卵巣嚢腫|clila疾患情報

【目次】
1.卵巣嚢腫とは
2.卵巣嚢腫の分類
3.卵巣嚢腫の疫学的整理
4.卵巣嚢腫の原因
5.卵巣嚢腫の症状
6.卵巣嚢腫の診断
7.卵巣嚢腫の治療法
8.妊娠中に合併した卵巣嚢腫について

 

1.卵巣嚢腫とは

卵巣とは、子宮の左右に一つずつある臓器で通常では2〜3cmぐらいの親指大の大きさです。卵巣の働きは、妊娠・月経に関わるもので、主に成熟した卵子を排卵することと女性ホルモンの分泌を行っています。
卵巣嚢腫とは、卵巣の内部や表面にできる袋状の腫瘤で内部は液体や粘液などで満たされています。多くが良性の腫瘍です。

 

2.卵巣嚢腫の分類

卵巣嚢腫の種類として主に以下のようなものがあります。
①皮様嚢腫:成熟嚢胞性奇形腫とも呼ばれます。未受精の卵子から発生し、嚢胞の中に歯や髪の毛、皮膚などの組織が含まれています。
②嚢胞腺腫(漿液性嚢腫、粘液性嚢腫):卵巣の表面から発生し、内部は液体や粘液性の物質で満たされています。
③卵巣子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢胞):子宮内膜症が卵巣で起こり月経時に卵巣内で出血し血液が貯留してできる卵巣嚢腫です。その内容物は古い血液であり、チョコレートのような液体であることからチョコレート嚢胞とも呼ばれています。 子宮内膜症とは、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜あるいはそれに類似した組織が卵巣などの子宮以外の組織に発生する疾患であり、月経時にその病変部位からも出血が起き、炎症や癒着を起こします。

 

3.卵巣嚢腫の疫学的整理

良性・悪性含めて全卵巣腫瘍が発生する頻度は、女性の全生涯で5~7%程度とされていて、その多くが卵巣嚢腫です。
皮様嚢腫は、若年に多く妊婦が合併することも多い疾患です。
卵巣子宮内膜症性嚢腫の原因となる子宮内膜症は、20~30代の年代に多く、月経のある女性の5~10%がもっているといわれています。

 

4.卵巣嚢腫の原因

卵巣嚢腫のうち卵巣子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢胞)は、卵巣に発生する子宮内膜症により起こると言われています。また。皮様嚢腫は、受精していない卵子から発生し卵巣内で髪の毛や歯などの体の組織を作ると考えられています。

 

5.卵巣嚢腫の症状

多くの場合で自覚症状はありませんが、サイズが大きいものでは骨盤内に疼痛や腹部膨満感がでることがあります。周囲臓器を圧迫すると便秘や頻尿などを起こすこともあります。卵巣子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢胞)では、激しい月経痛、腰痛を起こしたり不妊症の原因となったりします。
また、腫瘍が根元からねじれたり破裂したりすると、卵巣腫瘍茎捻転や卵巣腫瘍破裂と呼ばれ、激しい下腹部痛、嘔吐が出現し緊急処置が必要となります。一般的に腫瘍のサイズが6㎝より大きくなると卵巣腫瘍茎捻転を起こしやすくなるといわれています。

 

6.卵巣嚢腫の診断

問診、内診、超音波検査、CT、MRI、血液検査(腫瘍マーカー)などを行います。画像検査や血液検査で悪性を疑う所見がないかを確認します。良悪性の最終的な診断は、手術で病巣を摘出し病理組織学的検査での確定診断となります。

 

7.卵巣嚢腫の治療法

自覚症状や卵巣嚢腫のサイズ、悪性の可能性などを踏まえて治療法を選択していきます。
サイズが小さく無症状で、悪性の可能性が低い場合は経過観察をしていきます。大きさが6㎝以上の卵巣嚢胞では、茎捻転を起こすリスクが高くなるため手術を行います。6㎝未満の嚢胞であっても悪性腫瘍の可能性が否定できない場合や、将来的に悪性化する恐れのある腫瘍、自覚症状を伴う場合にも手術となります。術式は、卵巣嚢腫核出術(病巣部分のみを摘出し、正常な卵巣を温存する術式)や付属器摘出術となります。さらに手術方法としては、開腹手術あるいは腹腔鏡手術での手術が選択肢となります。手術所要時間は、術式や開腹か腹腔鏡手術かによっても異なりますが1〜数時間要することが一般的です。癒着がひどいとさらに時間がかかることもあります。

