我慢しないで!PMSの仕組みを知って対策を!【医師にインタビュー】

記事要約

月経前に襲ってくる『頭痛や乳房の痛み、腹部の張り、落ち込みやイライラ』といった不快症状。月経以上にこの月経前の症状に悩まされるという方も少なくありません。仕事や家事に支障が出ている…でも女性だし仕方ないと思っていませんか?その不快症状は、【PMS(月経前症候群)】かもしれません。今日は、毎月辛い思いをするこのPMSについて、先生の実体験も加えお話をお聞きしました。 取材させて頂きましたのは産婦人科医の原先生です。

PMSとは?

まずは、PMSの定義から見ていきましょう。PMSとは、月経前3日~10日間に続く、身体的・精神的不快症状を指します。多くの場合、月経が始まると収まります。月経が来れば収まるので、気のせいだと思っていたり、いつものことだから病院に行くほどじゃないと考える方も多いかもしれません。ですが、不快症状が毎月繰り返し3ヶ月以上続いている場合は、PMSを疑って、一度受診することをお勧めします。

PMSの中でも、気分の落ち込みやイライラ・不安、情緒不安など精神症状が強く、日常生活にも支障をきたすような場合は、『月経前不快気分障害(PMDD)』が考えられます。PMDDは、抑うつ障害に分類されているものなので、無理をせず早めに受診をするようにしましょう。

「毎月のことだし」「病気ではないから」「これくらいで病院なんて」と考えず、医師と一緒に対策を考えていくことが、不快症状を軽減させる近道です。悩むよりも婦人科の扉を叩いてみるといいですね。

 PMSの原因は?

PMSを引き起こす要因について、はっきりとした見解は出てないのが現状ですが、女性ホルモンとの関係があると考えられています。ホルモンの中でも注目するのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の2つ。

排卵直後から増えるプロゲステロンは、月経前(7~8日程度)から減少し始め、このプロゲステロンの減少により、不安を取り除く神経伝達物質のセロトニンが作用しにくくなります。気分や行動を調整するエストロゲンは排卵前に多く分泌され、こちらもセロトニンの調整に関係しているため、PMSの要因といわれています。

また、自律神経の不調もPMSを引き起こす要因だという見解もあります。忙しくなったり、悩みを抱えている時は悪化の原因となるため、月経前は出来る限り心身の緊張を緩和する副交感神経が優位になるよう、リラックスできる環境で過ごしてほしいと思います。

 PMSの治療方法を見てみましょう

PMSは、明確に「この数値が出たらPMS」というように、確定診断が出来るものではありません。お一人おひとりの環境や症状も異なるため、問診・カウンセリングを重視しています。

問診・カウンセリングを通して、生活習慣の指導や運動指導、症状に合わせ薬を処方することもあります。薬は、ピルや漢方、頭痛を伴う場合は鎮痛剤、むくみが酷い時は、利尿剤なども処方しますし、精神的症状が出ている時は、抗うつ剤や精神安定剤など症状を和らげる療法がおこなわれることがあります。そのほか、食生活や睡眠、ストレスについてのアドバイスも同時に行い、薬だけではなく、土台から治療していくことが重要になります。

例えば、カフェインの過剰摂取や、たばこの吸い過ぎ、睡眠不足は土台作りのアドバイスとしてお伝えしています。特に明確な基準があるわけではなくあくまで目安ですが、コーヒーでいえば妊婦さんのカフェイン摂取を参考に2~3杯程度を限度と考えておくといいでしょう。睡眠不足や疲れをカフェインを摂取することで乗り越えるのではなく、寝たり休むという身体からの声を聞いてもらうことが大切だと考えます。投薬は、症状が落ち着いたらそこで断薬するということではなく、ある一定期間様子を見ながらお薬を変えたり、少しずつ量を減らしたりしていくことが必要です。

予防方法は?

