるかもしれません。婦人科診察へのハードルが高い方は、まずは相談だけでもしてみてください。当医療相談も是非ご活用ください。うまく利用して自身の身体と上手に付き合いながら、社会の中で更に輝いて活躍してほしいと思います。

<リファレンス>

公益社団法人 日本産婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」(参照 2021-08-05)
公益社団法人 日本産科婦人科学会
公益社団法人 日本産婦人科医会
女性の健康推進室 ヘルスラボ 厚生労働省研究班監修
健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月 経済産業省 ヘルスケア産業課

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