続発性無月経|clila疾患情報

目次

続発性無月経とは

原因・リスク因子

疫学的整理

受診・相談の目安

診断の方法と治療

社会的影響とその対策

 

続発性無月経とは

続発性無月経とは、「通常の月経周期の後3ヶ月以上月経が来ない状態」のことを指します。

*15歳以上になっても初経が現れない場合は「原発性無月経」といい、続発性無月経とは分けて考えます。ここでは、続発性無月経について記載しています。

 

原因・リスク因子

以下のような原因が考えられます。

【妊娠】

一番頻度の高い原因です。

【視床下部性無月経】

比較的よく見られる原因です。大きく次のような分類に分けることができます。

①機能性視床下部性無月経
視床下部性無月経においては、視床下部で産生されるGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)のパルス分泌の低下がみられます。その変化がゴナドトロピン(FSH,LH)の分泌低下を引き起こし、卵巣の機能が抑制されることで、無月経が起こると考えられています。

GnRH分泌異常のリスク因子として、摂食障害、過剰な運動、ストレスなどが挙げられます。

それらに関連して体重減少がみられることもありますが、体重減少がニューロペプチドY、βエンドルフィンの分泌を促進し、それらがGnRH分泌に抑制的に働くことが分かっています。

また、体脂肪が減少している場合には、脂肪組織からのレプチン産生が少なくなることで、GnRH分泌に異変が起こることも知られています。

 

②視床下部腫瘍
①に比べると稀な原因ですが、頭蓋咽頭腫、悪性リンパ腫、サルコイドーシスなどの頭蓋病変の影響で、GnRH分泌が低下し無月経が起こることがあります。頭蓋病変による脳圧亢進症状(頭痛・嘔気・嘔吐等)や身体所見が疾患を疑う契機になります。

 

③全身性疾患
全身性疾患(全身性消耗性疾患‥例えば悪性腫瘍、自己免疫疾患等)に体重減少が伴う時に、視床下部性無月経が起こることがあります。無月経、体重減少だけでなく、発熱や痛みを伴うような時には、原因検索のための精密検査が必要です。

【下垂体疾患】

無月経を起こす下垂体疾患の中では、下垂体腺腫、特にプロラクチン産生腺腫が頻度の高い原因として知られています。プロラクチンの上昇によってGnRH分泌が低下するために、無月経が起こると考えられています。他には、特徴的なものとして、頭痛、乳汁漏出(高プロラクチン血症によるもの)、視覚系の症候等が時に見られます。

【ドパミン分泌の影響】

下垂体から分泌されるプロラクチンは、視床下部から分泌されるドパミンによってネガティブフィードバックを受けているため、ドパミンの分泌低下(例:薬剤の影響、甲状腺機能低下症等)、またはドパミンが機能しない状態(外傷、頭蓋内占拠性病変の影響等)において、プロラクチンの上昇が誘発され、無月経を来すこともあります。

【甲状腺疾患】

甲状腺ホルモン分泌の異常が起こると、視床下部のTRH(甲状腺ホルモン刺激ホルモン放出ホルモン)・下垂体のTSH(甲状腺刺激ホルモン)・プロラクチン分泌及び、卵巣の排卵機能にも影響が及び、無月経も含めた月経不順が起こりやすいと考えられています。無月経以外の甲状腺疾患の症状や徴候は次の通りです。

(甲状腺機能亢進症の場合)神経過敏、動悸、多動、多汗、振戦など

(甲状腺機能低下症の場合)体重増加、浮腫、便秘、過多月経、徐脈など

【多嚢胞性卵巣症候群(PCOS: Polycystic Ovarian Syndrome)】

性成熟期女性によく見られる疾患です。PCOSと診断される女性のうち約20%が無月経を経験しているという報告もあります。疾患の特徴としては、高アンドロゲンによる男性化徴候(体毛、痤瘡(ニキビ)等)が見られる事、また肥満やインスリン抵抗性との関連も示唆されています。

【早発卵巣不全】

卵巣の女性ホルモン分泌機能の低下により、40歳を下回る時期から月経異常(稀発月経・続発性無月経)が見られる時に、早発卵巣機能不全と診断されます。卵母細胞数の減少・枯渇が見られることも多く、診断が確率した場合には妊娠の成立が困難とも言われています。

【以前の産科疾患の合併症】

稀な原因ではありますが、治療や検査の目的で何らかの子宮内操作が行われた際(分娩時の大量出血、流産手術等)に子宮内膜の基底層が障害を受け、その後子宮内に癒着が生じてしまうと、その癒着によって月経周期における子宮内膜の正常な構造変化が起きにくくなり、随伴して稀発月経や続発性無月経が見られるようになることもあります(アッシャーマン症候群)。

 

疫学的整理

続発性無月経の原因に関する1980年代、1990年代、2000年代の報告によると、原因の比率はあまり変わらず、おおよそ以下の通りです。

・視床下部性:35%

・下垂体性:17%

・卵巣性:40%

・子宮性:7%

・その他:1%

ただし、思春期に起こる無月経の場合は、初経後数年の間にみられやすい排卵機能の未熟性の影響で、卵巣性の比率が上記よりやや高めになることが推察されます。

 

