類天疱瘡|clila疾患情報

目次

1.類天疱瘡とは
2.類天疱瘡の原因
3.疫学的整理
4.悪性腫瘍の合併など
5.類天疱瘡の症状
6.類天疱瘡の診断法
7.類天疱瘡の治療法
8.類天疱瘡の予後
9.主な鑑別疾患
 

1.類天疱瘡とは

「水泡性類天疱瘡」が正式な名称です。高齢者に比較的観られることのある疾患です。
自己免疫性水疱症のひとつで、表皮基底膜部に対する自己抗体により生じます。ほぼ全身の皮膚に多発する瘙痒を伴う浮腫性紅斑と緊満性水疱を特徴とし、口腔粘膜病変を生じる場合もあります。高齢者に好発します。

 

2.類天疱瘡の原因

「抗表皮基底膜部抗体」による自己免疫性疾患です。表皮基底膜というのは、表皮の一番下、真皮との境界にあります。すなわち、表皮と真皮を接着する部分に対する自己抗体により、表皮と真皮が離れてしまい水疱を生じます。
水疱性類天疱瘡は 自己抗体の標的抗原である BP180 およびBP230 が原因となります。活動期の患者血中自己抗体の約 85%が、BP180 に反応します。
 水疱性類天疱瘡には薬剤性の場合もあり、降圧薬や利尿薬,抗生剤など様々な薬剤との関連が報告されています。近年、糖尿病治療薬であるDPP-4(Dipeptidyl Peptidase-4)阻害薬内服との関連の報告が増加しています。DPP-4 阻害薬のうち、いくつかのものにおいては添付 文書に重大な副作用として水疱性類天疱瘡が記載され ています。フランスの 21 万件 余りの薬剤副作用記録を調査した研究では、DPP-4 阻 害薬内服者の割合が水疱性類天疱瘡患者ではその他の 疾患患者と比較して有意に高かったとされています。その機序は未だ不明です。

 

3.疫学的整理

60歳以上、とくに70歳代後半以上の高齢者に好発しますが、まれに若年者や小児にも生じます。水疱症の中でも最も頻度が高く自己免疫性水疱症で、近年の高齢に伴い増加しています。
 類天疱瘡の患者数は天疱瘡の約 1.3 倍と推定されていますが 、軽症例はこれらの調査で漏れている可能性があるため実数はもっと多いと考えられます。

 

4.悪性腫瘍の合併など

水疱性類天疱瘡では悪性腫瘍の合併率が高いとされています。
 本邦における水疱性類天疱瘡患者 1,113 人を調べた 結果、64 人(5.8%)に悪性腫瘍が発見されたとの報告があります。その ほか、イタリアで 10.9%18),台湾で 15.1%19),イギリス で 17.9%20)など一般人口に比べて高い悪性腫瘍合併率 が報告されていますが、因果関係については不明です。
 ステロイド内服前の全身精査により偶発的に発見される悪性腫瘍もあるため、一般人口に比べて合併 率が高くなっている可能性があります。しかし治療抵抗例で内臓悪性腫瘍が判明し、その内臓悪性腫瘍の治療後に水疱性類天疱瘡の皮疹が軽快する例もあります。したがって、治療抵抗例および高齢者であれば侵襲の少ない検査を行い、異常が疑われればさらなる詳細な全身精査を行うことが望ましいです。
 また、近年、ヨーロッパやアジア諸国の調査で、一般人口比より水疱性類天疱瘡患者において神経疾患 (脳梗塞,認知症,パーキンソン病,てんかんなど)の 合併率が高いことが報告されています。多くのエビデンスが蓄積されつつありますが、因果関係についてはまだ不明です。

 

5.類天疱瘡の症状

 かゆみのある浮腫性紅斑を伴うことが多く、比較的大型で被膜の丈夫な緊満性水疱が多発します。粘膜にみられるのは20%とされ、天疱瘡より少なく粘膜症状は軽度です。 

*類天疱瘡の特殊型

・瘢痕性類天疱瘡(良性粘膜天疱瘡)

