逆流性食道炎、胃食道逆流症|clila疾患情報

【目次】
1.逆流性食道炎とは
2.逆流性食道炎の原因
3.逆流性食道炎の症状
4.逆流性食道炎の診断
5.逆流性食道炎の治療
6.逆流性食道炎の生活習慣改善と予防

 

1.逆流性食道炎とは

正確には胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)と言います。胃と食道のつなぎ目の部分は、胃液が食道に逆流するのを防ぐために開いたり閉じたりする弁の役割をしている括約筋があります。この括約筋が加齢等の理由によりうまく働かなくなると胃酸を含んだ胃液が逆流します。蠕動運動が正常であれば、逆流しても胃に戻す力がありますが蠕動運動が低下していると胃酸や内容物が長時間食道に留まってしまいます。食道には胃酸から守る粘液がないため食道に長く胃酸や内容物が留まることで炎症を起こしてしまいます。胃食道逆流症は胃の内容物の食道への逆流が過剰に起こることで、不快な症状を生じたり食道粘膜に炎症が生じる病気です。現在では成人の10~20%がこの病気にかかっていると推測されています。内視鏡検査で食道粘膜にびらんや潰瘍などの異常所見が見られるものを逆流性食道炎と言います。

 

2.逆流性食道炎の原因

胃食道逆流症は、「下部食道括約筋の機能低下」「胃酸過多」「食道の知覚過敏」のいずれかがあると起こりやすいとされています。下部食道括約筋は、食道と胃の境目にある筋肉で食べ物や胃酸が食道へ逆流しないように働いています。下部食道括約筋の機能が低下するると食べ物や胃酸は逆流しやすくなります。食べ過ぎや脂肪の過剰摂取をすることでゲップが出やすくなり、胃酸も上がりやすくなる上に下部食道括約筋の機能低下の原因となります。また、肥満、締め付ける衣服、猫背などで腹圧が上がると胃を圧迫するため、下部食道括約筋が押し広げられることにより逆流しやすくなります。また、妊娠中は大きくなった子宮が胃を圧迫するため逆流しやすくなり、特にお腹が大きくなってくる妊娠中期以降に表れやすくなります。胸部と腹部を分けている横隔膜部分の靭帯や筋肉が緩み胃と食道のつなぎ目が上にせり上がる食道裂孔ヘルニアという病気のある方も逆流防止の機能が弱まり、胃酸がより食道に逆流しやすくなり、さらに食道に長時間留まるため胃食道逆流症になりやすいとされています。
そして胃酸が増えると、下部食道括約筋がゆるんだときに上がってくる胃酸の量も多くなります。たんぱく質は胃酸の分泌を刺激するため肉をよく食べる生活をしていると胃酸の分泌量が増えます。一方、胃酸が多く上がっていなくても症状を感じてしまう人がいます。それを「食道の知覚過敏」と言います。食道の知覚過敏はストレスと関係していると言われており、ストレスが多い人も胃食道逆流症になりやすいと考えられています。胃食道逆流症のリスクが高い方の特徴として肥満や夜食習慣がある方、飲酒習慣がある方などが挙げられます。

 

3.逆流性食道炎の症状

典型的な症状は胸やけと呑酸です。呑酸とは喉の辺りや口の中が酸っぱいと感じる、あるいは胃の内容物が逆流する感じがする症状のことです。胃のムカつきや重い感じなどを胸やけと表現する患者さんも見受けられます。また食道症状以外に、食道外症状が出現することもあります。食道症状は、食道内に胃酸が逆流した際に食道粘膜䛾知覚神経が刺激されて生じる症状で、胸焼けや呑酸、胸痛等があります。食道外症状は胃液が咽頭、喉頭、中耳内にまで逆流して、逆流した酸により粘膜が傷害されて生じる症状で、咽頭炎 喉頭炎、慢性咳嗽、歯牙酸蝕症候群、副鼻腔炎、特発性肺線維症、反復性中耳炎等があります。
また、逆流性食道炎はバレット食道(Barrett食道)の原因になり、バレット食道があるとバレット腺癌という食道の癌ができることがあります。食道はもともと扁平上皮という組織でおおわれていますが、食道の粘膜が胃酸や胆汁にさらされ続けることで、酸に弱い扁平上皮という組織が酸に強い円柱上皮という組織に置き換わることがあります。このような食道をバレット食道と言います。

 

