膿疱性乾癬|clila疾患情報

【目次】

1.膿疱性乾癬とは
2.膿疱性乾癬の原因
3.疫学的整理
4.膿疱性乾癬の症状と診断
5.膿疱性乾癬の治療
6.膿疱性乾癬の経過
7.まとめ

 

1.膿疱性乾癬とは

 膿疱性乾癬(汎発型)は、発熱と全身の紅斑で発症し、皮膚上に膿疱が多発するのが特徴的です。「乾癬」には、最も発症頻度の高い尋常性乾癬の他に亜型として、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬があります。膿疱性乾癬にもいくつかの病型があり、特定難病に指定されるのは汎発型です。

 経過中に、全身炎症反応に伴って臨床検査異常を示し、しばしば粘膜症状、関節炎を合併するほか、まれに眼症状、心・循環器不全、呼吸器不全、二次性アミロイドーシスを合併することがあります。膿疱型薬疹(急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)を含む。)や角層下膿疱症を鑑別する必要があります。

 膿疱性乾癬(汎発型)でみられる膿疱は無菌性膿疱であり、病理組織学的には Kogoj 海綿状膿疱と呼ばれる角層下膿疱です。尋常性乾癬の皮疹が先行する場合としない場合があります。膿疱性乾癬はさらにいくつかの病型に区別されます。膿疱性乾癬の皮疹が、体の一部だけ(手のひら、足の裏、指先など)にみられる病型(限局型と呼ばれます)や、環状の乾癬皮疹に小膿疱が混じる病型があります。

 また、尋常性乾癬の患者さんに一時的に膿疱を生じることがあります。これらの病型は、通常、全身症状は軽度で、一時的であるため特定疾患の対象外です。一方、発熱、全身倦怠感、発赤や四肢のむくみとともに全身に膿疱が出現する重症な病型があり、「膿疱性乾癬(汎発型)」と呼ばれます。また、妊娠中に生じる膿疱性乾癬(汎発型)は、「疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)」という病名で呼ばれることがあります。

 

2.膿疱性乾癬の原因

 一部の膿疱性乾癬(汎発型)患者さんには、 炎症反応を抑える物質の一つである「インターロイキン(IL)-36受容体拮抗分子(IL36Ra: IL-36受容体アンタゴニストと呼びます)」が遺伝的に欠損している場合があり、 炎症を起こすCARD14遺伝子の機能が高いことが分かりました。感染症や妊娠などを契機として,皮膚の細胞やリンパ球が分泌するある種の物質(サイトカイン)が高熱の原因となり、血液中の白血球を皮膚に呼び寄せて膿疱を形成すると考えられています。

 また、一部の膿疱性乾癬(汎発型)や尋常性乾癬では遺伝することが知られ、いくつかの遺伝的因子があることが分かってきました(乾癬疾患感受性遺伝子:PSORSと呼ばれています)。乾癬で知られている他の遺伝子異常とIL36RN遺伝子やCARD14遺伝子異常が組み合わされた場合にどのような病型をとるのか未だ不明です。しかし、これらの遺伝子が正常であっても膿疱性乾癬(汎発型)が発症することも多いので、未知の遺伝的要因やその他の要因が発症に関連していると考えられています。

 

3.疫学的整理

 2018年のデータでは膿疱性乾癬は乾癬全体の約 2.3%とされるまれな疾患です。発症年齢の分布は男性では 30~39 歳と 50~69 歳に 2 つのピーク、女性では 25~34 歳と 50~64 歳に 2 つのピークがありますが、小児期を含め、ほぼ全体に分布しています。尋常性乾癬が男性に 2 倍発症しやすいのに対し,膿疱性乾癬(汎発型)は女性にやや多い(男 1:女 1.2)とされます。平成30年度末時点の膿疱性乾癬の特定疾患医療受給の対象となる患者さんは全国で約1,800人です。1年間に80人くらいの膿疱性乾癬患者さんが新たに特定疾患医療受給の対象になっており、徐々に増加しています。

 

4.膿疱性乾癬の症状と診断

 最初に熱感とともに全身に紅斑が出現します。発熱がみられ、浮腫や関節痛を伴うこともあります。それに引き続いて、紅斑の上に膿疱が出現してきます。皮膚に膿疱が多発すると、皮膚のバリア機能が低下し、浮腫が強くなり、体内の水分バランスが崩れやすくなります。また、高い熱が出ることが多く、体力を消耗してしまいます。こういった状態が長く続くと、心臓や腎臓に負担がかかり、特に高齢の患者さんでは命にかかわることもあります。

 診断基準や重症度評価として、以下のような項目があります。

 

(1) 主要項目

  1. 発熱あるいは全身倦怠感等の全身症状を伴う。
  2. 全身または広範囲の潮紅皮膚面に無菌性膿疱が多発し、ときに融合し膿海を形成する。
  3. 病理組織学的に Kogoj 海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明する。
  4. 以上の臨床的,組織学的所見を繰り返し生じる. ただし、初発の場合には臨床経過から下記の疾患 を除外できること。

 

以上の 4 項目を満たす場合を膿疱性乾癬(汎発型) (確実例)と診断する。

主要項目 2)と 3)を満たす場合を疑い例と診断する。

 

(2)検査所見

重症度判定および合併症検索に必要な臨床検査所見には以下のようなものがあります。

 

  1. 白血球増多,核左方移動
  2. 赤沈亢進,CRP 陽性
  3. IgG 又は IgA 上昇
  4. 低蛋白血症,低カルシウム血症
  5. 扁桃炎,ASLO 高値,その他の感染病巣の検査
  6. 強直性脊椎炎を含むリウマトイド因子陰性関節炎
  7. 眼病変(角結膜炎,ぶどう膜炎,虹彩炎など)
  8. 肝・腎・尿所見:治療選択と二次性アミロイドーシスの評価

