気胸|clila疾患情報

目次
気胸とは
原因
続発性自然気胸と基礎疾患
疫学的整理
海外動向
症状(潜伏期間・感染経路等)
重症化しやすい場合
診断
治療

気胸とは

気胸とは、肺から胸腔内に空気が漏れて、壁側胸膜と臓側胸膜との間に空気が入り肺が虚脱する病態です。気胸は、外傷性気胸と明らかな原因がなく起こる自然気胸とに分けられます。自然気胸は、特に明らかな肺疾患のない健康な人に起こる原発性自然気胸と、慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などの肺疾患が基礎にある人に起こる続発性自然気胸とに分けられます。原発性自然気胸の原因は肺の上部に生じた気腫性嚢胞が破裂することによります。

原発性自然気胸の罹患率、死亡率は低く、典型的には若年者に発症し、17%から54%の再発率であるとされます。

原因

気胸の最も重要な危険因子は喫煙です。ストックホルムでの報告によると、初発自然気胸の患者における喫煙率は88%でした。非喫煙者と比較して、初発自然気胸の相対危険度は女性で9倍、男性で22倍に上昇するとされています。さらに、気胸のリスクと喫煙本数には強い相関がみられました。

気圧の変化や大気汚染の程度、標高も初発自然気胸の危険因子であることが示唆されています。また近年では気胸患者でBMIの低値が多い傾向にあることが報告されています。

自然気胸は、肺の上の方にできやすいブラ(空気のたまった袋)が破れて肺の表面に穴が開き、肺の空気が胸膜腔に入ることが原因です。その他の原因で肺の表面に穴が開くことや外傷で胸壁に穴が開いても同様のことがおきます。

続発性自然気胸の基礎疾患としては慢性閉塞性肺疾患が最も多いですが、特発性肺線維症、膠原病肺、Langerhans細胞組織球症、リンパ脈管筋腫症、異所性子宮内膜症など嚢胞を生じる疾患に好発します。

続発性自然気胸と基礎疾患

肺リンパ脈管筋腫症(pulmonary lymphangioleiomyomatosis: LAM)(見出し3)

LAMは女性のみに発症するまれな疾患で、肺胞・気管支・血管・リンパ管周囲に平滑筋組織が異常に増生し、多発性の嚢胞を生じる結果、高率に気胸を合併します。手術によって破裂した嚢胞の切除や縫縮をするだけでは再発も多く、治療に難渋することが多いです。OK-432 を用いた胸膜癒着療法が有用であるとの報告があります。

月経随伴性気胸

女性の気胸の原因の一つで、反復して発症する疾患に月経随伴性気胸が挙げられます。月経随伴性気胸は横隔膜の異所性子宮内膜症による慢性再発性気胸であり、女性の気胸の5%程度を占めます。月経開始 24 時間前から開始後 72 時間以内に発症する気胸と定義されていますが、月経に依存しない子宮内膜症性気胸の存在を示唆する報告例もあり、未だ定説はありません。発症年齢は 20 歳代後半から閉経年齢まで幅広く存在し、 ピークは 30 歳代後半とされています。発症時期については一般的に月経周期に一致して再発を繰り返すことが知られています。

疫学的整理

我が国の片側自然気胸の人口10万人あたりの年間罹患率は、男性は7.4~18人、女性は1.2~ 6人程度で、やせ型の若年者(34歳以下)が多く、 喫煙が重要な危険因子と報告されています。血胸を1 ~5%程度に合併し、気胸の原因は肺尖部ブラの破裂や臓側胸膜の孔とされています。また、片側自然気胸症例の対側罹患率は14.3% であり、ブラの存在やBMI<18.5が危険因子と報告されています。

海外動向

1975年から1984年のストックホルムでの調査によると、自然気胸の罹患率は男性で10万人あたり18人、女性で10万人あたり6人でした。1991年から1995年における英国での調査では原発性および続発性気胸の罹患率は、男性10万人あたり24人、女性10万人あたり9.8人でした。

症状(潜伏期間・感染経路等)