受診・相談の目安

無月経状態が遷延すると、

・原疾患の悪化

・将来の妊孕性への悪影響

・早発閉経に伴う心血管、骨代謝、脂質代謝への悪影響

等が懸念されます。

早期に診断し、医学的介入を行うことで、上記の予防が可能になることも期待できるため、以下のような時には、原因検索のための受診が推奨されます。

・月経が3ヶ月来ない場合

・頻発月経(周期が24日以内)または稀発月経(周期が39日以上)でも、出血が通常月経様ではなく、それが6ヶ月以上続いている場合

 

診断の方法と治療

続発性無月経の原因は多岐にわたるため、無月経以外の症状・徴候、病歴情報が診断には必須であり、以下の項目について確認する事が大切です。

【症状・徴候】


・体重の減少(低いBMI値)、または増加
・乳汁漏出
・頭痛
・視野欠損
・全身倦怠感
・多尿
・多飲
・低エストロゲン状態が引き起こす症状:ホットフラッシュ
・膣の乾燥・不眠・性欲の低下など
・皮膚の変化(多毛、痤瘡等)

【病歴】


・初経以降の月経の傾向
・(もしあれば)基礎体温記録
・妊娠分娩歴(分娩時合併症等)
・子宮手術歴
・既往歴、現在の内服薬
・身長と体重、また体重の増減
・精神的ストレスの有無
・生活習慣・職業:激しい運動負荷はないか(例:アスリートなど)

まず、妊娠の可能性を除外するために、必要な際には妊娠検査薬を行います。陽性であれば、妊娠として対応を進めます。
妊娠が否定的である場合には、上記情報を元に身体診察、血液検査、画像検査などを組み合わせて診断を進めていきます。

血液検査においては基本検査を
・FSH
・E2
・TSH
・PRL

とする事が多く、男性化徴候がある場合には血中テストステロン濃度の測定も追加します。そして、それら血液検査の結果を参考に、診断を進めていきます。

【治療方法】

(1)PRLが高値である場合

プロラクチン値は、時間帯、睡眠、運動、食事、ストレスなどの影響で一時的に上昇することもあるため、初回検査において高値を認めた場合には、再度測定を行います。同様に高値である場合には、高プロラクチン血症・下垂体腺腫の疑いとして、頭部MRI検査の実施を検討します。

 

(2)PRLが正常値である場合

①TSHが異常値である場合

甲状腺疾患として精密検査を進め、各甲状腺疾患の状態にあった治療を行います。

 

②TSHが正常である場合

  • FSHが高値である場合は、E2の低値が確認されれば早発卵巣不全と診断します。挙児希望のある場合には、高度不妊治療が必要となる可能性が高いため、早期に不妊専門医に相談することが望ましいと考えられます。挙児希望のない場合には、早発閉経の弊害(更年期症状、骨粗鬆症の発現、脂質レベルの異常、心血管イベントリスクの上昇等)を予防するために、ホルモン補充療法が一般的に勧められます。
  • FSHが低〜正常値である場合、E2が低値であれば、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と考えます。機能性視床下部性無月経、全身性疾患の存在、及び視床下部/下垂体疾患を疑い、必要な精密検査を進めます。
  • FSHが低〜正常値、E2も正常値である場合には、男性化兆候を伴い軽度の血中テストステロン値が高ければ、多嚢胞性卵巣症候群の可能性が高いと考えます。ただし、男性化兆候が著しく、テストステロン値も高値であれば、副腎疾患なども懸念する必要があります。
  • 全ての検査結果が正常値であり、子宮内手術の既往がある場合には、まず消退出血が起こるかどうかの確認のために、まずプロゲステロン試験を行います。プロゲステロン試験で反応がない場合には、エストロゲン・プロゲステロン試験を行います。どちらの試験にも反応がない場合には、子宮鏡検査を行い、子宮内癒着の確認を行います。

 

社会的影響とその対策

月経随伴症状や月経周期に関連する心身の不調が、学業、仕事のパフォーマンスに影響を与えていると感じている女性が多いにも関わらず、女性の社会進出を促進するための社会政策においては、子育てと仕事の両立のみに焦点が当てられている事が未だ多い、という現状があります。

ただ、ヘルスリテラシーの高い女性ほど、病状がある場合に正しい情報を得て望ましい対応ができ、仕事や生活へのダメージを少なくすることができる傾向にあるといった、行動科学分野の研究成果の認知も進む中(3、女性特有の疾患についての啓蒙や教育活動が、学校や会社などの枠組みを通して、社会全体で広がりつつあります。

続発性無月経も含めた、月経周期に関連する問題への社会認識がさらに進むことで、以下のようなことが期待できると考えられています。

・女性の健康行動の促進

・女性の健康の増進

・女性の社会における活躍の推進

 

リファレンス

(1)産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020

(2)American Family Phsycian Foundation https://www.aafp.org/afp/2013/0601/p781.html

(3)働く女性の健康増進白書2018年

https://byl.bayer.co.jp/html/pdf/collaboration/20180125.pdf

 

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