原発性硬化性胆管炎|clila疾患情報

【目次】
1.原発性硬化性胆管炎とは
2.原発性硬化性胆管炎の原因
3.原発性硬化性胆管炎の疫学的整理
4.原発性硬化性胆管炎の症状
5.原発性硬化性胆管炎の検査
6.原発性硬化性胆管炎の診断
7.原発性硬化性胆管炎の治療
8.原発性硬化性胆管炎の予後
9.原発性硬化性胆管炎の合併症

 

1.原発性硬化性胆管炎とは

原発性硬化性胆管炎炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)は稀な疾患であるが近年増加傾向にある。病理学的に慢性炎症と線維化を特徴とする慢性の胆汁うっ滞を来たす疾患であり、進行すると肝内外の胆管にびまん性の狭窄と壁肥厚が出現する。 胆管上皮に強い炎症が惹起され、胆管上皮障害が生ずる。我が国における原発性硬化性胆管炎の診断時年齢分布は二峰性を呈し、若年層では高率に潰瘍性大腸炎、クローン病等の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)を合併する。持続する胆汁うっ滞の結果、肝硬変、肝不全に至ることがある。

 

2.原発性硬化性胆管炎の原因

病因は未だ不明である。炎症性腸疾患(IBD)を合併することが多いことから、大腸粘膜における防御機構の破綻による門脈内への持続的細菌流入や免疫異常、遺伝的異常などが推定されているが解明には至っていない。

 

3.原発性硬化性胆管炎の疫学的整理

2018年に厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班(以下、厚労省研究班)が行った全国疫学調査によると、全国のPSC患者数は推定約2,300名、人口10万人当たりの有病率は1.80であった。2007年に行った全国疫学調査では国内患者総数1,200名、有病率0.95であり、11年間でおよそ2倍に増加している。2018年の疫学調査では男女比は約1:0.9であり男性患者が女性患者よりも多い。好発年齢は若年層(20歳~40歳)および高齢層(65歳~70歳)であり、年齢分布が二峰性をとる。

 

4.原発性硬化性胆管炎の症状

PSCに特異性の高い症状はなく黄疸や皮膚掻痒感で発症することが多い。一方、無症状のまま、人間ドックや健診で肝機能障害や腹部エコー検査の異常を指摘され、医療機関を受診し診断に至る症例が半数以上を占める。胆管が狭くなり胆汁の流れが滞ることにより細菌感染が生じた際は、発熱や腹痛等の胆管炎症状を伴うことがある。無治療のまま経過した場合又は治療に抵抗性のある場合は、これらの症状を繰り返しながら肝機能が徐々に低下し、肝硬変へと進行する。肝硬変に至った場合は、食道・胃静脈瘤、腹水貯留、黄疸、 肝性脳症等を伴い肝不全へと進行する。またPSCは胆管癌を合併することも比較的多い。

 

5.原発性硬化性胆管炎の検査

<血液検査>

PSCを疑う場合、胆汁うっ滞に起因する症状と血液検査からである。血液検査では、胆汁うっ滞を反映して胆道系酵素であるALP、γGTPが上昇するが、診断時ALP値が基準値上限の2倍以上であった症例は全体の半分程度にとどまり、ALPの上昇が比較的軽度である症例も少なくない。抗核抗体やp-ANCAなど自己抗体の陽性率は高くない。

<画像検査>

CT、腹部超音波検査で胆管の拡張が認められれば、二次検査でMRCPやDIC-CTが施行される。特徴的な胆管像が診断には重要であり、主には短い狭窄である「帯状狭窄band-like stricture」 とその後の拡張「憩室様突出diverticulum-like outpouching」 がさまざまに組み合わさり、さらに胆管の枯れ枝状変化「剪定状所見pruned tree appearance」が加わる。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)は診断には必須ではないが、診断が確定しない際には三次検査としてERCPと関連する検査手技を施行する。ERCPでは造影剤の注入により胆管内圧が上昇し狭窄などの所見がより明瞭に描出される。また管腔内超音波(intraductal ultrasonography;IDUS)や経口胆道鏡によって得られる所見は診断に有用である。超音波内視鏡による補助的な診断も有用であり総合的な診断を行う。これらの検査は胆管癌との鑑別にも有用である。

曲型的な胆道像は肝内および肝外胆管のびまん性狭窄(multifocal structuring)と数珠状所見(beaded appearance)である。

①ビーズ状所見:短い狭窄や輪状狭窄(annular stricture)と正常部が交互にみられる所見.
②帯状狭窄(band-like stricture):非常に短い狭窄帯.欧米では1/5 にみられるという.
③憩室様変化(diverticulum-like outpouchings):欧米では1/4 程度にみられる.
④枯れ枝状変化(pruned tree sign):肝内胆管が数・サイズとも減少する.肝内胆管に変化のある症例ではよくみられる.
⑤shaggy sign:肝外胆管の胆管壁にみられる毛羽立ち様の壁不整所見.典型的症例では頻度が高い.