原発性自然気胸で最も多い症状は、突然の胸の痛みで、呼吸困難を伴ったり伴わなかったりします。通常は、症状は軽く、時には全く欠如していることもあります。対照的に続発性自然気胸では呼吸困難が最もよくみられる症状です。胸痛は突然に発症するのが特徴で、発症した時間と場所まで特定できることが多いとされます。安静時に発症することがほとんどで、重いものを持ったり力仕事をしたりしているときの発症は意外にも少ないです。

症状は通常、経過と共に軽減します。症状の悪化はかなり稀で、悪化する際には血気胸などの合併症が進行していることを示唆します。緊張性気胸では、高度の呼吸困難やチアノーゼ、ショックなど重篤な症状を示します。

初発自然気胸の1年以内の再発率は17%から54%と報告されています。自然気胸の発生年齢は二峰性分布を示しており、15から34歳と、55歳より高齢にピークがあるとされます。

 臨床所見としては、呼吸音の減弱や消失が典型的所見ですが、血行動態の変化や著明な低酸素血症は原発性気胸では稀です。

重症化しやすい場合

気胸の一種であり、患側の胸腔内圧が異常に上昇した結果、患側肺虚脱、横隔膜低位、健側への縦隔偏位、静脈還流障害による心拍出量の低下などをきたしている状態を緊張性気胸といいます。放置すると血圧低下、閉塞性ショックなどの重篤な状態を招きます。胸壁開放創や肺の損傷部位から空気の漏出している部位が一方弁のような構造となっているために、吸気時には胸壁開放創や肺から胸腔内へ空気が流入するものの、呼気時には弁が閉じ、空気が進行性に胸腔内に貯留していきます。このような状態が持続すると患側胸腔内圧は次第に上昇し、緊張性気胸に至ります。緊張性気胸は救急医療における急死の原因の一つであり、対応が遅れれば心停止に至るおそれがあります。

診断

診断科目

気胸は呼吸器外科の診察になります。

診断の方法

X線写真やCTで、胸部の胸膜腔内に空気があることを見つければ診断できます。治療方針の決定には原発性、続発性、外傷性、医原性の気胸を鑑別することが重要です。

原発性自然気胸が疑われる患者に対する、標準的な検査は胸部レントゲン写真正面像です。診断が困難な症例では側面像を組み合わせて診断されます。レントゲン像では、胸膜ラインの偏位、胸壁と胸膜間に肺を認めないといった所見を認めます。

レントゲン写真よりも気胸を検出する感度が高い検査は胸部CTですが、多くの症例でレントゲン写真だけで診断が可能であり、若年者が多くを占める気胸患者において過剰なCT検査は避けるべきと考えられます。

気胸の重症度は、胸膜癒着がない場合には以下の三つに分類されます。 

 軽度: 肺尖が鎖骨レベルまたはそれより頭側にあるもの、あるいはこれに準ずる程度。
   中等度:軽度と高度の中間程度。
   高度: 全虚脱またはこれに近いもの。

胸部X線所見では、肺の虚脱度の判定のみならず、縦隔の反対側への偏位や横隔膜の低位など緊張性気胸の所見の評価も行います。

治療

気胸の治療方針は、その虚脱度や気胸が初発か再発かなどによって異なります。治療としては安静、脱気や胸腔ドレナージ、手術があります。気胸が初発で虚脱が軽度の場合には安静で経過を観察します。虚脱度が高度の場合は胸腔ドレナージが必要です。

自然気胸治療ガイドラインでは,以下のような場合を手術適応としています。

  1. 再発を繰り返す症例
  2. 空気漏れの持続例
  3. 両側性気胸
  4. 著明な血
  5. 膨張不肺
  6. 社会的適応

更に初発であっても明らかなブラが確認される場合は比較的適応としています。
 

【参考文献】

1)ERS task force statement: diagnosis and treatment of primary spontaneous pneumothorax.
       Tschopp JM, et.al .Eur Respir J. 2015 Aug;46(2):321-35.
2)呼吸器専門医テキスト 工藤翔二 他 南江堂
3)日呼外会誌 33 巻 1 号74-79
4)日呼外会誌 23巻5号 6-11
5)https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0220.html日本救急医学会
6)日本気胸・囊胞性肺疾患学会編.気胸・囊胞性肺疾患 規約・用語・ガイドライン.東京:金原出版;2009

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