下垂体性成長ホルモン分泌亢進症|clila疾患情報

【目次】
1.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症とは
2.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の原因
3.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の疫学的整理
4.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の症状
5.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の診断
​​​6.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の治療
7.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の相談目安

 

1.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症とは

成長ホルモンの過剰分泌が原因で発症する疾患です。成人で発症する場合は先端巨大症(アクロメガリー)とも呼ばれ、額、鼻やあご、手足など体の先端が肥大します。一方、骨端線が閉鎖する前、思春期までに発症すると身長が異常に高くなる下垂体性巨人症になります。他に頭痛や高血圧、糖尿病、いびき、多汗などの症状を伴いますが外見の変化はゆっくりと進むので本人や家族は気づかないことがあります。本症を無治療で放置すると心血管障害や悪性腫瘍の合併で平均寿命が約10年短縮すると言われていますが、手術で腫瘍が完全に取り除けた場合は寛解が期待できます。また、手術で治らなくてもきちんと薬物療法でコントロールすれば病気による悪影響を防ぐことが出来る疾患です。本症は指定難病であるため申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成されます。

 

2.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の原因

脳の奥にある脳下垂体と呼ばれる小さな臓器に良性の腫瘍ができることにより成長ホルモンが過剰に分泌されることが主な原因です。成長ホルモンは子供では成長を促し、大人では代謝を調節する役割を担っているので、それが過剰になることで見た目の変化や代謝の異常に繋がります。先端巨大症はほとんどが下垂体の腫瘍によるものですが、成長ホルモンの過剰分泌があるにもかかわらず、画像上、その下垂体腫瘍が見られない場合にはまれにGHRH産生腫瘍(視床下部腫瘍、膵腫瘍など)や、異所性GH産生腫瘍(膵腫瘍、悪性リンパ腫など)が原因となることもあります。また、本症はほとんどの場合、遺伝することはありませんがごく稀に多発内分泌腫瘍Ⅰ型や家族性下垂体腺腫の場合は家族の中で下垂体腫瘍などがみつかることがあります。

 

3.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の疫学的整理

欧米の疫学調査 では、人口10万人あたり4-24人という報告があり比較的まれな病気です。しかし最近の報告ではより多い可能性もあり、見逃されている患者さんも少なくありません。男女の差はなく、40歳代から50歳代の方に多くみられます。まれに10歳から20歳代で急激な身長の増加を契機にみつかることもあります。

 

4.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の症状

症状は、主に手足の容積の増大や、先端巨大症様顔貌と呼ばれる特徴的顔つきの変化(額や目の上がとび出ている・鼻が大きくなった・唇が厚くなった・下あごが出ている・舌が大きくなった)が見られます。また、外見の変化のみならず症状は全身に現れ、発汗過多、頭痛、視力視野障害(視野が狭くなる・視力が下がる)、女性における月経異常、睡眠時無呼吸症候群(いびきが大きい・昼間眠気が強い)、耐糖能異常・糖尿病、高血圧・心筋症・心不全・虚血性心疾患、不正咬合(噛み合わせが悪い)、変形性関節症(関節が痛む)、手根管症候群(指先が痺れる)、尿路結石などがあります。さらに、合併症として​​​​大腸癌・甲状腺癌・乳がんなどの悪性腫瘍全体の発生率が一般人口の約1.5倍程度高いという報告があります。

 

5.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の診断

本症は主な症状である手足の容積の増大、先端巨大症様顔貌、巨大舌のいずれか、(骨端線閉鎖前では著名な身長増加、​最終身長男子:185cm,女子175cm以上)に加えて血液検査と画像検査の結果で診断します。病歴や診察から疑った場合はまずは血液検査で成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF-1、ソマトメジンC:成長ホルモンで増える増殖因子)の血中濃度を調べます。その際、成長ホルモンは変動が大きく1回の検査では判断が難しいので本来抑制されるはずの条件下(経口ブドウ糖負荷試験)で成長ホルモンが低下するかもチェックします。そして​​CTやMRIなど画像検査で脳の検査をし、脳下垂体腺腫の存在が確認されると本症の診断となります。

 

6.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の治療

一般的には原因である脳下垂体にできた腫瘍を取り除く手術を行います。ハーディ法​​(経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術SSS)と呼ばれる鼻から脳へアプローチする手術方法が確立されていて、比較的安全性の高い手術です。特に腫瘍による視交叉圧迫のための視力視野障害があるときには、手術療法が必要となります。
他には、腫瘍が大きくて手術が困難な場合や術後もまだ血液中の成長ホルモンが過剰な場合は通常ソマトスタチン誘導体や成長ホルモン受容体拮抗剤、ドパミン作動薬などの薬物による治療を行います。また、手術後完治せず、薬物療法により効果が不十分な場合で、外科的切除が困難な部位に腫瘍が残っている場合、もしくは再発の場合で同様な条件を満たす場合にはガンマナイフやサイバーナイフといった放射線治療を行う場合もあります。

 

7.下垂体性成長ホルモン分泌亢進症の相談目安

本症の初期症状としては歯並びの変化、舌が大きくなる影響によるいびき、手の指のしびれ、腫瘍の神経圧迫による頭痛や視力低下がありますがも症状が多岐にわたるためさまざまな診療科を受診して、診断までに4~10年かかる場合があります。現在これらの症状があり、原因が不明な場合、本症の可能性について一度内分泌代謝科や内科、脳神経外科への受診をおすすめします。また、前述の通り、外見の変化はゆっくり進むため本人や周りも気づかないことがありますが、例えば以前履けていた靴が履けなくなった、結婚指輪が入らなくなったり、昔の写真とお顔が違うというエピソードから診断に結びつくことがあります。これらのエピソードは本症のサインである可能性がありますので気になる場合は一度医療機関へ相談しましょう。

 

エリクソン安香救急病院で研修後、大学病院や地域のかかりつけクリニックで勤務し内科全般の診療に従事。日本内科学会、消化器病学会、消化器内視鏡学会、日本肝臓学会員。現在はキプロス共和国赤十字Limassol Branchにて活動中。

 

<リファレンス>

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き (平成 30 年度改訂)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/95/S.May/95_1/_pdf/-char/ja

難病情報センター 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3922

 

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