4.逆流性食道炎の診断

自覚症状と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)により診断されます。自覚症状があり内視鏡検査で逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)の所見を認めれば比較的容易に胃食道逆流症と診断が出来ますが、逆流性食道炎はあるけれども自覚症状のない人、自覚症状はあるけれども逆流性食道炎のない人(非びらん性胃食道逆流症)もいます。これらはすべて胃食道逆流症と診断されます。
内視鏡検査は必ずしも必要ではありませんが、胃癌や消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、萎縮性胃炎(慢性胃炎)など他の病気ではないことを確認するためにもなるべく検査を受けることが望ましいとされています。治療的診断法として胃酸を強く抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用し、約4週間で症状が改善した場合は胃食道逆流症と診断しても良いとされています。検査を受けずに診断され、治療をしても症状が完全に良くならない場合は他の病気が存在している可能性があるため、その際は内視鏡検査をお勧めします。内視鏡検査後より投薬治療を開始し、きちんと内服しても症状が続く場合には、食道運動障害、知覚過敏による胃酸以外の逆流による症状、好酸球性食道炎といわれる特殊な食道炎等の場合があるため、再検査・精密検査を要することがあります。

逆流性食道炎の程度は内視鏡所見により改訂ロサンゼルス分類に基づいて分類することが多いです。GradeはNからDになるにつれて重症になっています。

  • Grade N:内視鏡的に変化を認めないもの
  • Grade M:色調が変化しているもの
  • Grade A:長径が5mmを越えない粘膜障害があるもの
  • Grade B:少なくとも1ヵ所の粘膜障害の長径が5mm以上あり、それぞれ別の粘膜ひだ上に存在する粘膜障害が互いに   連続していないもの
  • Grade C:少なくとも1ヵ所の粘膜障害が2条以上のひだに連続して広がっているが、広がりが全周性の75%未満のもの
  • Grade D:全周の75%以上の粘膜障害を認めるもの

 

5.逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療は生活習慣の改善と薬物療法を行います。プロトンポンプ阻害剤(PPI)もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-cab)という胃酸の分泌を抑える薬の投与が治療の基本となります。PPIやP-cabによる治療で約90%以上の患者さんにおいて粘膜傷害や症状の改善が見込めます。しかし、10%程度の方は症状が改善しない場合があり、その場合は薬の種類や量の調整が必要になります。内視鏡で見た際に粘膜傷害がある「逆流性食道炎」よりも、典型的な自覚症状があるにもかかわらず粘膜傷害を認めない「非びらん性胃食道逆流症(NRED)」の方が薬物療法が効きにくく、60%程度の方でしか症状が改善しないと報告されています。また、薬物療法で粘膜傷害や症状が消失しても、薬を中止すると粘膜傷害や症状が再発することも多く、長期間薬を飲み続ける維持療法が必要になることがあります。その他、酸を中和したり、酸による刺激を弱める薬や消化管運動改善薬、漢方薬(六君子湯)を症状出現時に補助的に使うこともあります。

 

6.逆流性食道炎の生活習慣改善と予防

食道の下部には胃の内容物の逆流を防ぐための下部食道括約筋がありますが、日常生活における動作や食事の影響でこの機能を低下させてしまうことがあり、それらを続けていると胃食道逆流症の症状が出現したり、悪化したりします。具体的には、生活面で避けたほうが良いものとして、①腹部の締め付け、②重い物を持つ、③前かがみの姿勢(猫背)、④右を下にして寝る(右側臥位)、⑤肥満、⑥喫煙などが挙げられます。また食事面で避けたほうが良いことは、①過食、②就寝前の食事、③高脂肪食、④甘いものなどの高浸透圧食、⑤飲酒、⑥チョコレート、⑦コーヒー、⑧炭酸飲料、⑨みかんなどの酸度が高い柑橘類などがあげられます。これらの生活習慣や食生活をあらためることでどの程度症状の改善につながるかは個人差がありますが、肥満の解消(体重減少)と上半身を10~15cm程度やや起き上がらせて寝る姿勢(頭側挙上)は改善効果が高いと言われています。また、食事により胃酸が分泌されるため食後は胃酸逆流が起こりやすい時間帯であり、食べてすぐに寝ると逆流性食道炎が発生しやすくなるため避けるほうが良いでしょう。

 

姫野愛子消化器内科医2010年国立大学医学部卒業。消化器内科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み一般内科及び消化器内科疾患を対応。内科認定医、消化器病専門医、内視鏡専門医を取得。

 

<リファレンス>

胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021  日本消化器病学会

日本消化器病学会誌 2000;97;1243-1251
Yoshida M, Kinoshita Y, Watanabe M, et al : JSGE Clinical Practice Guidelines 2014 : standards, methods, and process of developing the guidelines. J Gastroenterol 2015 ; 50 : 4―10

日本内科学会誌 101:480~487,2012
Kinoshita Y, et al : Asymmetrical circumferential distribution of esophagogastric junctional lesions : anatomical
and physiological considerations. J Gastroenterol 44: 812-818, 2009

 

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