図;胆管像によるIgG4関連硬化性胆管炎(RSC)と原発性硬化性胆管炎(PSC)の比較

( J Gastroenterol 53 ; 1006― 1034 : 2018より引用)

 

6.原発性硬化性胆管炎の診断

<診断基準>

診断においてはIgG4関連硬化性胆管炎、胆管炎や胆管結石、胆管癌、虚血など様々な疾患に続発する二次性硬化性胆管炎、悪性腫瘍を除外することが重要である。

A.診断項目

I.大項目 

   A. 胆管像 

    1) 原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認める。 

    2) 原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認めない。 

   B. アルカリフォスファターゼ(ALP)値の上昇 

II.小項目 

   a. 炎症性腸疾患の合併 

   b. 肝組織像(線維性胆管炎fibrous cholangitis/onion skin lesion)

B.診断

下記による確診・準確診のみを原発性硬化性胆管炎として取り扱う。

大項目

小項目

診断

A.1

+B

確診

A.1

+B+a+b

確診

A.1 

+a

確診

A.2

+B+a

準確診

 

大項目

小項目

診断

A.2

+B+a+b

確診

A.2

+B+a

準確診

A.2 

+B+b

準確診

A.2

+a+b

準確診

A.2

+a

疑診

A.2

+b

疑診

 

7.原発性硬化性胆管炎の治療

治療に関しては病勢コントロールのための薬物治療、黄疸・胆管炎、掻痒感などに対する内視鏡治療、掻痒感の対症療法、肝移植がある。有効性が確認された治療薬はなく、肝移植が唯一の根治療法である。
薬物治療はウルソデオキシコール酸が主な治療法であり肝胆道系酵素の改善を認めるが予後の改善は認めない。免疫抑制剤、ベザフィブラート、抗菌薬でも肝胆道系酵素改善効果が示されているが予後に与える影響は明らかではない。

掻痒感に対する治療はコレスチラミン、ナルフラフィンがあるが実際の有用性は低い。掻痒感の薬物治療は特効薬がないためコントロールには難渋することが多い。
掻痒感がありdominant strictureを有する者は内視鏡治療の適応と考えられる。内視鏡治療では胆管狭窄に起因する症状を適応とし、内視鏡的胆道ドレナージでは改善し ない黄疸は肝不全と考えられる。臨床的にはドレナージチューブを留置した枝のさらに末梢に狭窄があると効果が乏しく、dominant stricture への治療法としてはバルーン拡張のみを推奨している。またステントを留置すると閉塞などによる胆管炎の頻度が増加すると報告されている。

肝移植に関しては肝不全例(Child C の非代償 性肝硬変)のみならず、Child B 以下であっても胆管炎を繰り返す症例、破裂、破裂の可能性の高い食道静脈瘤、難治性腹水、制御不能な掻痒感を呈する症例も適応である。

 

8.原発性硬化性胆管炎の予後

無症状のまま経過する場合、またウルソデオキシコール酸の服薬で良好な経過をたどる場合がある。

本邦におけるPSCの予後は 5 年・ 10 年生存率は 81.3%、69.9%、肝移植なし5 年・ 10 年生存率は 77.4%、54.9% であった。但し、診断時に無症状の患者に限定すると肝移植なし5年・10年生存率は87.3%、66.5%、診断時に無症状且つ若年者であれば91.3%、73.5%であった。予後に関する因子の研究 は多数なされているが、年齢と肝不全の進行度が関与していると考えられる。

 

9.原発性硬化性胆管炎の合併症

PSC の合併症では、炎症性腸疾患が有名であるが欧米の合併率60-80%に対し、本邦では40%である。しかし若年者に限ると61%となり、欧米と同様と考えられる。胆管癌の合併は5-14%と報告されている。胆管狭窄による急性胆 管炎は診断時に約6%合併するという報告がある。肝硬変へ移行する門脈圧亢進症の合併や年齢も加味された骨代謝障害の合併も認められる。

 

姫野愛子 消化器内科医  2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

 

<リファレンス>

原発性硬化性胆管炎 難病情報センター(指定難病94)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3967

日本消化器病学会誌 2019;116:631―638
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/116/8/116_631/_pdf/-char/ja

原発性硬化性胆管炎診断基準2017
PSC診断基準(日本語版)_2017(1).pdf (hepatobiliary.jp)

Isayama H, Tazuma S, Kokudo N, et al : PSC guideline committee Members : Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan) Research Project, The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group. Clinical guidelines for primary sclerosing cholangitis 2017. J Gastroenterol 53 ; 1006― 1034 : 2018

Tanaka A, Tazuma S, Okazaki K, et al : Nationwide survey for primary sclerosing cholangitis and IgG4-related sclerosing cholangitis in Japan. J Hepatobiliary Pancreat Sci 21 ; 43―50 : 2014 

Mizuno S, Hirano K, Isayama H, et al : Prospective study of bezafibrate for the treatment of primary sclerosing cholangitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci 22 ; 766―770 : 2015

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