産後うつ|clila疾患情報

【目次】
1.  産後うつとは
2.  産後うつの原因
3.  マタニティブルーと産後うつ
4.  産後うつの疫学的整理
5.  産後うつの症状、相談目安
6.  産後うつかもしれないと思ったら
7.  産後うつの相談先
8.  産後うつの病院受診
9.  産後うつの診断方法
10.産後うつの予防

 

1.産後うつとは

出産をきっかけに、慣れない育児に対する不安や緊張、生活リズムの変化などにさらされるなど、大きな環境の変化について行けないことで不安、憂うつな気分になりやすいなどの精神的な変化、眠れない、食欲がないなど身体的な変化、思考力や集中力がないなど行動的な変化が現れ、育児や生活、仕事に支障が出る状態を産後うつといいます。

 

2.産後うつの原因

・ホルモンバランスの変化
・慣れない育児に対する緊張や疲れ、不安
・睡眠不足などの様々なストレスの多い状況
・家事や育児の負担の大きさ
・人間関係の問題、孤独感、周囲のサポート不足
・精神疾患の既往歴
・パートナーが産後うつ
・10代の妊娠、高齢出産、シングルマザー、望まない妊娠
・未熟児、多胎児、障害児、慢性疾患のある子供、育てにくさのある子供
など多様な原因が挙げられます。

 

3.マタニティブルーと産後うつ

マタニティブルーは妊娠・出産に伴う、ホルモンバランスの変化が背景として起こるため出産後のお母さんは誰でもなる可能性のあるものです。多くは特別な対応をしなくても産後1か月ころまでに自然に終息するものになります。
一方、産後うつは精神的、身体的、行動面に及ぶ複数の症状が出て進行しやすく、その症状により育児や生活、仕事に支障が出る病的な状態です。未治療では治癒するまでに数か月~数年かかることもあります。仕事と家事の両立の難しさから、近年、男性も産後うつになることがわかっています。産後鬱の発症時期に男女差があり、女性は出産3カ月以内、男性はパートナーの出産3~6カ月後が最も発症率の高い時期になります。
マタニティブルーと産後うつともに、涙もろさ、気分の不安定さ睡眠障害など、共通の症状もあります、症状の出始めは両者の区別が難しいです。

*非常に稀ではありますが、産褥精神病といって、産後1か月以内に妄想や、ときに幻覚を訴えて異常な興奮状態となり、錯乱を引き起こす最重度の病態もあるので注意が必要です。

 

4.産後うつの疫学的整理

産後女性のうち、マタニティブルーは30~70%、産後うつは10~15%で、産褥精神病は0.1%の確率で発症するとされています。妊娠中か出産後1年以内のパートナーがいる男性では10%の方がうつ状態になるとり、また女性が産後うつになると、男性が産後うつになる確率は24~50%ほど上昇するとされます。

 

5.産後うつの症状、相談目安

疲れやすい、気力がわかない、これまで楽しかったことが楽しく感じられない、日常的に気持ちが沈み憂うつな気分になる、食欲が無い、涙もろい、眠れない、または寝すぎてしまう、イライラする、思考力や集中力の減退、決断ができない、自分には価値が無いと思う、うまくいかないのは自分の責任だと思うなどの症状が挙げられます。このような症状があるときが相談の目安になります。さらに重い症状で、妄想、著しい抑うつ状態、食事が取れない、赤ちゃんのお世話ができない、死にたいと繰り返し思う、赤ちゃんに危害を加えてしまうなどの症状がでた場合は、急いで相談をする必要があります。もし可能であれば直接、精神科を受診されることをお勧めいたします。

 

6.産後うつかもしれないと思ったら

育児中の方には、慢性的な寝不足や疲労はつきものですが、憂うつな気分やおっくうな気持ちで育児や家事をこなすことは、母親の体と心にも大きな負担となります。また母親の気持ちが不安定だと、赤ちゃんも不安定になりやすく、泣き止まないなど育児しにくい状況になり、さらに悪循環に陥ります。少しでも状況を改善するために一人で悩まず周囲への相談や受診を考えましょう。

 

7.産後うつの相談先

育児がつらいと感じたり、産後うつが疑われる症状があったりする場合、以下のような身近な所に気軽に相談してみましょう。
・お住まいの自治体の育児相談の窓口に連絡をしてみる
・赤ちゃん訪問に来た職員に相談する
・出産した産院、産婦健診、母乳外来などでスタッフに相談する、問診票にお悩みを記入する
・メンタル不調等でもともと通院していた場合は、その主治医に相談する
・近所の心療内科、精神科を受診する
・オンライン診療や医療相談を利用し、遠隔での投薬やアドバイスを受けてみる

 

8.産後うつの病院受診

病院を受診をすると薬を処方されて授乳を禁止させられるのでは?と心配される方もいらっしゃるとは思いますが、実際はすぐに薬を処方されるとは限りません。主治医と相談の上、治療方針が決まるので希望があれば伝えましょう。
赤ちゃんのお世話や自分の身の回りのことすら手につかない眠れない・食欲がない等の症状が強い時は、一刻でも早く症状を抑えて普段の生活を取り戻すために、薬が処方されることがあります。うつは一度なると繰り返しやすいので、初めてなったときにきちんと治し、再発を予防していくことが大切です。

 

9.産後うつの診断方法

産後うつの一次スクリーニングとして、“エジンバラ産後うつ病質問票”が多く使用されています。これは、うつ症状の有無や睡眠がとれているかなどに関する10項目からなる質問票で、日本でも産婦健診での必須スクリーニングとして利用されています。合計点9点以上がスクリーニング陽性になります。
甲状腺や脳下垂体機能の異常など産後に起こりやすい病気によっても、産後うつ病に似た症状が引き起こされることもあります。このため産後うつと内科的な病気を鑑別するために血液検査や画像検査を行う必要がある場合があります。

 

10. 産後うつの予防

・(無理のない範囲で)バランスの良い食事を心掛け、休めるときには休む
・不足しがちな栄養成分をサプリメント等で補う
(マルチビタミン・ミネラル、葉酸、EPA/DHAなど)
・肩の力を抜いて、好きなことをする時間を持つ
・出来ないことではなく、出来ていることに目を向ける。自分に自信を持つ
・一人で育児や家事を頑張り過ぎない、悩まない
・悩みの相談先をみつける(家族、友人、育児相談窓口など)
・自治体の育児支援サービス(育児や家事に関する援助)を上手に利用する
・専門家には、「育児がつらい」「赤ちゃんが可愛いと思えない」等、ありのままの気持ちを相談する

産後うつにならないような習慣を作るために、できることから実践してみましょう。もし身近に育児で悩んでいる方がいたら、優しい表情と笑顔で接し話を傾聴し、育児を少しでも楽にする方法を一緒に考えることが大切です。

 

久保田 英里循環器内科医国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

<リファレンス>
平塚市 産後うつ対策/産後メンタルヘルス相談

http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/kodomo/page-c_00224.html

石狩振興局 産後になりやすいこころの病気
https://www.ishikari.pref.hokkaido.lg.jp/hk/hgc/health/matanitey-utu.html

 

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