土台を整えることが大切と言われているPMS。自身で出来る予防方法がどんなものがあるのでしょうか?今日は医師自身の体験や、患者さんが改善に向かった方法についお伝えします。主に3つのアプローチになります。

栄養からのアプローチ

PMSに関する栄養素として、ビタミンB6、マグネシウム、ビタミンE、たんぱく質、鉄、葉酸が挙げられます。たんぱく質は、脳内の神経伝達物質に重要な働きをしますし、イライラや情緒不安定を和らげるB6も欠かせません。必要な栄養素を意識的に摂取するよう栄養状態を見直していきます。取り入れやすい方法としては、サラダにお豆腐を入れてみたり、ジャコや鰹節をかけてみたり、またビタミンEを採るため、ナッツをおやつ代わりにつまんだりすることでも、簡単に取り入れることが出来きます。

身体ケアからのアプローチ

運動習慣のある方は、ない方よりもPMSの症状が軽いと言われています。血流を促す運動や、自律神経を整える運動として、ウォーキングやジョギング、ストレッチやヨガなど、リラックスできると感じられる運動を取り入れることでも効果が得られる場合があります。そして呼吸を意識していくことも大切です。

普段何気なくしている呼吸ですが、「吐く」を意識することで、交感神経と副交感神経のバランスが整いやすくなります。難しく考えずに、寝る前の10回くらいから実践してみてください。

更に、健康な身体作りには欠かせないのは睡眠です。睡眠はホルモンバランスに多大な影響を与えています。明るい光は、眠りに重要なメラトニンの生成を妨げるので、寝るまでの時間はライトを一段暗くしたり、ブルーライトから離れるなど光を調整してみましょう。ちなみにハワイなどでは、夕食の後は、照明を少し弱めたり、電球を1つ抜いて、夜の時間を過ごす家庭が多いようです。上質な眠りのために、是非試してみてください。

マインド(メンタル)からのアプローチ

“自分のやりたいことをする”この言葉は、ともすれば我が儘にとらえてしまう人もいるかもしれません。

特に日本の女性は周囲に合わせることが得意なので、つい「みんながこうしているから」と心の声を聴かずに、行動することも少なくないのではないでしょうか?ですが実はこの「こうなりたくないからする」「周囲がそうするからする」という行為は、無意識にストレスがある状況になっていることが多いのです。

この無意識のストレスを軽減させることで、PMSの症状が緩和すると考えられています。一つ例としてお話しますと、『コロナ禍でお父さんがリモートワークになった。家にいるので自分も部屋に閉じこもってばかりじゃ悪いと思い、部屋を出てコミュニケーションを取ろうとしたところ、反対に衝突が起きて気分がより沈んでイライラしてきた。』これは、【〇〇すべき。〇〇しなければならない=お父さんが家に居るんだから、自分の部屋に閉じこもっていてはいけない。(本当は面倒だけどしなければいけない)】という行動をした結果、ストレスを感じてしまった。それがPMSを悪化させる要因になってしまった。という例です。

こういう時『自分はどうしたいか』その心の声に従って無意識のストレスを減らしていくことで、心の反応が変わってきます。一瞬PMSと関係ないように感じてしまうかもしれませんが、この″他人の価値観”はストレスを感じ、症状を引き起こすことにつながると考え、自分はどうしたいかを聴ける心を持ってほしいと思います。

まとめ

毎月憂鬱になるPMS。受診や投薬で効果がある症状(病気)であると同時に、自分自身で心の声に耳を傾け、生活習慣や考え方を変えていくこともとても大きな意味をもつ病気です。『ホルモンバランス不調を引き起こすストレスはどこから来ているのか、』『本当はどうしたいのか?』『自分にとって一番大切なことは何か』そんな目的を洗い出し、やりたいことのために行動できる自分になることで、生体反応は変化してきます。大きな目的でなくて構いません。

日常の小さなことを変え、気持ちの変化に気づいてあげる。そんなことから始めてみてください。最後に明日からできるアクションとして1つご紹介します。それは【寝る前の感謝日記】。寝る前に、その日あった3つの感謝を、日記に書いてから眠るという方法です。今日一日を良い日だった!感謝する!と思って眠りにつくと、ネガティブな感情の想起が少なくなり、人生を肯定的に捉えられると言われています。マインドアプローチでPMSの予防から、皆さんの人生がより良いものへと変化していくため、是非オンラインカウンセリングもご活用ください。

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