肺動脈性高血圧症(PAH) |clila疾患情報

【目次】
1.  肺動脈性高血圧症(PAH) とは
2.  肺動脈性高血圧症(PAH) の原因
3.  肺動脈性高血圧症(PAH) の相談目安
4.  肺動脈性高血圧症(PAH) の疫学的整理
5.  肺動脈性高血圧症(PAH) の症状
6.  肺動脈性高血圧症(PAH) の検査
7.  肺動脈性高血圧症(PAH) の重症度分類
8.  肺動脈性高血圧症(PAH) の治療法
9.  肺動脈性高血圧症(PAH) の日常生活の注意点
10.肺動脈性高血圧症(PAH) の診断の難しさ

 

1.肺動脈性高血圧症(PAH)とは

心臓から肺に血液を送るための血管である「肺動脈」の血圧が高くなることで、心臓と肺の機能障害をもたらす進行性の病気です。何らかの原因で肺動脈が狭くなることや肺動脈が狭くなったり硬くなったりすることで、血液の循環器が悪くなる病気です。このように肺動脈内の圧力が異常に上昇してしまう状態を肺動脈性高血圧症(PAH) といいます。pulmonary hypertensionの略語はPHです。

 

2.肺動脈性高血圧症(PAH)の原因

・特発性(原因不明)
・遺伝性
・薬剤/毒物(食欲抑制薬など)
・各種疾患に伴う肺高血圧症
 膠原病、HIV感染、門脈圧亢進症、先天性シャント性心疾患、住血吸虫症

などが挙げられます。

 

3.肺動脈性高血圧症(PAH)の相談目安

体動時の息切れ、疲れやすい、動悸、胸の痛み、突然気が遠くなる、咳が続く、お腹が張った感じがするなどの症状を認めたときが受診の目安となります。

 

4.肺動脈性高血圧症(PAH)の疫学的整理

2019年の指定難病受給者数によると、日本では3934人の方が難病指定を受け治療を受けています。男女比は、女性が男性の2倍以上と女性に多いです。女性は、加齢と共に増え、70歳代がピークになっています。一方、男性では、20歳代が多く、40歳代まで減り、その後70歳代まで増えるという二峰性になっています。

 

5.肺動脈性高血圧症(PAH)の症状

この疾患は最初の段階は無症状です。病状が進行すると、自覚症状として、労作時呼吸困難、息切れ、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽、腹部膨満感などがみられます。症状が出現したときには、既に高度の肺高血圧が認められることが多く、労作時の突然死を起こす危険性もあります。また心臓(特に右心室)にも負担がかかることで、右心不全を引き起こすこともあります。その場合、他覚症状として頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などがみられます。

 

6.肺動脈性高血圧症(PAH)の検査

血液検査、心電図、胸部レントゲン検査などで肺高血圧が疑われる場合には、心臓超音波検査を行います。最近の心臓超音波検査の機器には肺動脈圧を推定する機能がついているものが多く、肺高血圧症の診断に有効な装置です。肺高血圧症の疑いが強い時には、診断を確定させるために心臓カテーテル検査を行います。具体的には、右心カテーテル検査を行って、安静仰臥位での平均肺動脈圧が25mmHg以上と定義されています。

 

7.肺動脈性高血圧症(PAH)の重症度分類

NYHA心機能分類と、WHO肺高血圧機能分類をもとに作成した研究班の重症度分類を用いて、新規申請時はStage3以上の方が対象となります。更新時はStage3以上、NYHAII度以上又は肺血管拡張薬を使用している場合が対象となります。

 

8.肺動脈性高血圧症(PAH)の治療法

肺の血管を拡げて血液の流れを改善させる肺血管拡張薬を用いることにより、ある程度症状を改善することができます。プロスタサイクリン受容体作動薬、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬などが用いられます。補助的な治療法として、在宅酸素療法、抗凝固療法、利尿剤、強心薬などが必要に応じて使用されます。内科治療で効果が出ない場合は、肺移植などの手術治療の適応となります。肺高血圧症の原因となる他の病気(膠原病、先天性心疾患、肝疾患など)があれば、併せてその病気に対する治療も行います。

 

9.肺動脈性高血圧症(PAH)の日常生活の注意点

肺動脈性高血圧症(PAH) の方の場合、以下のような注意点について、あらかじめ主治医と相談する必要があります。

①安静を保つ:身体的にも精神的にも常に安静にすることがとても大切です。具体的には、過度な運動は避ける、ストレスをためない、よく睡眠をとる、友人や家族と積極的に交流したり社会的活動に参加するなどして前向きな姿勢を保つなどしましょう。

②仕事(学校):病気の具合や仕事の内容にもよりますが、体調を考慮しながら続けることは可能です。特に階段の上り下りや、荷物の運搬などの動作は負担がかかりやすいため避けた方がよいです。もし体調を崩して、一度、休職(休学)したとしても、プロスタサイクリン持続静注療法などの治療によって体調が軽快し、社会復帰をされている方々もたくさんいます。職場環境や就労(就学)時間に関して、会社(学校)とあらかじめ相談をしておくとよいでしょう。

③運動:運動をすると、心拍数と肺動脈圧が大きく上昇して病状を悪化させる恐れがあります。主治医とよく相談してから、散歩などの軽めの運動から始め、筋力の回復を見ながら、時間をかけて長く速く歩けるようにしていきましょう。決して無理をせずに注意深く行う必要があります。

④旅行:疲れないように無理のないスケジュールをたてましょう。旅行中に必要な薬などが不足しないように留意してください。また飛行機の機内は気圧が低くなるため、心臓や肺に負担がかかりますので、飛行機に乗る予定のある時には、あらかじめ主治医に相談するようにしましょう。また飛行機に乗る場合は、あらかじめ航空会社に連絡し、座席や機内に持ち込む機器(酸素ボンベなど)についての相談も必要です。

⑤妊娠・出産:妊娠や出産は肺動脈性肺高血圧症が悪くなり、“避けるべきこと”とされています。

挙児希望がある場合は、主治医とよく相談しましょう。

⑥食生活:心不全の進行を防ぐために、水分と塩分を制限する必要があります。また、油分の多い食べ物も控えめにした方がよいでしょう。またワーファリンなどの服用する薬剤との関係で、納豆など控えなければならない食品が出てくる場合もありますので、主治医の指導に従いましょう。

⑦お酒:お酒を飲むと、脈拍や心拍出量の増加、体の血管拡張が起こり、不整脈が出現する頻度も上がります。控えたほうがよいでしょう。

⑧タバコ:喫煙は呼吸機能を低下させ、病態を悪化させるので禁煙をしましょう。

 

10.肺動脈性高血圧症(PAH)の診断の難しさ

発症初期は無症状なため、ご自身で気づくのも難しいかもしれませんが、胸の症状やむくみ、咳などの症状がある場合や、肺動脈性高血圧症(PAH) の原因となるような合併症がある場合は早めに循環器内科や呼吸器内科を受診されるのがよいでしょう。

 

久保田 英里 循環器内科医 国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

<リファレンス>

難病情報センター

https://www.nanbyou.or.jp/entry/253

 

日本呼吸器学会

https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=30

 

国立循環器病研究センター病院

http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/pph/

 

千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学 特発性肺動脈性肺高血圧症・遺伝性肺動脈性

http://www.m.chiba-u.ac.jp/dept/respir/sinryo/ph/pah/

 

    コメントを書くにはが必要です。

    カテゴリー

    タグ