ステロイド外用薬の効果・副作用|疾患情報【おうち病院】

記事要約

皮膚病変の多く、特にアトピー性皮膚炎をはじめとした湿疹性の疾患では、ステロイドをしっかり使って早く皮膚の炎症を抑えるのが一般の皮膚科医が行う一番標準的な治療です。ステロイド外用剤の治療方法・付き合い方のコツなどを、解説。

ステロイド外用薬は湿疹の標準的な治療

ステロイドは悪いもの、なるべく塗らない方がよい、というイメージを持っている方がいらっしゃるでしょうか。確かにステロイドはなるべく塗らないようにしよう、という方針が主流だった時期もあります。でも、少なくとも30年以上前のことです。

最初に結論を言うと、皮膚病変の多く、特にアトピー性皮膚炎をはじめとした湿疹性の疾患では、ステロイドをしっかり使って早く皮膚の炎症を抑えるのが一般の皮膚科医が行う一番標準的な治療です。

もちろんステロイドの塗り薬だけでは治りにくいこともあるので、アトピー性皮膚炎をはじめとした慢性の湿疹病変ではその他の治療も選択することはあります。こういった方針については、基本となるガイドラインにも示されています。

*湿疹というのは広く皮膚の炎症を起こす疾患で、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、手湿疹、脂漏性皮膚炎等々、様々な疾患を含みます。経過により急性湿疹、慢性湿疹といった分け方をすることもあります。

ステロイドは塗りたくない!?

医師が患者さんから「ステロイドは塗りたくない」と言われて、ステロイド拒否の患者さん、としてレッテルを貼ってしまったり、他の治療はできないとか、一方的に終わりにしてしまうとしたら、それは望ましい医師の態度ではありません。

もしあなたがステロイドは塗りたくない、と思うのだったら、それはなぜでしょうか。

「こんな話を聞いた」「嫌だと思っていたのに何も言われずに処方されたことがある」「以前に副作用が出た」「副作用でひどくなった人を知っている」などステロイド治療を嫌だと思う理由があるはずです。そういった理由をまずきちんと伝えてください。本来は医師がきちんと「なぜ嫌なのか?」理由を尋ねて患者さんの理解をした上で、標準的な方針、どこまでならステロイドを使わずに治療が可能かなど、選択肢を示しながらお伝えすることができるのです。

短期で治る疾患には早めに使う

原因がはっきりしていて、短期で必ず治せるという疾患には、早くに使って症状を抑えて治してしまうのが一番です。例えば、虫刺され、あせも、接触皮膚炎などです。副作用を心配するような期間や量を使うことがないのです。

長期は副作用が心配?

では、長期にステロイドの塗り薬を使うと副作用が必ず出るのか、というとそんなことはありません。もちろん、一般的に言われている副作用が起こる可能性はあります。たとえば、皮膚が薄くなる、血管が透けてみえる、皮膚の感染症にかかりやすくなる、などです。ですから無用に長期に使い続けることは好ましくありません。

しかし、これらは一般的には、適切な使い方をしていれば対処できることです。感染症などの問題は通常よりは少し高い確率で起こりえますが、早期に気づいて加療をすればよいのです。皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬を必要とする場合には、きちんと経過をみながら使用することは十分に可能であり、一番の治療方針です。

アトピー性皮膚炎とステロイド外用薬

もっとも患者さんが心配するのは、長期にわたって外用しなければならないアトピー性皮膚炎の場合かもしれません。若い方が多いということもあります。アトピー性皮膚炎においても、治療の中心はステロイド外用薬、というのは日本皮膚科学会のガイドラインでも示されてます。

アトピー性皮膚炎でアレルギーの要因が強い場合にはアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を避ける、皮膚の保湿などの保護をしっかり行う、といった方針も重要です。また、難治の場合には免疫抑制剤やその他の外用薬もあります。

以前のようなステロイドパッシングは少なくなりましたが、ひとたびステロイド外用薬やそれを処方する医師に不信感をもってしまうと医療そのものにも不信となり、民間療法に走ってひどい状態になってしまうといったケースも少なからずあります。

選択肢は増えていますが、まずは標準的な治療方針を理解した上で、医師としっかり相談しながら治療を進めましょう。

また、誤解されやすい方針もありますので記載しておきます。

(1)非ステロイド外用薬なら良い、というのは間違い

非ステロイド外用薬は市販薬としても入手できますが、これはアトピー性皮膚炎を悪化させることもあることは知られています。ステロイド外用薬を使わないのであれば、ワセリンや保湿剤で十分です。

(2)炎症を抑えきれない弱いステロイド外用薬はむしろアトピー性皮膚炎を悪化させることがある

ステロイド外用薬には強さによってランクがあります。顔面には弱めのものを使います。しかし、弱いものなら良いと思って使うかもしれませんが、弱いものを漫然と使うことでむしろ炎症が長引いてしまうこともあります。身体の病変であれば強めのステロイドで短期間に炎症を抑えたほうが結果的には副作用も少なくすむことが多いのです。

(3)薬を混ぜて薄めても副作用が軽くなるわけではない

皮膚科医はよく、ステロイド軟膏をワセリンや保湿剤と混ぜて処方することがあります。薄めることで弱める、というよりは、量を増やす、チューブよりも容器にいれることで使いやすくする、などの目的が主であり、ステロイドの強さを弱めるというわけではありません。 

ステロイド外用薬への誤解

ステロイドを塗りたくない、という理由はいろいろです。その中には明らかに医学的には間違った情報を信じてしまっている場合もあります。心配な点はきちんと医師に話して納得できる、最適な医療を受けられるようにしてください。

(1)ステロイドを塗ると色が黒くなるのではないか?

皮膚は炎症が起こると赤くなり、治ってくると茶色い色素沈着となります。そのまま時間が経過すれば色はもとに戻ってきますが、その間に炎症を繰り返したり、なかなかおさまらないで症状が続くと元の色に戻らずに黒ずんでしまうことがあります。

薬のためというよりは炎症がおさまらない、繰り返すことにより色素沈着が残りやすくなるのです。

(2)副作用が怖い

ステロイド外用薬の副作用は非常に少なく、強さと症状の程度をきちんと見極めて適切な使い方をすれば通常は問題はないのです。もちろんステロイドを塗っているときにより発症しやすい感染症(特に夏季のとびひやヘルペス感染症など)はありますので注意しておかしいと思ったら早期に受診することが大事です。また無用に健常な皮膚に塗り続けると皮膚が薄くなってきてしまいます。特に高齢の方では顕著ですので、軽快したら弱める、やめる必要があります。

(3)塗っているうちに効かなくなってだんだん強い薬になってしまうのではないか?

ステロイドはその皮膚の状態にあった強さのものを選んでなるべく短期で使い、強さを弱めていくのが基本です。十分に適切な強さのものが使われずに治らないと言ったケースも少なからずみられます。しっかり塗って症状をおさえ、かゆくて辛い、という症状は取り除きましょう。 

まとめ

ステロイド外用薬は正しくしっかり使う、といっても、わからないこと、不安なことがあるのに、しっかり聞いてくれない、話してくれない医師では信頼して治療を受けることができませんね。特に長期に付き合っていかなければならない疾患の場合など、納得できる医師をみつけることはもちろんですが、正しい情報を得て、自分の疑問をしっかり伝えられる患者となってください。 

<リファレンス>

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018

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