・皮様嚢腫について

皮様嚢腫は、稀に癌化(悪性転化)することがあります。これは皮様嚢腫の成分の中に体細胞性悪性腫瘍が発生するもので、40 歳以上で多く1〜2%の頻度でみられます。そのため、大きさが6cm未満でもこのような腫瘍が疑われる場合は手術を考慮していきます。

・卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)について

子宮内膜症の治療法として薬物療法や手術療法があります。薬物療法には、対症療法として鎮痛剤を用いたり、GnRHアゴニストや黄体ホルモン剤、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬などのホルモン剤を使用したりします。卵巣子宮内膜症性嚢胞を伴う場合は、悪性腫瘍との鑑別が必要となり、感染したり破裂したりしやすいため手術を考慮していきます。なお、卵巣子宮内膜症性嚢胞が稀に(頻度 0.7%程度)癌化することがあり、さらに50 歳以上で有意にその頻度が上がると報告されています。そのため、特に40歳以上で長径10cm 以上あるいは急速な増大を認めるなど悪性化のリスクの高い場合は患側の卵巣摘出術を行います。
不妊症を合併している方への嚢胞摘出術は、術後の自然妊娠の妊娠率を上げるといわれる一方で術後の卵巣機能を低下させることも懸念されています。さらに体外受精前の嚢胞摘出術は、術後の妊娠率の向上に有意な利益をもたらさないと言われています。そのため、個々の状況に合わせて治療方法を検討していく必要があります。
なお、保存手術後にしばしば再発することがありますので、術後すぐに妊娠を希望しない方には術後の再発予防としてホルモン療法を行うこともあります。

・卵巣の生理的変化で起きる機能性嚢胞は自然消退することがあるので、月経変化によるものかどうかを確認するため経過観察していくこともあります。

 

8.妊娠中に合併した卵巣嚢腫について

 妊娠中に発見される卵巣腫瘍のほとんどが良性であり、多くが皮様嚢腫、囊胞腺腫、ルテイン囊胞(妊娠初期にみられる機能性変化)といわれています。妊娠中に卵巣嚢腫が発見された場合、妊娠の影響で卵巣嚢腫が増大していくことはありませんが、以下のような合併症が起きることがあります。

・卵巣腫瘍茎捻転:頻度は約5%。皮様嚢腫が最も多く、妊娠早期や産褥期に多く起こります。
・卵巣嚢腫破裂:頻度は約3%で、分娩時に起こしやすくなります。
・分娩時障害:卵巣嚢腫が産道の通過障害を起こすときには経腟分娩の妨げとなり帝王切開を行うこともあります。

ルテイン嚢胞は妊娠週数とともに自然消退することが多く、卵巣子宮内膜症性嚢胞は妊娠による無月経で縮小していく可能性がありますので、経過観察をしていきます。腫瘍径が大きく消退傾向を認めない場合や悪性が疑われる場合には、できれば妊娠12~14週から妊娠18週までに手術療法を考慮していきます。それ以外でも茎捻転や破裂などを起こした場合には、緊急手術となります。

 

マックアリース温子麻酔科医、産業医2010年医学部卒業。初期研修終了後、総合病院にて麻酔科医として手術麻酔に従事。その後、大企業にて専属産業医として勤務し、メンタルヘルスや予防医学に携わっている。

 

<リファレンス>
公益社団法人 日本産科婦人科学会

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id

公益社団法人 日本婦人科学会 
卵巣腫瘍 | 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 (jsgo.or.jp)

公益社団法人 日本産婦人科医会
10.必ず妊娠初期に確認! 合併異常のチェック – 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)
https://www.jaog.or.jp/note/(4)子宮内膜症性不妊への対応/

一般社団法人 日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=77

産婦人科診療ガイドライン 婦人科編2020  公益社団法人 日本産科婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf

産婦人科診療ガイドライン 産科編2020  公益社団法人 日本産科婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会
gl_sanka_2020.pdf (jsog.or.jp)

日産婦誌60巻1号 2008年1月, N-18
日産婦誌60巻1号研修コーナー (kyorin.co.jp)

卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版
ransou05.pdf (jsgo.or.jp)

Mayo Clinic -ovarian cystsー 
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/ovarian-cysts/symptoms-causes/syc-20353405

 

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