いぼとは|疾患情報【おうち病院】

記事要約

いぼとは?尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とは?いぼの原因・治療方法・診断のコツを解説

いぼとは

俗称で「いぼ」と呼ばれるものには実はいくつかの疾患が含まれています。一番代表的なのは「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)という、ウイルスによって生じるものです。ウイルスの種類により異なる病名の「俗称いぼ」があり、また加齢によるものなど、ウイルス性ではないものも「いぼ」と称されてしまうこともあります。

尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とは

いぼの最も代表的な疾患です。ヒト乳頭腫ウイルス(Human papilloma virus:HPV)によって生じます。小児の手指や
足趾に好発します。自覚症状はほとんどありません。

*小児で「ウオノメ」といって受診される方のほとんどはイボ(尋常性疣贅)です。治療法が違いますので注意が必要です。

原因

パルボウイルス科のヒト乳頭腫ウイルス(Human papilloma virus:HPV)が原因です。HPV−2が主体ですが、そのほかにも4,7,26,27型などからも発症します。

ウイルスは皮膚の小さなキズなどから侵入し、表皮という皮膚を覆う部分の細胞に感染します。ウイルスが増えると表面から落屑(かさついて皮膚の表面が向ける状態)を生じウイルスが放出され周囲に広がっていきます。

症状

四肢、特に手足に好発し、通常、1cm程度までの結節を生じて徐々に増加します。単発のこともありますが、多くは多発して、癒合して大きな局面をつくることもあります。

表面がイボ状で固く、細かい点状出血が見えるのが特徴です。小さいものでは表面が平滑なこともあります。原因のウイルスにより症状は異なります。

痒みや痛みなどの症状は通常ありませんが、まれに感染をおこして痛みを生じることもあります。顔面や頸部に生じる場合には、直径数mmの細長く伸びた突起状になることがあります(糸状疣贅)。

治療

1)局所療法

《1》液体窒素凍結療法:治療の代表的なものです。ほとんどの皮膚科において第一選択の治療法です。

病変の大きさに合わせた綿球を用いて、液体窒素を圧抵します。部位や大きさにより圧抵時間を調整します。足底、特に踵などの角質が厚い部位では時間をかけますが、それ以外の部位では短めにします。2週間くらいで剥がれ落ちて取れたと思っても、根本に残っていることが多く、通常は数週間ごとに繰り返し行います。

*液体窒素圧抵後の経過と注意:軽い凍傷状態をつくり、いぼの部分を凍結させます。少し水疱のようになって腫れて、その後かさぶたになって剥がれていきます。部位により異なりますが、順調でも個々までの経過は1−2週間です。

強く当てすぎると大きな水疱になって傷をつくってしまうこともあり、弱いと全く変化しません。最初は弱めに、反応をみながら徐々に強めていきます。1回で取れることは少なく、通常は2−3週間ごとに数回、踵などでは10回以上と行うこともあります。

《2》その他

・スピール膏貼付:スピール膏を疣贅の大きさに切って数日貼付すると、サリチル酸を含んでいるので皮膚が浸軟してきます。柔らかくなった部分をメスなどで削りとります。しかし、この方法ではいぼを取り切ることはできず、不適切に行うと、かえっていぼのウイルスを広げてしまうことがあります。非常に角化が強く治りにくい場合などに用います。

*市販のウオノメ取りの貼付剤(イボコロリなど)にはこのサリチル酸が含まれており、同じような作用です。通常の尋常性疣贅に対して使うと、皮膚を浸軟させてかえっていぼを増やしてしまうことが多いので、勝手に使用しないように注意が必要です。

・このほかレーザー治療、ブレオマイシン局注療法などを行っている施設もあります。

2)全身療法

ヨクイニン内服が行われることもありますが、補助的な治療と思ってください。

このほかの「いぼ」の種類と治療

1)扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)

  • 尋常性疣贅より小型で、主に顔面、四肢に多発するイボです。わずかに隆起した直径数mm〜1cm大の扁平な丘疹が多発します。ときに融合したり、引っ掻いたように線状に並ぶこともあります。
  • 自然消退することがありますが、数年にわたって治りにくいこともあります。
  • 通常は自覚症状はありませんが、消退するときにかゆみを生じることがあります。
  • ウイルス性疣贅の一種でHPV-3、10が主体です。
  • 治療:液体窒素による凍結療法やヨクイニン内服を行います。

2)Bowen様丘疹症

  • 若者の外陰部に直径2〜20mm大で多発する黒色丘疹で、小さな丘疹が融合することもあります。
  • HPV-16が原因です。
  • 病理組織はBowen病という表皮内癌と同様の所見がみられますが、悪性化はまれで自然消退することもあります。
  • 治療は液体窒素や電気焼灼を行います。

3)尖圭コンジローム

  • 外陰部や肛囲に、乳頭状、カリフラワー状の疣状丘疹が多発します。あまり硬くならずに表面はジクジクと湿潤し、ときに悪臭を放ちます。時に巨大化します。
  • HPV-6,11などにより、主に性行為によって感染します。生活道の盛んな年代に多くみられ、直接接触した外陰部、ないし肛囲、膣入口部の小外傷からウイルスが侵入して感染します。
  • 冷凍凝固、電気メス、レーザーによる外科的切除、ブレオマイシン局注など、大きさや治療経過によって選択します。

4)伝染性軟属腫(俗称:みずいぼ)

  • 伝染性軟属腫ウイルスによって生じます。
  • 小児に好発し、接触感染で生じる、数mm程度までの光沢のある丘疹で中央がわずかに陥凹していまます。症状から診断は容易です。
  • 治療はピンセットでひとつひとつ摘みとるのが確実です。自然消退するので様子をみてもよいでしょう。 みずいぼを取るか取らないか、医師によって方針が違うこともあります。痛がる子供を抑えつけて取ることにもなります。増える、うつすリスクと摘み取るメリット、子供の年齢や気持ちも考えて、決める必要があります。(別途解説)

5)ウイルス性ではないが「いぼ」と呼ばれてしまう疾患

  • 老人性疣贅(脂漏性角化症) 高齢者の顔面や体幹を中心に生じる黒褐色の丘疹です。顔面に生じて隆起してくると、いぼと称されてしまうことがあります。隆起したり、皮膚からとびだしたりしているものは液体窒素療法を行うこともあります。
  • アクロコルドン:頸部にできる細かい丘疹です。病理組織学的には軟線維腫ないし脂漏性角化症で、加齢とともに首を中心に生じる扁平ないし少し隆起します。ウイルス性ではなく、加齢による変化です。液体窒素療法を行うこともあります。

<リファレンス>

日本皮膚科学会 尋常性疣贅診療ガイドライン 第1版 2019

おうち病院
おうち病院