天疱瘡|clila疾患情報

目次

1.天疱瘡とは
2.天疱瘡の原因
3.相談の目安
4.天疱瘡の診断・検査法
5.疫学
6.天疱瘡の症状
7.天疱瘡の治療法
8.重症化しやすい場合
9.主な鑑別診断

 

1.天疱瘡とは

 自己免疫性水疱症のひとつです。自己目免疫性水疱症とは、自分自身の皮膚組織に対する「自己抗体」によって通常は接着している部位ができなくなり、皮膚の水疱を生じる疾患です。
 自己免疫性水疱症にはいくつかの種類がありますが、天疱瘡というのは、表皮細胞に対する自己抗体が作られることによって生じる疾患です。したがって皮膚の表皮内に水疱を生じます。(これに対して表皮の下、表皮と真皮の間に水疱を生じるのが「類天疱瘡」です。)
 天疱瘡は大きく尋常性天疱瘡のグループと落葉状天疱瘡のグループに分けられます。尋常性天疱瘡の亜型として増殖性天疱瘡、落葉性天疱瘡の亜型として紅斑性天疱瘡があります。天疱瘡全体では尋常性天疱瘡が6割を占めます。
 いずれも表皮内水疱ですので、水疱は弛緩性といって、すぐに破れてしまうような被膜の薄い水疱が特徴であり、びらんと紅斑のみしか確認できないこともしばしばあります。また、皮膚だけでなく、口腔粘膜にもしばしば症状がみられます。
 それぞれの天疱瘡によって特徴があります。

 

2.天疱瘡の原因

 表皮に対する「自己抗体」が原因です。この抗体は「デスモグレイン抗体」というものです。表皮には表皮細胞がつまっており、この細胞同士は「デスモゾーム」という物質で結合しています。
 
デスモゾームを作る成分のうち、細胞を接着するのに特に重要なものはデスモグレイン1(Dsg1)とデスモグレイン3(Dsg3)です、これらに対する自己抗体により表皮細胞同士の接着が離れてしまうために水疱が生じます(棘融解といいます)。
 ただし、このような抗体がなぜできてしまうのかは不明です。

 

3.相談の目安

 水疱症といっても表皮内水疱はすぐに破れてしまうので、紅い発疹のみのように見えることもあります。水疱やびらんが持続的にみられ治りにくい場合、専門医がみればこれらの疾患を疑います。皮膚科専門医以外ではあまり対応しない疾患です。
 痒みも伴うこともありますが、治りにくい、水疱やびらんに気づく場合には積極的に専門医の受診をお勧めします。今は血液検査だけでも高い確率で診断ができます。

 

4.天疱瘡の診断・検査法

 現在は血液検査において「抗デスモグレイン1抗体」「抗デスモグレイン3抗体」を調べて陽性であれば診断可能です。数値は重症度の目安にもなります。
 このほか局所下に病変部の皮膚をとって(皮膚生検といいます)病理組織と蛍光抗体法という検査で病変部の表皮細胞の間に抗体を確認する方法などがあります。
 日本皮膚科学会の天疱瘡診療ガイドラインにおける診断基準があります。

 

5.疫学

 本邦における患者数は届け出数としては4000人ほどです。男女比は男:女=1:1.5と女性にやや多くみられます。
 尋常性天疱瘡が65%、ついで落葉状天疱瘡23%、紅斑性天疱瘡6%、増殖性天疱瘡2%という割合です。稀少難治性皮膚疾患調査研究班で作成された重症度判定基準で分類すると、軽症74.6%、中等度20.4%、重症5.0%とされます。

 

6.天疱瘡の症状

 天疱瘡には4つのタイプがあります。尋常性天疱瘡が最も多い疾患です。
 尋常性天疱瘡とその亜型である紅斑性天疱瘡は、デスモグレイン3のみあるいはデスモグレイン3とデスモグレイン1の両方に対する自己抗体が原因です。これに対して落葉状天疱瘡およびその亜型の紅斑性天疱瘡はデスモグレイン3のみに対する自己抗体が原因です。
 デスモグレイン1は比較的表皮の細胞全体に上の方に優位に分布するのに対し、デスモグレイン3は表皮の中でも下の方、真皮に近いところに主に分布します。このため落葉状天疱瘡のほうがより浅い位置での水疱となり、すぐにびらんとなってしまうため、水疱の状態を確認できることがほとんどありません。皮膚だけでなく、口腔粘膜などにも生じます。