 主に口腔、眼粘膜に水疱やびらんを生じて、あとに瘢痕を残します。外陰部、肛門周囲、咽頭、食堂などに病変がみられることがあります。抗BP180抗体陽性です。

・その他

 発生する部位が限局する限局性類天疱瘡、小型の水疱のみがみられる小水疱性類天疱瘡、硬い結節状になる結節型類天疱瘡、隆起性の病変となる増殖性類天疱瘡などがあります。

 

6.類天疱瘡の診断法

 血液検査で「抗BP180 抗体」が陽性であれば診断できます。このほか皮膚の病理組織で表皮下水疱を認め、病変の基底膜に蛍光抗体直接法という検査で免疫グロブリン(IgG)の線状の沈着を認めます。
 このIgG線状沈着がもっとも確実な所見ですが、臨床的には皮膚の症状と血液検査における抗BP180 抗体からほぼ診断可能です。

 

7.類天疱瘡の治療法

1)全身療法 

 ステロイド内服が基本です。症状の程度によりプレドニゾロン中等量から大量投与を行います。初期量で水疱の新生を抑えられれば2〜3週間継続したのちに5〜10mgの維持量まで漸減します。ステロイド漸減中の再発はあるので、初期量の見極めと減量の方針が重要です。ステロイドの内服は急な中止や減量が早いと再発することがありますので症状の程度に応じて慎重に行います。    このほかに難治な場合には免疫抑制剤の併用、重症例では血漿交換療法、大量ガンマグロブリン療法などを行うこともあります。軽症例にはテトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用、ステロイドの外用も行います。

2)局所療法

 ステロイドが十分に効いて水疱の新生がおさまれば皮疹はなくなっていきますが、最初は水疱とそれが破れたあとのびらんの処置が必要です。外力が当たる部位に水疱を生じることが多いので、外からの刺激をさけるため、絆創膏を直接はらないなどの注意も必要です。
 水疱が大きいときには少しだけ水疱を破って中の水分をだし、その上から抗生物質軟膏やワセリンなどを外用してガーゼで保護します。びらんも同様です。このときも全体をガーゼで包み、その上から絆創膏やネットで固定するなど工夫します。
 また、手足などをぶつけないようにする、こすれるような下着、服、きついベルトなどを避けるなどの日常の注意も重要です。

 

8.類天疱瘡の予後  

 水疱性類天疱瘡は尋常性天疱瘡より治療に対する反応性は概して良好ですが、難治例も存在します。高齢者に好発するため、ステロイドの副作用(易感染性)、糖尿病、胃潰瘍、骨粗鬆症などには注意が必要です。特に細菌、ウイルス、真菌などの感染症については注意が必要です。種々の治療に反応しないような場合は疾患自体のみならず治療による 副作用により命に関わることもあります。

 

9.主な鑑別疾患

1)後天性表皮水疱症

 表皮真皮境界部の真皮側に存在するVII型コラーゲンに対する自己抗体が後天的に産生される自己免疫性水疱症です。膝、肘、手のひら、足の裏などに機械的な刺激によって水疱やびらんを生じます。
 水疱は表皮下水疱で、治ったあとに瘢痕や稗粒腫(はいりゅうしゅ)という白色の丘疹を残すことがあります。水疱性類天疱瘡との鑑別は難しいですが、ステロイド内服の治療では難治です。

2)線状IgA水疱症

 10歳未満に発症する小児型と40歳以上に発症する成人型があります。紅斑と緊満性水疱が全身に多発し強いかゆみを伴います。表皮基底膜部にIgAが沈着するので、IgGが沈着する水疱性類天疱瘡と鑑別されます。治療薬としてジアフェニルスルホン(DDS)が有効です。

3)ジューリング疱疹状皮膚炎

 非常に痒みの強い紅斑が多発して、その辺縁に環状の小水疱が発生します。かゆみが強く治ったあとに色素沈着や色素脱失をきたします。90%以上でグルテン過敏性の腸症状を示します。蛍光抗体直接法において真皮乳頭部に顆粒状にIgAの沈着が認められます。血液検査で好酸球の増加がみられます。

 

《リファレンス》

日本皮膚科学会 類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)診療ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/bullous%20pemphigoid.pdf

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