発作性夜間ヘモグロビン尿症|clila疾患情報

【目次】
1.発作性夜間ヘモグロビン尿症とは
2.発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因
3.相談の目安
4.疫学的整理
5.発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状
6.発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断方法
7.発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類
8.発作性夜間ヘモグロビン尿症の生命にかかわる因子
9.発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療法
10.発作性夜間ヘモグロビン尿症の生活上の注意

 

1.発作性夜間ヘモグロビン尿症とは

血液中の赤血球が自分の補体の攻撃を受けて破壊され起こる貧血で、ヘモグロビン尿というコーラのような黒色尿が早朝にでるのが特徴的な疾患です。赤血球は肺から取り込んだ酸素を臓器に運搬する細胞です。血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する再生不良性貧血という疾患や、血球の数が減少するだけではなく、血球の質も悪くなる骨髄異形成という疾患と密接に関係しており、時に合併・相互に移行することがあります。この疾患は英語でParoxysmal Nocturnal Hematuriaといい、その頭文字をとってPNHという略語で表されることもあります。

2.発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因

発作性夜間ヘモグロビン尿症は血液細胞の前段階である造血幹細胞における後天的な遺伝子変異が原因で起こります。この変異遺伝子をもった造血幹細胞が細胞分裂を起こすことで増殖するため、赤血球のみならず全系統に異常がみられます。

3.相談の目安

早朝の尿が黒っぽくなったとき、検診で貧血やLDH高値を指摘されたとき
顔色不良、息切れ、動悸、めまい、身体を動かしたときの疲れやすさ、全身がだるい、脱力感、頭痛、飲み込みづらい、原因のわからない腹痛等の症状があるとき

4.疫学的整理

日本では764人(平成30年)の方々が再生不良性貧血の難病指定を受け治療を受けています。

5.発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状

早朝の黒色尿以外に貧血や溶血、造血不全による症状が現れます。日本ではこの疾患に特徴的な黒色尿を診断時に認めた方の割合は34%でした。その他、具体的な症状としては、貧血症状として、顔色不良、息切れ、動悸、めまい、身体を動かしたときの疲れやすさ、全身がだるい、脱力感、頭痛などが挙げられます。再生不良性貧血などの造血不全症状が強いと、白血球減少により肺炎等の感染症を起こしやすくなったり、血小板減少による出血症状(皮膚・粘膜の 点状出血 、抜歯後の止血困難等)がでやすくなったりします。溶血による腹痛や飲み込みづらさ、男性機能不全も特徴的な症状と言われています。

6.発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断方法

貧血に伴う症状や溶血の所見がみられ、他の貧血を起こす疾患が否定された場合、発作性夜間ヘモグロビン尿症を疑いさらに検査を進めます。血液検査で発作性夜間ヘモグロビン尿症に特徴的な血球がみられるかを調べます。以前は赤血球の溶血を調べるHam試験や砂糖水試験が行われていましたが、近年は発作性夜間ヘモグロビン尿症に特徴的な細胞表面のたんぱく質の欠損をフローサイトメトリー法という赤血球表面の抗原を調べる検査を行います。初診時に血栓症がないか調べるために血液ガス分析、胸部レントゲン、心電図、腹部超音波検査などで行うことがあります。

7.発作性夜間ヘモグロビン尿症の重症度分類

発作性夜間ヘモグロビン尿症は貧血や溶血の程度、定期的な輸血の必要性、血栓症の有無など
によって以下の3段階に分類されます。

重症度

項目

軽症

下記以外の場合

中等症

以下の2項目を満たす。
・ ヘモグロビン濃度:10 g/dL未満 
・中等度溶血を認める。または、 年1~2回程度に溶血発作を認める。

重症

以下の2項目を満たす。

・ヘモグロビン濃度7g/dL未満 または 毎月2単位以上の赤血球輸血を必要とする。
・高度溶血を認める。または 恒常的に肉眼的ヘモグロビン尿を認めたり 年3回以上溶血発作を繰り返す。または、血栓症の既往・合併がある場合。

*1 中等度溶血の目安は、血清LDH値で正常上限の4~5倍程度高度溶血の目安は、血清LDH値で正常上限の8~10倍程度
*2 溶血発作とは、発作により輸血が必要となったり入院が必要となる状態を指します。
*3 中等症以上の場合、国の難病指定の対象

8.発作性夜間ヘモグロビン尿症の生命にかかわる因子

日本、アメリカでの比較によりますと、日米に共通する因子は、①診断時の年齢が50歳以上、②診断時に重症の白血球(好中球)減少症がある、③重症感染症が合併している、の3つが挙げられ、日本のみの因子は、①骨髄異形成症候群の発症、②腎不全の発症とされています。血栓症は日本の症例においても重篤な合併症ですが、頻度が低く、生命に関わる因子として検出するには至らなかったと推測されます。

9. 発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療法

発作性夜間ヘモグロビン尿症のそれぞれの症状に対する対症療法としては、慢性溶血に対して、エクリズマブ、副腎皮質ステロイド、輸血、鉄剤・葉酸の投与、溶血発作に対して、発作の誘因除去、副腎皮質ステロイドパルス療法、ハプトグロビン、輸血・補液などが行われます。骨髄不全に対しては、シクロスポリンや抗胸腺細胞グロブリンによる免疫抑制療法、輸血、蛋白同化ホルモン、G-CSF(白血球を増やす薬)の投与、血栓症に対して、急性期には血栓溶解剤、ヘパリン、予防にはワルファリンなどの治療が有効です。近年、症状の原因となる補体を作らせないようにするエクリズマブ(商品名:ソリリス)という治療薬が登場し、症状を改善し、生存率を有意に改善するような結果が出ています。血球減少症の進行やそれに伴う感染、出血のなどの出現、溶血による頻回の輸血が必要な場合、繰り返す血栓・塞栓症などがある場合、造血幹細胞移植という根治療法を考慮します。

 10.発作性夜間ヘモグロビン尿症の生活上の注意

発作性夜間ヘモグロビン尿症と診断された場合には、感染症やストレスが誘因となり溶血を引き起こすことがあるので、手洗いうがいやマスクの着用で風邪をひかないように注意し、十分な睡眠をとりストレスを溜めないよう心がけてください。激しい運動や造影剤の使用、手術も溶血発作を起こすことがあるので注意が必要です。また溶血発作を起こしていないかどうか、自分の尿の色が黒っぽくなっていないかどうか色調の変化に注意してください。もし原因のはっきりしない頭痛や腹痛、胸痛が出現した際には血栓症が起こっている可能性もありますので、主治医の先生に早めにご相談いただく必要があります。


(リファレンス)
難病情報センター 発作性夜間ヘモグロビン尿症 https://www.nanbyou.or.jp/entry/3783
一般社団法人日本PNH研究会 https://pnhsg.jp/index.php

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