ウエルナー症候群|疾患情報【おうち病院】

記事要約

ウエルナー症候群とは、思春期以降に白内障や白毛、脱毛など、実年齢に比べて“老化が促進”したように見える様々な症状を呈する疾患です。ウエルナー症候群の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

ウエルナー症候群とは

ウエルナー(Werner) 症候群は、思春期以降に白内障や白毛、脱毛など、実年齢に比べて“老化が促進”したように見える様々な症状を呈する疾患です。“早老症”とも呼ばれます。非常にまれな常染色体劣性遺伝病であり、これまでに全世界で報告された患者の 6~8 割が日本人と、 我が国において発症頻度の高い疾患でもあります。

一方、本疾患は「老化が進みやすい」といっても、認知症の発症は少ないなど、単に“早老”として片づけられない側面も持ちます。また、糖尿病や悪性腫瘍を合併しやすいものの、 通常の“癌”すなわち上皮性悪性腫瘍ではなく、非上皮性の“肉腫”が多いと言った特徴があります。さらに、下腿~足部を中心として 難治性の皮膚潰瘍を好発し、その疼痛や感染によって患者の生命予後と生活の質(QOL)を大きく損なうことが問題となります。

ウエルナー症候群の原因

常染色体劣性遺伝であり、第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼのホモ接合体変異が原因と考えられています。しかし、何故この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらすかは明らかではありません。

ウエルナー症候群の疫学的整理

日本の推定患者数は約2,000名であり、世界の報告の6割が日本人であり我が国に多く発症しています。両親の血族結婚は4割に認められ、以前 の報告に比較すると比率が低下していたとされます。

ウエルナー症候群の症状

1)主な症状

20歳代以降、白髪・脱毛などの毛髪変化、白内障(両側性の場合が多い)、高調性の嗄声、腱など軟部組織の石灰化、皮膚の萎縮や角化・潰瘍、四肢の筋・軟部組織の萎縮、高インスリン血症を伴う耐糖能障害、性腺機能低下症などが出現します。また、低身長である場合が多くみられます。

 四肢末梢における皮膚の硬化・萎縮に伴い、下腿や足部、肘部に皮膚潰瘍を好発します。皮膚の萎縮、線維芽細胞の老化による再生能力の低下や血行障害のため、保存的にも観血的にも治癒の困難な場合が多くみられます。疼痛や関節可動域の低下により、下肢潰瘍は歩行障害をもたらし、肘部潰瘍は食事や洗顔に支障を来すなど、日常生活動作が著しく制限されることがあります。潰瘍部への感染併発により、四肢切断に至る場合もあります。

2)悪性腫瘍

悪性腫瘍 Werner 症候群の死因の第一位であり、6~26% の症例に合併が報告されています。一般人口では、悪性腫瘍の内訳として、上皮性(癌)と非上皮性(肉腫)の割 合が 10:1 であるのに対し、本症候群では 1:1.9 と、非上皮性腫瘍の割合が圧倒的に多いのが特徴です。

非上皮性腫瘍とし ては、悪性黒色腫、悪性線維性組織球腫、骨髄異形成症 候群、骨肉腫などがあげられます。 そのほか、髄膜腫も高頻度に合併します。癌の中では甲状腺癌が多くみられます。一人の患者に 複数種類の悪性腫瘍が合併する多重がん(重複腫瘍)認 めることも少なくありません。

四肢末梢と異なり、体幹部の皮膚や軟部組織の創傷治癒能力は健常者と変わら ないため、早期に発見された腫瘍は根治的外科手術の適応となり、患者の生命予後向上に貢献すると考えられます。

3)動脈硬化性病変

「早期に現れる 動脈硬化」に関しては、特に冠動脈疾患や閉塞性動脈硬化症の発症頻度が高率です。糖尿病の合併も多く、無症候性心筋虚血の可能性も高いため、日常のフォローアップにおいて積極的かつ定期的な動脈硬化の検査が必要です。