1)尋常性天疱瘡

 70−80%では突然発症する口腔粘膜のびらんが初発症状であり、その後に皮膚に水疱を伴う紅斑が出現します。水疱はどの部位でも発症しますが、圧迫や摩擦の多い背中、臀部、足などが好発部位です。中高年に好発します。
 水疱の被膜は簡単にやぶれて大きなびらんとなり、しばしば疼痛を伴います。健常な皮膚をこすることで同じような水疱を生じます(ニコルスキー現象といいます)。
 口腔粘膜から食道にかけてのびらんが原因で食事が困難となることがあります。

2)増殖性天疱瘡

 尋常性天疱瘡の特殊型です。小さな水疱で始まりびらん面は治らないままに次第に増殖隆起してきます。腋窩や臍部の周囲、眼や口周囲などに好発し悪臭を伴います。

3)落葉状天疱瘡

 非常に破れやすい水疱で簡単に破れやすく、これが破れて葉状のカサついたような状態となり次々とむけていきます。顔面、頭部、背部、胸部などに好発し、進行して全身に広がると紅皮症という全身が赤くなってしまう状態になることもあります。
 尋常性天疱瘡と異なり粘膜には病変はみられません。
 壮年期に好発します。

4)紅斑性天疱瘡

 落葉状天疱瘡の亜型です。頭部、顔面、背部などの脂漏部位と呼ばれる皮膚の皮脂腺が多い部位に後発します。落葉状天疱瘡と同じような浅い位置に生じる水疱で、鱗屑(皮膚のカサカサした付着物)を伴う顔面の紅斑は特徴的で脂漏性皮膚炎様になります。
  粘膜にはみられません。全身性エリテマトーデスという膠原病と合併することがあります。

 

7.天疱瘡の治療法

 ステロイドの全身投与が第一選択です。重症度によって体重1kgあたりプレドニゾロン0.5〜1mg/日の投与を行います。最初の投与量で効果がみられれば、ゆっくり減量して維持量の投与を続けます。
 難治な場合、免疫抑制剤、血漿交換療法、大量ガンマグロブリン療法などを行うこともあります。

 

8.重症化しやすい場合

 いずれも重症度は様々です。重症度の判定には天疱瘡診療ガイドラインの重症度判定基準があります。
 尋常性天疱瘡や増殖性天疱瘡のにおいては皮疹の範囲、びらん面の範囲とともに粘膜病変の合併の程度によります。初期治療への反応が乏しい場合には様々な治療が行われますが、苦慮することもあります。血液検査において、抗デスモグレイン抗体が高値の場合にも重症となりやすく、症状とともに目安になります。
 
落葉状天疱瘡、紅斑性天疱瘡は全身に皮疹が及ぶ紅皮症となるような場合を除き、治りにくいびらんとなることはありません。一般には尋常性天疱瘡よりも少ない副腎皮質ホルモンの治療に反応します。
 ステロイドの全身投与により免疫力が低下します。細菌、ウイルスなどに感染しやすい状態になりますので、特に高齢の方、難治で大量ステロイド投与の期間が長期になる方などは注意が必要です。

 

9.主な鑑別診断

・水疱性類天疱瘡

 高齢者に好発します。天疱瘡と異なるのは、自己抗体が表皮の基底膜に対するものであるということです。このため水疱は、天疱瘡が表皮内水疱であるのに対して、表皮下水疱であり、水疱の被膜が厚くしっかりした水疱になります。浮腫性の紅斑の上に水疱が多発します。血液検査で、抗BP180抗体が陽性になることで診断できます。

・後天性表皮水疱症

 これも表皮と真皮を結合するVII型コラーゲンに対する自己抗体が産生されて表皮下水疱を生じる疾患です。肘、膝、手掌、足の裏などに機械的刺激によってびらんや水疱を生じ、治療後に瘢痕を残します。

 

【リファレンス】

日本皮膚科学会 天疱瘡診療ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913421_1.pdf

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