 

(3)膿疱性乾癬(汎発型)に包括しうる疾患

以下は膿疱性乾癬に包括されます。

 

  1. 急性汎発性膿疱性乾癬:膿疱性乾癬(汎発型)の典型例
  2. 疱疹状膿痂疹:妊娠、ホルモンなどの異常に伴う汎発性膿疱性乾癬
  3. 稽留性肢端皮膚炎(手足に膿疱を生じる)の汎発化:厳密な意味での本症は稀であり、診断は慎重に行う。
  4. 小児汎発性膿疱性乾癬:circinate annular formは除外する。

 

一過性に膿疱化した症例は原則として本症に包含されないが、治療が継続されているために再発が抑えられている場合にはこの限りではない。

 

(4)除外診断

  1. 尋常性乾癬が明らかに先行し,副腎皮質ホルモン剤 などの治療により一過性に膿疱化した症例は原則として除外しますが、皮膚科専門医が一定期間注意深く観察した結果、繰り返し容易に膿疱化する症例で、本症に含めた方がよいと判断した場合は本症に含みます。
  2.  環状型は通常全身症状が軽微なので対象外としますが、明らかに汎発性膿疱性乾癬に移行した症例は本症に含みます。
  3.  一定期間の慎重な観察により角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosis: AGEP を含む)と診断された症例は除きます。

 

(5)重症度診断

 皮膚症状(紅斑、膿疱、浮腫)および全身の炎症に伴う検査所見(発熱,白血球数,血清 CRP 値,血清アルブミン値)の評価をスコア化し、その点数を合計することにより軽症、中等症と重症に分類しています。新重症度判定基準では、「浮腫」を皮膚症状の項目に挙げています。その理由は、死亡例の解析によ り心・血管系障害などの循環不全が死因として多く、 また呼吸不全をきたすような症例でも浮腫が重要な症候と判断されるためです。

 なお、軽快者とは、1)疾患特異的治療をしなくても皮膚症状の再燃を認めないか、尋常性乾癬に移行した者で、2)急性期、慢性期の合併症(関節症,眼症状など)を認めず、3)日常生活に支障ない状態が 1 年以上 続いていること、と定義されています。

 

5.膿疱性乾癬の治療

 患者さんの年齢、妊娠や他の病気の有無、重症度、使用する薬剤の副作用などを総合的に判断して治療法を選択する必要があります。膿疱性乾癬(汎発型)のほとんどの患者さんでは、入院治療が必要です。安静を保ち、高熱に対して解熱剤を使用し、点滴で水分バランスを補正し、皮膚のバリア機能を補うために軟膏を外用します。

 膿疱性乾癬では、ビタミンA酸の誘導体であるエトレチナート(商品名チガソン)という内服薬が最も使用されています。免疫抑制剤であるメトトレキサートやシクロスポリンが使われることもあります。エトレチナートやメソトレキサートは妊婦・授乳婦には使用できません。特に、エトレチナートを内服した場合には男性で半年間、女性は2年間の避妊が必要です。

 近年では、生物学的製剤のうちTNFα阻害薬も用いられます。さらに、血液を体外で専用カラムに活性化した好中球や単球を吸着させる療法(顆粒球・単球吸着除去療法:GMA)が保険適用になりました。紫外線治療(PUVAやNBUVB)が併用される場合もあります。これらの治療が無効なときや、患者さんの全身状態によっては、副腎皮質ホルモン剤の全身投与が使用されることもあります。さらに、これらの治療法を組み合わせることもあります。

 急性期には浮腫のために心臓や腎臓に負担がかかり、急性期に不幸な転帰をとる場合もあります。全身管理を含めた早期に適切な治療をすることが必要です。膿疱性乾癬(汎発型)の直接死因は心・循環不全が 多く、全身管理と薬物療法が必須です。 

 

6.膿疱性乾癬の経過

 皮膚症状が有効な治療法の組み合わせによって改善しても、皮膚に紅斑や膿疱が繰り返し出現することが多く、継続した治療が必要になります。また,通常の乾癬(尋常性乾癬)に移行し、感染症や薬剤投与などをきっかけに膿疱が再発することがあります。

 皮膚症状のほかに、しばしば関節炎や、まれに目の症状や粘膜病変を起こします。関節炎や全身炎症反応が長期にわたると、関節や背骨の変形や、まれにアミロイドが腎臓、消化管や心臓に沈着するために内臓の症状を起こすことがあります。

 

7.まとめ

 膿疱性乾癬(汎発型)は発熱や膿疱を伴う紅斑という症状が特徴的ですが、他にも様々な症状をきたす比較的まれな疾患で、診断に苦慮することもあります。また、全身症状も強く急速に悪化することがあります。急性期には適切な全身管理とともに皮膚症状のコントロールが必要です。特殊な薬剤の使用に際して薬剤使用上の注意も多いので、適切な診断、治療が行える皮膚科専門医がおり、全身管理が可能な設備のある病院での治療が望ましい疾患です。

 

 

永井 弥生   皮膚科医  皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

<リファレンス>

日本皮膚科学会 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/nouhouseikansenguideline.pdf

膿疱性乾癬(汎発型) 指定難病37 (難病情報センター)

https://www.nanbyou.or.jp/entry/313

 

膿疱性乾癬(汎発型) 小児慢性特定疾病情報センター

https://www.shouman.jp/disease/details/14_04_009/

 

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