5.ウエルナー症候群の診断

ウェルナー症候群の診断基準

A.症状

I.主要徴候(10歳以後 40歳まで出現)

1.早老性毛髪変化(白髪、禿頭等)
2.白内障(両側)
3.皮膚の萎縮・硬化(鶏眼や胼胝等)、難治性潰瘍形成
4.軟部組織の石灰化(アキレス腱等)
5.鳥様顔貌

II.その他の徴候と所見

1.音声の異常(かん高いしわがれ声)
2.糖、脂質代謝異常
3.骨の変形などの異常(骨粗鬆症等)
4.非上皮生腫瘍又は甲状腺癌
5.血族結婚
6.早期に現れる動脈硬化 (狭心症、心筋梗塞等)
7.原発性性腺機能低下
8.低身長及び低体重

III.遺伝子変異

1.RecQ型のDNAヘリカーゼ遺伝子 (WRN遺伝子) の変異

主要徴候の全て、または、3つ以上の主要徴候に加え遺伝子変異を認めるものをDefinite(確定)、主要徴候の1、2に加えて主要徴候やその他の徴候から2つ以上認めるものをProbable(疑い)とします。

B.検査所見

1.  画像検査所見 両側アキレス腱部の石灰化(火焔様とも表現される特徴的な石灰化様式を呈する。)

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

ハッチンソン・ギルフォード症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome)、

ロースムンド・トムスン症候群(Rothmund-Thomson syndrome)、ブルーム症候群(Bloom syndrome)

(上記の疾患は早老様症状が一般的にウェルナー症候群より若年から発症し、さらに我が国においては非常に稀な疾患である。)

D.遺伝学的検査

RecQ型のDNAヘリカーゼ遺伝子 (WRN遺伝子)の変異

ウエルナー症候群の治療法

根本的な治療法はありません。白内障は通常手術を必要とします。糖尿病に対しては一般にチアゾリジン誘導体が著効を示し、高LDLC血症にはスタチンが有効です。
四肢の難治性皮膚潰瘍に、保存的治療が無効な場合には、他部位からの皮膚移植を検討しますが、切断が必要となることもあります。潰瘍の感染コントロールも必要です。悪性腫瘍に関しては、早期発見、治療が重要です。
また、動脈硬化性病変に対しては、糖尿病、高血圧、脂質異常症とそれぞれ有意な相関を認め、動脈硬化の予防には、これら危険因子の包括的管理が必要となります。

ウエルナー症候群の予後

若年より悪性腫瘍を高率に発症し、その日常生活活動度と生命予後を左右します。死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍です。平均死亡年齢が40歳代半ばと言われてきましたが、早期発見と治療により予後は改善傾向にあります。

ウエルナー症候群の遺伝相談

遺伝性疾患である以上、結婚や出産を考えた場合に、子供の発症の可能性など患者や家族に共通する不安材料があります。WRN 遺 伝子変異をヘテロ接合体として保有する頻度が100人に 一人とした場合、常染色体劣性遺伝病である本疾患を患者が発症する確率は1200、患者の子(ヘテロ接合体) の次の世代が発症するリスクは1400とさらに低くな ります。不安をもつ患者や家族に対しては,このように理論的かつ具体的に分かりやすく説明することが必要であり、遺伝子カウンセリングは重要です。

ウエルナー症候群の日常生活の注意

治りにくい傷ができないように、日頃からアキレス腱やかかと、足、肘など潰瘍になりやすい部位をなるべく保護し観察する必要があります。薄く固くなった皮膚は骨に圧迫されて傷ができ、やがて深い潰瘍を生じやすいため、特殊な装具などで保護する方法もあります。また、定期的に悪性腫瘍の発症をチェックしたり、糖尿病や高脂血症などの管理をして動脈硬化の進行を防ぐ必要があります。

<リファレンス>

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